65 / 137
64
しおりを挟む僕がエドワードのためにと、なんでもやってしまっていたから、エドワードは僕がいないとダメな人間になってしまったんだ。
僕に責任がある。
すっと立ち上がった僕は、全然違うところを探しているエドワードにゴミ袋の場所を教える。
僕がいなくても生活出来るように、一から教えていこうと思う。
忘れっぽいエドワードに、僕はその都度教え続けるつもり。
エドワードが、家事をする人間がいなくても生きていけるように……。
エドワードがゴミ出しに向かい、僕は着替えを出そうと鞄を開けると、パステルグリーンの服が目に飛び込んで来る。
服や小物は、全部ユージーン様とお出かけをした時に一緒に選んだもの。
特に猫耳のついたもこもこのパジャマは、僕のお気に入りなんだ。
着心地もいいし、着ているだけで気持ちが明るくなるから気に入っている。
それに、これはユージーン様とお揃いなんだ。
毎日のように僕にこのパジャマを着せたがるユージーン様は、似合う似合うと言ってくれたのだけど、自分は全然着ていなかった。
だから僕が、お揃いで着たいってお願いしたら、渋々着てくれたんだ。
深々とフードをかぶった美猫が、無言で頬を赤らめている姿に、僕は胸を撃ち抜かれた。
「なんでもないような顔をしてたけど……。本当は、すっごく恥ずかしかったんだろうなあ……。ふふふっ」
僕のお願いは、基本的になんでも聞いてくれるユージーン様を思い出して、笑みがこぼれた。
玄関の扉が閉まる音にハッとした僕は、慌ててパジャマを鞄に仕舞う。
なにをしていても、ふとした時に、僕はユージーン様との何気ない日常を思い出していた。
時間も遅かったから、久々に魔法を使って掃除をし、どっと疲れが押し寄せてきた僕は、寝る準備を始める。
先に湯浴みを終えたエドワードが戻って来て、次は僕が浴室に向かおうとすると、腕を取られた。
「なにもしないから、一緒に寝てもいいか?」
「…………その前に、話したいことがあるんだ」
ごくりと唾を飲んだエドワード。
僕が戻って来たのは、エドワードが主役の舞台を観るまで支えたいと思ったから。
エドワードのことは好きだけど、僕の心には、もう一人支えたいと思っている人がいる。
僕の今の気持ちをきちんと伝えないといけない。
そう思って意を決すると、くしゃりと顔を歪めたエドワードが、僕の両肩を掴んだ。
「まさかっ、あの男を好きになったわけじゃないよな?」
「…………僕は、」
「ノエル。あの男は、ノエルの前では優しい顔をしているけど、それは魔法を使えるノエルに価値があるってわかっていて優しくしているだけだ。今後もノエルを利用するに決まってる」
「っ、そんなこと」
「もう、あの男に勝手なことはさせない。俺がノエルを守る」
「エディー、聞いてっ!」
僕の話を聞きたくないのか、何度も話を遮られてしまう。
もう話したくないのか、今日はソファーで寝ると、寝室を出ていこうとするエドワードの背に、僕は思いを投げかけた。
「僕がここに戻って来たのは、エディーが主役を務める舞台を観るまでは支えたいと思ったから。四年前の約束を破るつもりはないよ」
「っ……それって、つまり、俺が主役になったら、俺たちの関係は終わりってことか? ノエルは……俺を捨てるのかっ?」
「っ、そういうことじゃなくて」
「じゃあ、どういうことだよっ!!」
怒鳴ったエドワードに、僕は寝台の上に押し倒されていた。
怒り狂う顔が怖くてたまらない。
それでも今、僕はエドワードと向き合わないといけない。
見た目はひ弱な僕だけど、黙ってやられるような男じゃないんだ。
最悪、魔法をぶっ放そうと構える僕の手は、小刻みに震えていた。
119
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる