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しおりを挟む劇団の仲間入りを果たすことになるというのに、エドワードは不気味なくらいに静かだ。
なにか嫌なことでも言われたのかと、僕はエドワードの胸元からひょっこりと顔を出した。
「エディー? みんなと話せた?」
「……危なっかしくて、話どころじゃなかった」
「え?」
これからお世話になるのに、大丈夫なのかと不安になっていると、エドワードの口からは深い溜息がこぼれた。
「ユージーンってのには、気を付けてくれ」
「……気を付ける?」
「ああ。アイツは、純粋なノエルを騙そうとしていたに違いない」
「なんで僕を騙すの? 家は宿屋だけど、僕はお金なんて持ってないよ?」
僕がこてりと首を傾げると、エドワードは再度盛大に溜息を吐いた。
やけに真剣な表情をしているエドワードが、ぽけっとしている僕の顔を覗き込む。
「ノエルが可愛いから」
「可愛いって……。僕、これでも男なんだけど」
「わかってる。でも、世の中には、可愛い男の子が好きな男だっているんだ」
「……ええっ!?」
驚く僕に、エドワードは真剣な表情で語る。
同性を愛する人もいることを……。
それは、自分もだと、エドワードがカミングアウトした瞬間、僕はぽかんと開けていた口をすぐに閉じた。
「引いたか?」
「ううん。納得してただけ……。エディーは女の子にモテるのに、恋人がいなかったのは、そういう理由だったんだ……。話してくれてありがとう」
秘密を話してくれて、より仲良くなれた気がした僕は、にっこりと微笑む。
そんな僕を見たエドワードは、困ったように銀色の髪を掻いた。
「俺の場合は、男が好きってわけじゃなくて……ノエルが好きなんだ」
「…………僕っ!?」
いつもより甘い声で囁かれたのに、僕の口からは素っ頓狂な声が出ていた。
弱った顔で眉を下げているけど、そんな顔も魅力的なエドワード。
エドワードの美貌を前にしたら、僕なんて平凡極まりないのに……。
「この町で、俺の気持ちに気付いていないのは、ノエルくらいだぞ?」
「っ……ぬあんだって!?」
「ククッ……。ああ、もう。かっこよく告白したかったのに、笑わせるなよ」
びっくりしずきた僕は声が裏返ってしまい、エドワードは笑いが止まらなくなった。
結局、恋人になって欲しいと告白されて、僕は恋愛に関してはまだよくわかっていなかったから、戸惑ってしまう。
恋人ってなにをするのかと聞けば、キスをしたり、スキンシップが増えるらしい。
でも、それって……今と特に変わりない。
お昼寝の時のエドワードは、いつも僕を抱き枕にして寝ているし、頬にキスもしている。
それが、頬から唇になるだけみたいだ。
相手がエドワードなら、僕は問題ないと思って了承したのだけど……。
初めて唇にしたキスは、頬なんかとは比べ物にならないくらい恥ずかしかった。
でも、エドワードがすごく嬉しそうに笑うから、幼馴染みから恋人になれてよかったと思った。
恋人になった途端に、もともと僕に優しかったエドワードがさらに激甘な態度になって……。
僕がそんなエドワードに恋に落ちるまで、そう時間はかからなかった。
そして、僕とエドワードの両親の間では、二人が結婚したのち、宿屋を継ぐ予定だったらしい。
でもエドワードの夢を追うことになり、僕たちは家族から縁を切られることになった。
本当に絶縁するつもりではなく、それくらいの覚悟で行って来いと背中を押されたのだけど、僕だけはそのことに気付かずに、丸一日泣いた。
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