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その後
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しおりを挟む今、『テオ』って……。
ユージーン様の本当の名前を知っているのは、限られた人だけ。
それに、僕も人前では徹底してユージーン様と呼んでいる。
……まさか、ユージーン様のご両親?!
感動の再会なのかと思ったのは、一瞬で。
なんだかみすぼらしい格好をしているし、離れているのに酷い匂いがする。
ここに来るまでに、一体なにがあったのだろう?
とりあえずお茶を用意した方がいいだろうかと考えていると、僕に気付いた二人が笑顔を浮かべた。
「あらあら、可愛らしい子ね? テオ」
「お前の恋人かい? 紹介しておくれよ」
にこにこしている二人がユージーン様から離れ、僕のもとへ一歩踏み出そうとすると──。
「失せろ」
さっきまで僕に甘い言葉を囁いていたユージーン様の口から、温度のない声が発せられた。
驚いた二人だったけど、すぐに悲しげな表情に変わる。
綺麗なエメラルドグリーンの瞳がユージーン様に似ている女性が、泣き始める。
……ちなみに涙は出ていない。
「母親に向かって、なんてことを言うんだっ!」
急に怒号を放ったくすんだ金髪の男性は、切れ長の目元がユージーン様に似ているような気もする。
きっとお父さんなんだと思うけど、ぼってりとしたお腹に目がいってしまう。
「いいのよ、デニスっ。私たちが悪いのよっ。いくら逆らえなかったとはいえ、この子を手放してしまったのだから……っ」
「ルミエールっ。そんなに泣くんじゃないよ。テオはきっと、久々の再会に驚いているだけだ。話せばきっとわかってくれるさ……」
「っ、ううっ、そうね。だって、私が死ぬ思いで産んだ息子なんだから……。たとえどんなに離れていても、私たちは血の繋がった家族なのっ」
ひしっと抱き合っている二人は、なにも知らない人から見たら、無理やり引き離された息子との再会を望んでいたように見える。
でも、息子を売って、お金を受け取っているんだよね?
ユージーン様の話によると、ヴァイオレット様は脅迫はしていないって言っていた。
ただ、大金を持って来て交渉していたって、僕は聞いている。
それなら、断ればよかっただけの話じゃないのかな?
もし命を狙われて、息子を手放すしか道がなかったのなら話は別なのかもしれないけど……。
いや。
それでも、もし僕とユージーン様に子供がいたとして、同じ状況になったとしても、絶対に手放すことはないと思う。
僕はもちろんだけど、きっとユージーン様も命懸けで守り抜くと思う。
でも、僕はそう思うだけで、ユージーン様は本当のご両親に会いたかったかもしれない。
僕はユージーン様の恋人だから、部外者ではないと思うけど、口出しをしていいのかわからない。
ただ、ひとつだけ言えることは、今のユージーン様はすごく機嫌が悪いということ──。
二人が縋るような視線を送っているけど、ユージーン様は珍しく顰めっ面だ。
なにを言っても、「出て行け」としか言わないユージーン様に業を煮やしたのか、悲劇のヒロインのような二人の視線が僕に突き刺さる。
「あなたは、テオの恋人? もしそうなら、一緒に私たちの話を聞いてほしいの……」
「ノエルに近付くな。穢らわしい」
二人が動く前に、すぐさま僕を守るように立ちはだかったユージーン様。
その広い背はとても頼もしいのだけど、ここは話を聞くだけでもしたらいいんじゃないかとも思う。
だって二人は、諦める気配がまったくないんだ。
もしかしたら、愛する息子を売ったことを後悔しているのかもしれない。
やり直したいと願うのなら、きちんと謝罪だけはしてほしいと思う。
今のユージーン様が、二人を受け入れるとは思えないけど……。
「ノエル。水魔法をぶっ放してくれ」
僕に振り返ったユージーン様の瞳は、本気の目をしていた。
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