125 / 137
その後
123
しおりを挟むユージーン様は謝罪の言葉もいらないみたいだ。
そう判断した僕は、笑顔で頷いた。
二人の服が汚れているし、匂いも酷い。
ついでだから、洗ってあげよう。
「水魔法? こんな可愛らしい子が……? まだ未成年じゃっ、へぶ────ッッ!!!!」
フードについている猫耳を見つめて、きょとんとしている二人に、僕は笑顔で水鉄砲を放つ。
少し強めの水圧になってしまったけど、ぽっこりお腹を狙ったから大丈夫だよね?
僕たちの愛の巣から吹っ飛んだ二人は、広い敷地にころんと転がっていた。
「あっ。シャワーにしてあげようと思ったのに、加減を間違えてしまいました」
「……ぷっ、ふふふっ。いや、ありがとう。まさかノエルが、人に向かって躊躇なく魔法を放つとは思わなかった。汚物を洗ってあげようとしてくれたんだね?」
「……えっと?」
「でもね? ノエル。汚物は洗っても綺麗にはならないんだ」
優しく教えてくれたユージーン様は、にこにこ笑っているはずなのに、目が笑っていなくてちょっと怖かった。
でも、褒めるように頭をなでなでされる僕は、得意げに胸を張る。
「あの二人の目的は、金の無心に来ただけだよ。だって、もし本当に会いたいと思っていたのなら、もっと早くに会いに来ていたはずだろう?」
「……たしかに」
「どうせ、あの女からの金の支払いが滞ったから、私のところへ来たんだ」
「っ……」
「ノエルは優しい子だから、絆されそうになっていなかった? あんな下手な演技に騙されないで」
そう言って微笑んだユージーン様が、どこか悲しげに笑ったように見えたのは、僕の気のせいじゃないと思う。
僕の大切な人を悲しませるなんて……。
本当の家族だとしても許せない。
僕の体が、怒りの感情でメラメラと燃えている。
「っ、ノエル?」
「テオはここで待っていてください。僕が話を聞いて来ますから」
ニッと笑った僕は、きっと悪役みたいな顔をしていると思う。
だって、僕にべったりのユージーン様が、今は頬を引きつらせて後退ったんだ。
僕がやばい子だって思われて、ユージーン様に嫌われたとしても、どうしても我慢できない。
ようやく起き上がって、辺りをキョロキョロと見回している二人に近付く僕は、仁王立ちする。
全身びしょ濡れになって震えているけど、自業自得だ。
「本当の目的はなんですか?」
「っ、ほ、本当に会いに来ただけよ? ずっと謝りたいと思っていたの──」
「謝罪は必要ないそうです。お帰りください」
「そんなっ、ううう……っ。このままじゃ、私たち借金奴隷にされてしまうわっ! もしそのことを知れば、テオは絶対に助けてくれるはずよ?! それなのに、どうして帰れだなんて酷いことが言えるの? 血も涙もないのねっ」
またしても泣き真似を始めた女性は、自分たちのことしか考えていない。
借りたお金は、自分たちで働いて返すべきだ。
僕のフラストレーションがたまる。
すっと立ち上がった小太りの男性は、ガタガタと足が震えているけど、鬼の形相をしている。
「養子に出したとはいえ、育ててやったんだ。息子なんだから、その分の金を支払うのは当然のことだろうっ!」
「やっぱりお金をたかりに来たんですね。最っっ低! 二度とテオの前に現れないでくださいっ!」
「っ、お前にどう思われようと、これは家族の問題だっ! ガキは引っ込んでろっ!」
唾を撒き散らした男性は、目が血走っている。
これ以上話しても無駄だと思ったけど、僕は声を張り上げた。
「僕はっ! テオの家族ですっ!!!!」
128
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる