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70 アルバート
しおりを挟む劇団の仲間たちから、エドワードはノエルちゃんにぞっこんで、後援者とはご飯や買い物の付き合いしかしていないこと。
エドワードの惚気話が長いだとか、いろいろと聞いたノエルちゃんは、かなりびっくりしていた。
エドワードにとっては知られたくなかった話だったみたいだけど、ノエルちゃんは聞けてよかったと微笑んでいた。
ここ数日で、二人の間に流れる空気がとても穏やかになっている。
ずっとノエルちゃんに頼りきりだったエドワードが稼げるようになり、今は長年尽くしてくれた恋人を養っている。
支えてくれた恋人を捨てて、他の人に目移りする人もいる中で、エドワードは一途な男だと、評判が鰻登りだ。
僕から見たらエドワードはまだまだだと思うけど、周囲はその行いを評価しており、理想のカップルだともっぱらの噂になっていた。
僕は、余計なことまでぺらぺらと喋ってしまうタイプだから、友達が少ない。
相手のためを思ってのことなんだけど、ハッキリ言われたくない人もいる。
でも、僕がズバッと言ったとしても、ノエルちゃんは真剣に受け止めてくれるんだ。
そんなノエルちゃんとは、出来れば親友になりたいと思っている。
だから僕は思い切って、みんなに差し入れを用意しようと、料理上手なノエルちゃんを誘った。
料理なんてしたことがないから、完全にノエルちゃん任せになってしまうけど……。
レオンのために、なにか元気になる料理を作りたいと、僕の秘めた想いを相談してみると、快く協力してくれることになった。
ただ、僕がノエルちゃんを恋愛対象として好きになるかもと思っているのか、いちいちエドワードの許可を求めなきゃいけないのが面倒臭い。
『うざい男は嫌われるよ?』って言ってやった。
そんなこんなで、僕は現在、ノエルちゃんの家のキッチンで料理を教わる生徒になっていた。
まずは買い出しだと思っていたのだけど、事前に食材を用意してくれていたみたいで、僕はエプロンをつけるだけだった。
ノエルちゃんは、本当に気が利くいい子だ……。
「レオンさんの好きな花って、なにかわかりますか? それか、アルバートくんから見たレオンさんのイメージでもいいです」
「うーん、好きな花はわからないけど、僕のレオンの印象は……薔薇かな?」
「っ……熱烈」
「ち、違うからね!? 単純に、髪が真っ赤だからだよ?! ほら、瞳も翡翠色だし! 葉っぱみたいでしょ?! ね、そうでしょ?! そうだって言ってっ!!」
微笑ましい顔をされてしまった僕は、真っ赤な顔で言い訳をしていた。
友達と恋の話をすることに憧れていた僕は、ここ最近で一番浮かれていたと思う。
「レオンさんには花を模した料理にしませんか? 見た目も可愛いし、特別感が味わえると思います」
「っ、さすがノエルちゃんっ! それなら僕も楽しめそうっ! でもよく思いついたね?」
「いえ、僕じゃないんです。ユージーン様のお屋敷で療養していた時に、よく食べていたんです。だから、料理が初めてのアルバートくんも楽しめるんじゃないかと思って……。実は、ユージーン様とも作ったんです。ユージーン様も、初めて料理をしたって言ってたんですけど、すごく楽しそうでした」
僕はてっきりエドワードのために作っていると思っていたから、意外な返答に驚いていた。
「あのユージーンさんが料理をしたの? 意外すぎて、想像出来ない……」
「ふふっ。ユージーン様は、一度教えただけでなんでも出来ちゃうんです。喫茶店で働いていた僕より上手でしたよ?」
ユージーンさんの話をする時のノエルちゃんは、僕と同じくらい饒舌に話している。
劇団の仲間からは、『エドワードのお母さんじゃないのか?』って揶揄われるくらい、しっかり者のノエルちゃんが、今は年相応の可愛らしい男の子に見えた。
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