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婚約編
21
しおりを挟むテントの前に集合している美形集団を発見した僕は、少し早足になる。
輪の中心には、シュヴァリエ様がいた。
みんなから慕われているな、と思ったのだけど……。
なにやら揉めている?
話かけていいのかわからなかったけど、シュヴァリエ様が困っているように見えた僕は、すぐに声をかけていた。
「シュヴァリエ様、なにかあったんですか?」
「「「っ…………」」」
僕の声に、一斉に振り返った爽やかイケメンたちが、息を呑んだ。
シュヴァリエ様はもちろんかっこいいのだけど、二十名の王子様集団が、眩しすぎるっ。
そんな彼らに顔を凝視され続けた僕は、ほんのりと頬が熱くなってしまった。
「っ、リュセ」
焦ったように僕の名を呼んだシュヴァリエ様が、棒立ちになっているイケメンたちの前に出る。
ずんずんと僕の方に歩いて来たと思ったら、僕の全身を眺めて「綺麗だ」と、うっとりと呟いた。
「女神が現れたのかと……」
「っ、褒めすぎですよっ。シュヴァリエ様を応援するために、僕も気合い入れて来ちゃいましたっ。自分で作ったんですよ?」
嬉しくなってくるりと回ってみせると、愛おしそうに目を細くしたシュヴァリエ様が、ほうっと息を吐く。
無言でじっと見つめられて照れる僕は、さっそく手作りのお守りを渡した。
「お守りも持ってきました! ちょっとアレンジしちゃってますけどっ」
狩猟大会では、恋人が参加者の健闘を祈ってお守りを渡す風習がある。
自身の髪と同じ色の紐を使ったミサンガのようなお守りを、手首につけるんだ。
僕が作ったのは、みんなの名前入りだ。
「ありがとう、リュセ。俄然やる気が出た。……しかし、凄いな。大変だったんじゃないか?」
「いえ。とっても楽しかったですよ? 皆さんの健闘を祈りながら作りました」
「っ、みなさんって、俺たちにも!?」
聞き耳を立てていた第二のイケメン集団が、ざわつき始める。
ベアードさんからお守りを受け取った僕は、一人一人に声をかけながら渡していく。
感極まる彼らはすぐに手首につけてくれ、大切そうに撫でていた。
そして、僕がもういいよって言ってしまったくらいに感謝の言葉を伝えてくれたみんなが、シュヴァリエ様のもとへ集合する。
「まさか、お守りを貰える日が来るとは……」
「しかもリュセ様からだなんてっ! 副団長、ありがとうございますっ!」
「先程は、申し訳ありませんでした! てっきりリュセ様に会わせないつもりなんだと思って……」
「…………いや、気にするな」
喜んでもらえてよかったと安堵していると、僕の同級生の中で、一番美形のルドルフくんが声をかけてくれた。
「とてもお美しいです、リュセ様……。女神様にしか見えない……」
シュヴァリエ様と同じ白銀の髪だけど、さっぱりとした短髪。
背も高くて、僕と同い年とは思えない大人っぽいイケメンくんだ。
「ありがとうっ。お世辞でも嬉しいよ」
「っ、お世辞だなんて……。本心です」
「ふふっ。今日はルドルフくんも頑張ってね!」
「はい……。あ、あのっ! リュセ様が、シュヴァリエ様だけを想っていることは知っています。それでも、俺が優勝したら……リュセ様に獲物を捧げてもいいでしょうか」
「っ、」
あまりに真剣なルドルフくんに驚いた僕は、すぐに返答できなかった。
ルドルフくんに恋人がいないから、僕にお願いしているのだと思う。
いいよと言いたいのだけど、シュヴァリエ様に勘違いされないだろうか……。
「別にかまわないぞ?」
「っ、シュヴァリエ様……」
返事に困る僕の腰を抱いたシュヴァリエ様は、僕を気遣ってくれたようだ。
シュヴァリエ様の許可が出た瞬間、他の団員たちからもお願いされた僕は、了承することになった。
それでも本当にいいのかと、ちらりと隣を見上げると、シュヴァリエ様は微笑んでいた。
「私が優勝したらいいだけの話だからな?」
「~~っ!!」
内緒話をするように、耳元で囁かれる。
余裕たっぷりのシュヴァリエ様が、かっこよすぎるっ!!
みんなが僕に獲物を捧げるだろうと予想していたシュヴァリエ様は、興奮する僕の頭を撫でながら、第二の仲間たちとバチバチに火花を散らしていた。
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