98 / 137
97
しおりを挟む「二人が強い絆で結ばれているのなら、きっとユージーン様がどこへ行ったとしても、最後はヴァイオレット様の元に戻る日が来ますね?」
「ええ、そうよ」
即答したヴァイオレット様は、それはそれは嬉しそうに微笑んでいる。
その顔を見た僕が、異常だと思うくらいにユージーン様との運命を感じているみたいだ。
書類上は一番近くにいる存在だけど、運命の赤い糸では繋がっていないと思う。
でもそれを僕が指摘したところで、間違いなく彼女は否定する。
だから僕は、運命という都合の良い言葉を、利用させてもらうことにした。
「それなら、ユージーン様の最後の舞台を邪魔する必要はないし、僕を牽制する必要もない。だって最後は、ユージーン様は貴女の元に戻って来る。そういう運命ですから」
だから邪魔はしないでほしいと遠回しに告げると、ヴァイオレット様は微笑を浮かべたまま固まっている。
お人形のように綺麗な人なんだけど、目が笑っていないから、普通に怖い……。
沈黙が流れたけど、含み笑いをしたヴァイオレット様が、ゆったりと動き出した。
さすがに暴力を振るわれないとは思うけど、なにをするかわからないから、僕はいつでも氷の壁を発動できるように構える。
不敵に笑う黒髪の美女が、椅子に座ったままの僕に手を伸ばす。
指先が、僕の顎に触れそうになった瞬間──。
僕が魔法を発動させる前に、凄い勢いで扉が開いた。
「っ、ノエルッ!!」
息を切らすユージーン様が姿を現した。
ヴァイオレット様には目もくれず、一直線に僕に駆け寄ったユージーン様は、僕を守るように二人の間に入った。
僕の存在を確かめているかのように、強く抱きしめられる。
よかった、と心底ほっとしたような呟きが、思考が停止している僕の耳を擽る。
ぴたりと頬がくっつき、ユージーン様のドクドクと、速く鳴る心臓の音が聞こえて来る。
驚いたけど、大慌てで駆けつけてくれたことがわかった。
なにをされても平気だと思っていたけど、やっぱり内心ビビっていた僕は、嬉しい気持ちが爆発している。
……僕の心臓も、破裂寸前だ。
少し震えている両手で僕の頬が包み込まれて、「大丈夫? なにもされてない?」って、すごく近い距離で問いかけられる。
冷静になるように努めていたけど、ヴァイオレット様の話を聞いて混乱している僕は、美しい顔のドアップに耐えきれない。
「無理しちゃダメだろう……。こんなに震えて……っ」
僕がヴァイオレット様にいじめられたと思ったのか、ユージーン様はキャパオーバーになっている僕をきつく抱き締める。
「っ……ユージーンさまっ」
「もう大丈夫だからね、ノエル……。私がけりをつけるから」
そう言って、すっと立ち上がったユージーン様は殺気立っていた。
僕も慌てて立ち上がり、ユージーン様の腕にしがみつく。
「っ、大丈夫です! お母様は、ユージーン様を見守ってくれるみたいです!」
「…………」
「広い世界へ飛び立とうとするユージーン様を、送り出してくれるそうです。でも、最後は会いに来てほしいと……。そういう運命だから」
僕たちの顔を交互に見たユージーン様は、僕に向かって笑いかけた。
「ああ、そうか……。これでも、育ててもらった恩を忘れてはいないんだ」
「っ……ユージーンっ」
ぱあっと顔を綻ばせたヴァイオレット様は、僕といた時とは別人のように頬を紅潮させている。
いつもこの表情を向けられていたユージーン様は、彼女の気持ちに気付いていたのかもしれない。
……そう思うと、なんだかゾッとした。
「だから、最期は必ず会いに行きます。お母様」
144
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる