尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

文字の大きさ
80 / 137

79

しおりを挟む

 言いたいことは言った。
 そして、これ以上言い訳を聞きたくない僕は、パチンと指を鳴らす。

 僕の姿は誰にも見えなくなり、会場内にどよめきが起こる。


 「っ……消えたっ!! 嘘でしょっ?! こんな高度な魔法まで使えるなんてっ」
 「レベルが違うわ、感動ね……」
 「……そうね、信じられないわ」
 「って、バカっ! 感動している場合じゃないわよ! このまま姫がいなくなったら大変なことになるわっ! 早く探し出してっ!!!!」


 僕はしばらくその場でつっ立っていたんだけど、ノエルちゃんはどこだ!? って、みんなが会場中を見回して探している。

 ここ一番で、僕の透明人間魔法は完成した……。
 きっとすごいことなのに、まったく喜べない。



 最後に──。
 僕は、呆然としているエドワードの顔を眺める。


 寂しい思いもしたけど、楽しい思い出の方がたくさんあったんだ。
 幼馴染みの関係の時から、僕を抱き枕して幸せそうに笑うエドワード。
 柔らかな笑みを向けてくれるエドワードのことを、僕は恋人じゃなくてもずっと大好きだった。
 
 長い時間を一緒にいたから、いろんな思い出が蘇って来るけど、僕はぎゅっと強く目を瞑る。
 僕が本気で怒った時は、家を出ていくと約束しているから、エドワードもきっとわかったと思う。


 でも本当は、僕がそばに居続けることは、お互いのために良くないと思ったから別れを告げるんだ。


 正しい道を歩んで欲しいと、心からエールを送る僕は、小さな頃から当たり前のように隣にいたエドワードに背を向けた──。



 そして、唯一、驚くこともなく、凛とした姿のままの恩人の元へ向かう。


 ユージーン様の大きな手にそっと触れると、ぴくりと小さく反応した。
 誰にも僕の姿は見えていないっていうのに、まるで僕が見えているかのように、エメラルドグリーンの瞳と視線が絡み合った。

 たくさん話したいと思っていたのに、僕からユージーン様にかける言葉が出てこない。

 だから僕は、ポケットから宝物を取り出した。
 僕は応援していると想いを込めて、お守りをユージーン様の手に握らせる。
 そして、じっと見えない僕を見下ろすユージーン様は、エリクサーを僕に返却した。


 「これは、ノエルが持っていて。私はお守りがなくても、全力を尽くすよ」


 そう囁いたユージーン様は、誰もが見惚れるような甘い表情を浮かべている。

 でも、本気の目をしていた。
 ここからは、僕の出番じゃないのだろう。
 エドワードとユージーン様の戦いなんだ。
 はいっ、と小さく返事をした僕は、宝物をポケットに仕舞った。


 どちらが主役になったとしても、僕は本気でぶつかり合う二人の舞台が観たい。
 きっと僕だけじゃなく、観に来た全ての人が、生涯忘れられないような舞台になると思うから……。








しおりを挟む
感想 190

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

処理中です...