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婚姻後
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しおりを挟む「きゃあっ♡ シオン様よっ!!」
「お美しいわあ~♡ 抱いて~♡」
騎士団の訓練場に足を運んだだけで、黄色い声が上がる。
抱いてあげることは出来ないのだが、私は笑顔で片手を上げた。
「ぎゃああああ~~♡♡」と地鳴りのような声が返ってくる。
……鼓膜が破けそうだ。
「ふふっ、モテモテだね? シオン」
私の手を引く美人は、なにを隠そう私の母上。
リュセ・ライトニング。
世界一美しい公爵夫人である。
「うむ。でも、母上には負けるのだ」
自信を持って答えた私、シオン・ライトニング。
四歳だ。
少しぽちゃっとしているが、以前より色気も増したはずである。
「ククッ、二人が来たらすぐにわかるな?」
純白の騎士服が似合う美丈夫が姿を現す。
宝石のような碧眼が、私たちを見つけてキラキラと輝く。
白銀の長い髪が美しい長身の美形が、まずは愛する妻にキスをする。
それから私を軽々と抱き上げて、頬にキスをしてくれる。
私の自慢の父上だ。
ライトニング公爵であり、ミラジュー王国の騎士団長を務めている。
家族だけでなく全国民を守る父上を、私は心から尊敬している。
なにより、世界一かっこいいのだ!!
父上が仕事の時は、ランチを共にする約束をしているのだが、私には他に目的があるのだ。
誰にも悟られないように、視線だけを動かす。
意中の人をすぐに見つけた私は、父上に地面に下ろしてもらう。
一直線に向かった先にいた、汗をかいても爽やかな男の服の袖を掴む。
「一緒に食べたいのだ」
「はい、お待ちしておりました」
私の視線に合わせるようにしゃがんだ美しい男が、切れ長の目元を和らげて、にこっと笑う。
その破壊力に、私は眩暈がしているものの、なんとか頷いた。
「今日も膝の上に乗りますか?」
「っ……う、うむ。頼もう」
「…………ククッ、可愛すぎるっ」
優しく抱き上げてくれたのは、私の剣の師匠であるルドルフ。
私を可愛い可愛いと愛でてくれる優男である。
父上の次に強い男は、私と正反対のキラキラした白銀の髪。
引き締まった筋肉が魅力的な爽やかな男は、今日も今日とて眩しい。
(控えめに言って、めちゃくちゃかっこいいのだっ!!)
だがしかし。
ライトニング公爵家の後継者である私が、今のような馬鹿みたいな発言をすることはできない。
心の中で叫ぶのだ。
そう、母上に教わっている。
私を取られて嫉妬しているらしい父上に睨まれるルドルフだが、気にせず膝に乗せてくれるのだ。
(そんな強気なところも好きだっ!)
「今日は、う、腕が痛いのだ」
「大丈夫ですか? それなら俺が手伝います」
「っ、うむ」
そして自分で食べられるのだが、ルドルフに会う時はどこかしら怪我をしている設定の私は、好きな人に食べさせてもらう。
私の嘘に気付かない純粋な男は、せっせとサンドイッチを私の口に運んでくれるのだ。
(ピュアな男を騙してしまって申し訳ないが、私は幸せだっ!!)
「シオン様、お口が汚れています」
私の口についたパンを取ってくれたルドルフが、それをぺろりと食べた。
かっこよく親指を舐めた、色っぽい男に目が釘付けになる。
「シオン様?」
「っ…………うぐっ」
「また発作ですか!?」
ルドルフの逞しい筋肉に背後から優しく包み込まれる私は……鼻血を出して気絶した。
ハッと目を覚ますと、私は大好きな母上に抱っこされていた。
よしよしと頭を撫でてくれる母上の隣には、私の絶賛片想い中の男が座っている。
「リュセ様」と、愛おしそうに見つめるルドルフは、私の母上を愛しているのだ。
先程まで幸せだった私の胸は、ぎゅっと締め付けられる……。
「あっ、シオン様。大丈夫ですか?」
「…………うむ、大丈夫だ」
全然大丈夫ではないのだが。
ルドルフに心配をかけたくない私は、精一杯笑顔を作る。
……年齢差が疎ましい。
「まだ四歳なのだが、いろんな人から好意を寄せられている私は、報われない恋をしている。(完)」
しゅんとしていた私は、私の心の声を聞いた父上の部下たちが、黙って顔を見合わせていることに気付いていなかった。
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