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しおりを挟む僕がぽかんとした顔をしていたからか、ユージーン様が人払いをする。
一人椅子に座る僕の横に片膝を立てたユージーン様が、僕の手の甲を優しく撫でた。
「ノエル。今は、自分の体のことを一番に考えて欲しい」
「っ……でも、」
「生活費のことが心配なのはわかっているよ。その点は、私からエドワードに話しておく。彼には、いろいろと言いたいことがあったしね? 今の彼なら、ノエルに頼らずとも生活出来るだろう。病人に甘えてくるようなら、叱りつけてやらないとね?」
ちょっぴりお茶目に語ったユージーン様は、僕を安心させるように微笑んだ。
「それに、私が心配しているくらいなんだから、彼もきっと療養するようにと言うはずだよ?」
ね? と優しく声をかけられる。
今までは必死に隠してきたけど、僕が体調不良だとわかれば、エドワードも心配すると思う。
エドワードは今が正念場なのだから、僕はなるべく心配をかけたくない。
「休職じゃなくて、退職でもいいんだよ?」
頷こうとすると、ユージーン様からとんでもないことを言われて、今度こそ僕は目玉が飛び出そうになった。
「っ、今辞めたら罰金を払わなくちゃいけなくなるんです。それに、職場の人に迷惑が……」
「大丈夫。罰金を払わなくて済むようにも出来るから。今の職場は、私がノエルに紹介したんだ。私にも責任があると思っている。もっと早くにノエルを休ませるべきだった……」
「っ……ユージーン様は、なにも悪くありません!」
後悔するように告げたユージーン様を見た僕は、自分でもびっくりするくらい大きな声を出してしまった。
慌てて謝罪をする僕の手を、強く握りしめたユージーン様。
ちょっと胃が痛いくらいの僕なんかより、よっぽど辛そうに見えた。
「いや、私も悪いと思っているんだ……。だから、あとは私に任せてくれないかな? ノエル」
でも、と僕が口にしたものの、真剣な表情になるユージーン様は一歩も引かない。
ご迷惑をおかけしてすみません、と謝罪をした僕は、ユージーン様の言う通り、しばらく療養することに決めた。
でも、さすがにユージーン様のお屋敷に居候するのは気が引ける。
今の素直な気持ちを告げると、立ち上がったユージーン様にそっと抱きしめられた。
「いいんだよ、ノエル……。今までずっと頑張ってきたんだ。いくらでも甘えて欲しい」
ユージーン様の優しい言葉に、僕はちょっとだけ涙が出そうになった。
視界が歪む僕の顔を見たユージーン様が、指先で目尻を優しく拭ってくれる。
「さぁ、ノエルの部屋を決めようか」
「っ、ぼ、僕はどこでも……。屋根裏でも……、って、屋根裏部屋ってありますか?」
こんな大きなお屋敷にも、屋根裏部屋はあるのだろうか?
真面目な顔で問いかけると、ユージーン様がくすくすと笑い出した。
「残念ながら、ノエルを屋根裏部屋には案内出来ないよ? なにかあった時にすぐに駆けつけられるように、私の隣の部屋が空いているから、そこにしようか」
「えっ、それって、もしかして……かなり広いお部屋じゃ……」
「ふふっ、どうだろうね? 隣の部屋が嫌なら、私の部屋を使うかい?」
それはもっとありえないと、ぶんぶんと激しく首を横に振ると、ユージーン様は楽しそうに笑っていた。
おいで、と寄り添ってくれるユージーン様に案内された部屋は、僕の予想以上にだだっ広くて豪華な部屋だった。
でも、クリーム色の壁紙が暖かな印象で、淡い緑色のカーテンやソファーが差し色になっており、癒やしを感じられる空間だった。
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