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しおりを挟む冒険者ギルドに到着した僕は、全力で戸惑っていた。
友人はいないはずなのに、どうしてかギルドに到着して早々に、冒険者の人たちから大歓迎されていたのだ。
「姫様、おかえりなさいませっ!」
「……え、えっと……ただいま?」
「きゃん♡ 声もかわいいっ♡」
菫色のツインテールを揺らしている女の子が、頬を染めて僕を見つめている。
どう見ても僕よりお姫様のような女の子は、水魔法が得意なマリンちゃん。
ギルド長の娘さんだ。
いつもフードを被っていた不審な僕の行動を見張っていた子でもある。
話したことはないし、過去に参加した大型魔獣の討伐の時に、彼女の獲物を僕が先に倒しちゃったりもしている。
横取りするつもりはこれっぽっちもなかったのだけど、報酬は僕のものになってしまった。
だから嫌われていてもおかしくはないのに、全身からパシャパシャと水飛沫を出して、大喜びで飛び跳ねている。
「顔ちっさ! 睫毛長っ! 毛穴ゼロ!?」
「はいはい、離れようね? マリン。ノエルちゃんは、俺の嫁なのっ!」
「っ、サイモンさん?! どうしてここに?」
むぎゅっと背後から僕に抱き着き、僕の頭の上に顎を乗せているサイモンさん。
僕の質問を無視して、「馴れ馴れしいのよ!」と憤慨しているマリンちゃんに、風魔法をぶっ放していた。
当てるつもりはなかったみたいで、マリンちゃんも難なく避けていたけど、僕は魔獣以外に魔法をぶっ放したことはない。
魔法を仲間にぶっ放すことにも驚きだけど、サイモンさんが風魔法の使い手だったことにもびっくりしている。
詳しく話を聞けば、酒屋の息子の代理で仕事をしていただけで、本職は冒険者だそうだ。
「ノエルちゃんが冒険者登録をした日に、見守ってほしいって依頼を受けたんだよね? 出会った日から今日まで、ずーっと陰からノエルちゃんを見てたんだぁ!」
「キモっ。ごめんなさい、姫様。サイモンがストーカーみたいな真似をして……。これからは、マリンが姫様をお守りしますっ♡」
「ぶりっこするな。マリンもハァハァ言ってただろうが」
ぬっと僕の前に出てきたのは、とても体格のいいイグニスさんだ。
初めて大型魔獣の討伐に参加したときに、ビビった僕が水魔法を乱発して、イグニスさんの特大の炎を消してしまった過去がある。
彼にも嫌われていると思っていたけど、鋭い目でちらちらと僕を見て、黙って顔を赤くしていた。
火魔法の使い手だから、体温が上がったみたいだ。
「い、いつでも駆け込めるように、姫の部屋は、用意してあります……」
「そうなんですか? 部屋をお願いしようと思っていたので助かります」
「ベッドも、あたためておきました……。も、もちろん、魔法で、です!」
「わお、凄い……。今日はぐっすり眠れそうです! ありがとうございます、イグニスさんっ」
「っ……」
嬉しくなってにっこりと微笑むと、イグニスさんが目を開けたまま動かなくなった。
体が大きくて怖そうな見た目なのだけど、すごく気遣いの出来る人だ。
宿屋でも即戦力になると思うから、実家の宿屋の従業員としてスカウトしたいくらいだ。
いつも出歩く時はフードを被り、見知らぬ人とは極力話さないようにとエドワードに言われていた僕は、基本的にひとりで活動していた。
田舎者の僕は人を疑うことを知らなかったから、騙されないように心配してくれていたのだと思う。
でも、ほとんどの人が僕を知っていたことに驚きだった。
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