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「ノエル……」
「ん……」
「悲しい夢でも見ていたのかい?」
いつのまにか、ユージーン様と同じ寝台で眠っていた僕は、寝ぼけている目をぱちぱちとさせた。
湯浴みをしたのか、金色の髪からは甘くて爽やかな香りがする。
「両親に、絶縁された時の夢を見ていました」
「……それは辛かったね」
僕のパサついた髪を、優しく撫でてくれるユージーン様は、悲しげな笑みを浮かべていた。
きっと、過去に僕を誘ったことを後悔しているのだと思う。
王都へ来ると決めたのは僕自身であって、不幸になったとしても、ユージーン様はなにも悪くない。
だから僕は、安心させるような笑みを見せる。
「幸せな夢でした。だって、初めてユージーン様に出会った時の夢だったから……」
「っ……ノエルは、本当に可愛いことを言うね? 嘘でも嬉しいよ」
「……嘘じゃないのに」
口を尖らせる僕を見つめるユージーン様は、すごく優しい表情に変わっていた。
みんなの王子様を独り占めしている気分になっている僕は、今の穏やかな時間が、ユージーン様から僕への、特別な誕生日プレゼントだと思うことにした。
すぐに帰ろうと思っていたのだけど、ユージーン様のお屋敷で、僕の誕生日パーティーを開いてもらうことになった。
急なことだったのに、豪華な料理とホールケーキまで用意してもらって。
ほんの少し、泣いてしまった。
使用人からもプレゼントを貰ったけど、ほとんどが日持ちするお菓子だった。
僕はもう十九歳だというのに、僕の見た目が幼いからか、何年経っても子供のように見えているのだと思う。
それでも嬉しかったし、食料はすごく助かる。
エドワードがいつ帰ってくるかわからないから、僕は夕方には馬車に乗せてもらい、家に帰ることにした。
そんな僕の膝に置かれている小さな箱。
ユージーン様からも、プレゼントをいただいてしまったのだ。
中に入っていた小瓶に、僕は目玉をひん剥く。
『エリクサー』
どんな病や怪我も、一瞬にして治してしまう万能薬だ。
ただのお茶飲み友達にあげるようなものではない、超高級品。
喫茶店と宿屋の仕事を掛け持ちしている僕だけど、いかんせん王都は物価が高い。
家賃と二人分の食費で、僕のお給料は瞬く間に消えてしまう。
だから王都へ来て二年目には、僕は冒険者になっていた。
冒険者は固定給ではないから、頑張れば頑張っただけお金を稼ぐことが出来る。
だから、喫茶店と宿屋の仕事を減らすことになったのだけど。
ユージーン様に紹介してもらった職場だったから、冒険者登録をしたことだけは話していた。
冒険者の活動に慣れてきた今は、少しだけ危険な依頼にも手を出し始めたところで……。
以前ちょろっと話しただけだったのに、ユージーン様は覚えてくれていたようだ。
エリクサーを握りしめる僕は、ユージーン様の気遣いに、心がぽかぽかと温かくなっていた。
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