尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

文字の大きさ
32 / 137

32 

しおりを挟む

 顔面蒼白になっているメルヴィンくんを残し、僕はユージーン様に支えられて会場を後にしていた。
 外の空気を肺いっぱいに吸い込む。
 僕が落ち着いてもなお、寄り添ってくれるユージーン様を見上げて、お礼を告げた。

 
 「いや。遅くなってごめんね、ノエル。あの男になにか嫌なことを言われたかい?」
 「い、いえ……。でも、ユージーン様は帰ったんじゃ……」
 「今日のノエルは一段と魅力的だからね? 心配だったから、友人を先に家まで送って来たんだ」


 なんとか間に合ったかな? と、微笑むユージーン様は、やっぱり優しい人だと思った。
 ピンチの時に駆けつけてくれる、ヒーローみたいだ。
 でも迷惑をかけてしまったようで、僕は申し訳ない気持ちになる。
 家まで送ると申し出てくれたのだけど、僕はレオンさんとアルバートくんのことが気になっていた。
 会場までは二人と来たし、てっきり帰りも二人と帰るつもりだった。
 そのことを話せば、ユージーン様は大丈夫だよと、僕の頭を撫でた。

 
 「ノエルのことはレオンに話しているから、心配しなくてもいいよ。それより顔色が悪い。やはり、私の屋敷に行って医師に診てもらおう」
 「っ、そこまでしていただかなくても……」
 「そんな青白い顔をしているのに、放っておけるわけがないだろう? もしノエルが私に申し訳ないと思っているのなら、医師の診察を受けて、私を安心させてくれないかい?」
 

 優しく問いかけられ、本当に心配してくれている様子のユージーン様を見つめる。
 確かに胃が痛いし、この際医者に診てもらおうかと考えて僕は頷いていた。
 よかった、と微笑んだユージーン様がすぐさま馬車を呼び、共に乗り込んだ。
 
 豪邸に着けば、使用人が勢揃いしており、いつものように歓迎してくれた。
 挨拶をしようとすると、ユージーン様が「マシューを呼べ」と告げ、みんなの顔色が変わる。
 大丈夫なのかと大袈裟なくらいに心配された僕は、すぐに医師の元へと運ばれていた。



 丁寧に診察してくれた初老の医師──マシュー先生は、とても穏やかな口調の方だった。
 いくつか質問をされ、僕は日常生活を振り返りながら答えていく。
 
 
 「飲み薬は一種類だけですか?」
 「はい。眠れない時に飲んでいます」
 「それは毎日?」
 「……そう、かもしれません。でも、もう飲まなくても大丈夫かな、と……」
 「そうですか。では、前回のお休みはいつだったか覚えていますか?」
 「えっと、一ヶ月くらい前かと」


 ふむと頷いたマシュー先生が難しい顔になり、控えていた使用人に視線を送る。
 使用人が静かに退出した後、すぐにユージーン様が現れた。
 先程と同じ白地のスーツ姿で、着替えもせずに待ってくれていたみたいだ。


 「マシュー、ノエルは大丈夫なのか?」
 「はい。薬を処方すれば、胃の痛みは緩和されるでしょう。ただ、体調不良の原因は過労によるストレスかと……。ですので、完治したとしても再発する可能性は高い。ノエル様の今の環境を改善すべきかと」
 「そうか……。わかった」


 マシュー先生が薬を用意し、僕はその場で飲む。
 前の薬は処分するようにと話を聞いていると、ユージーン様が僕の頭を撫でた。
 

 「ノエルはしばらく療養しよう。私の屋敷には空いている部屋がいくつもあるし、気に入った部屋を使っていい」
 「っ、いえいえ、お医者様に診ていただけただけで僕は……それに、お金も……」
 「そんなことは気にしなくていい。仕事はしばらく休職しよう。マシューに診断書を書かせて、ノエルの職場には私の方から話しておくよ」
 「えっ……」


 休職なんて考えたこともなかった僕は、目が点になっていた。




 

 







しおりを挟む
感想 190

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...