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しおりを挟むにこっといつもの笑顔を見せた僕は、安心させるようにユージーン様の両手を握る。
「また、ユージーン様を揺さぶるようなことをしそうな予感がします。だから、僕が守ります」
「っ……ありがとう。でも、私は大丈夫。私はノエルを守りたい、ノエルが無事ならそれで──」
繋いでいる手にぎゅうっと力を込めれば、ユージーン様が口を閉じた。
ずっと僕を見守ってほしいと依頼していた人物の名前までは聞いていないけど、ユージーン様しかいないと僕は確信している。
サイモンさんから話を聞いて知っているんだぞ、と僕は目で訴えた。
「ユージーン様に拒否権はありませんよ? だから、いつものように冒険者ギルドに依頼をしてください。僕指名でね?」
「っ…………参ったな」
困ったように呟いたユージーン様だけど、すごく嬉しそうに唇を噛んでいた。
「僕……秘密を打ち明けてくれた時からずっと、ユージーン様のことを守りたいと思っていました」
「……そんな頼もしいことを言ってくれるとは思わなかったよ……。いや、ノエルはいつも、私を励ましてくれていたね……」
感極まったように囁いたユージーン様に、一人で抱え込まないでほしいと僕は思う。
過去に僕も一人で抱え込んで苦しくなった時に、ユージーン様が助けてくれたんだ。
最初から頼ってほしいと言ってくれていたユージーン様に甘えることができなかったせいで、裏でいろいろとさせてしまった。
そのことを悔いていると痛いほど伝わって来ている僕は、元気付けるように胸を張る。
「僕はこれでも魔法使いですよ? みんなが言うには、凄腕みたいです! だから、もしユージーン様を傷付ける悪役が何百人といたとしても、僕が一人残らず氷漬けにしてあげますっ! ……って、まだ人に魔法をぶっ放したことはないんですけどっ」
「…………ふっ、ふふふっ」
ゴニョゴニョと付け加えた僕に、笑い始めたユージーン様だけど、ちょっとだけ泣きそうだ。
目にゴミが入っていると嘘をつく僕は、そっと目尻を拭ってあげる。
最後の舞台を完遂し、忘れられない最高の思い出になりますようにとおまじないをかける。
ユージーン様と微笑み合っていると、近くで見守っていたらしいカーターさんが僕の肩を叩いた。
「私が依頼してもいいかな?」
きょとんとする僕に、カーターさんが目尻に皺を作って笑顔で依頼内容を話した。
その場で了承した僕は、冒険者として明日から劇団を守る任務に就くことになった。
◆
翌日には、ユージーン様が引退する舞台では、特別な演出があると各地で噂になっていた。
いつも王子様だったユージーン様が悪役ってだけで大盛り上がりなのに、劇場では雪まで降るんだ。
既に完売しているチケットはプレミアとなっており、チケットを持っていない人たちも劇場の前に集まり、大騒ぎとなっていた。
そんな中、僕はユージーン様を一番近くで守れるように舞台袖で待機し、今日も雪を降らせている。
そして僕だけでなく、イグニスさんたちも警護してくれているんだ。
お願いしたわけではなく、『警護対象者を守る姫を、警護します!』とのことらしい。
志願してくれたことが嬉しくて、僕は胸がいっぱいだった。
安心して舞台に上がっているからか、ユージーン様は絶好調だ。
大勢の人が魅惑的なユージーン様にノックアウトされ、引退しないでほしいとの声が、日に日に大きくなっている。
そして僕たちが警戒している美女は、初日のような派手なことはしてこないけど、毎日劇場に足を運び、ボックス席で舞台を観ていた。
エドワードを推している風に見せて、彼女の視線の先は、ずっとユージーン様だった──。
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