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しおりを挟むパーティー会場を去った僕は、気付いたら走り出していた。
このままどこか遠くへ行きたい気分だ。
どんどん加速する僕は、段差に躓いて転びそうになる。
咄嗟に受身を取ろうとしたのだけど、僕の足は、前へ前へと動き続けていた。
「っ……と、飛んでるっ!?」
身を守ろうと、無意識のうちに魔法を発動させていたみたいで、僕の体は少しだけ宙に浮いていた。
このまま鳥になれるかもしれないと、意識を集中させてみると、すごいスピードで空へと舞い上がった。
半開きの口に、夜の冷たい空気がガンガン流れ込んでくる。
息が止まりそうになったけど、僕はスピードを緩めなかった。
夢にまで見た背中に羽が生えた気分の僕は、今はなにもかもを忘れて、夜空を飛び回る。
「僕、流れ星になったかもっ! って、ピンク頭じゃ無理かっ!」
よく馬鹿にされる桃色の髪を、自虐的に話した僕は、くすくすと一人で笑っていた。
ユージーン様のような綺麗な金色の髪じゃないと、流れ星にはなれないよね?
でもユージーン様なら、きっと空を飛ぶ僕を見てお願い事をすると思うんだ。
その姿を勝手に想像して、僕は笑いが止まらなくなっていた。
慣れない魔法を連発しすぎて、ちょっとテンションがおかしくなっているのかもしれない。
家に帰るつもりはなかったのだけど、どうしても取りに帰りたいものがあった僕は、小さな家に帰宅していた。
電気もつけずに、真っ暗な部屋を歩く僕は、目的のものまで一直線に向かう。
「これこれっ。このパジャマだけは、置いていけないよね!」
猫耳のついたパジャマを鞄に詰めた僕は、四年間お世話になった部屋に別れを告げる。
家具は全部僕が購入したものだけど、エドワードにプレゼントする。
もしかしたら、エドワードもいらないかもしれないけど……。
もし捨てるのなら、その作業くらいはエドワードがやってくれるよね?
ゴミ捨て場も教えたことだし、僕がエドワードに教えることは、もうなにもない。
「お世話になりましたっ!」
誰もいない部屋でぺこりと頭を下げた僕は、清々しい表情で顔を上げる。
僕を見守ってくれていた大家のジナさんにも、挨拶をしに行かないといけない。
でも今は、少しだけ時間が欲しい。
そう思った僕は、小さな鞄を一つだけ手にして、冒険者ギルドまでひとっ飛びしていた。
翌日の王都では、昨晩、ピンク色の流れ星が夜空を駆け抜けたと、楽しそうに語る子供たちの噂になっていたことを、僕は知らない。
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