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その後
124 ユージーン
しおりを挟む──僕はっ! テオの家族ですっ!!!!
愕然とする私の卑しい両親の前で、私の可愛い人が叫んだ。
その声は、あの小さな体のどこから出たのだろうと問いかけたくなるほど、大きな声だった。
ノエルの言葉に胸を打たれた私は、目頭が熱くなる。
「どんな理由であれ、あなたたちは、お金で愛する息子を売りました。その時点で、テオとの縁は切れています」
冷静に告げたノエルだが、声は震えていた。
怒りと悲しみでいっぱいになっていることが、声色で伝わって来ていた。
私のために頑張ってくれた愛おしい人に近付こうとすると、ノエルはすうっと大きく息を吸った。
「今のテオの家族は、僕だけだっ!!!!」
絶句する両親は、ノエルの顔から目を逸らせないでいた。
……もしかしたら泣いているのかもしれない。
駆け寄ろうとする私の肩に、そっと手が乗る。
振り返れば、大きな目を吊り上げるニコラスの手を引く、シアさんがいた。
気配がなくて驚いている間に、フェルノさんがノエルの隣に立つ。
「ノエル。それは間違いだよ」
「っ、父さん……?」
静かに現れたノエルの両親に「バ、バケモノッ!!」と叫んだ私の父が、その場で腰を抜かす。
真っ青な顔でガタガタと震える母の目もまた、どうしてか恐怖の色を滲ませていた。
誰からも好かれそうな穏やかな顔立ちの二人に、怯える要素は一つもないというのに──。
「私たちだって、テオくんの家族だ」
「っ、」
大きな桃色の瞳から、とめどなく涙を流すノエルの肩を抱いたフェルノさんの背を見つめるが……。
私の視界は歪んでいて、よく見えない。
「あんたたち。前回、釜茹での刑にしてやったのに、まぁ~た来たの?」
「ヒィィッ!」
「大袈裟なくらいにヒーヒー言っていたのは、演技だったのね? すっかり騙されたわ? でも、今回は容赦しない……。私の可愛い息子を傷付けたんだから!!」
普段はおっとりとした口調のシアさんだが、今は怒気を含んでおり、言葉の端々に侮辱がはっきり読み取れる。
私のために怒ってくれていることがわかり、熱いものが私の頬を伝う。
無様に這いつくばって逃げようとする私の元両親の前に、ニコラスがふわりと舞い降りた。
「逃がさないよ。僕の大好きなテオお兄ちゃんの名前を使って、買い物をしていたことは知っているんだからね」
天使のように愛らしいニコラスだが、ぼうっと右手に火の玉を作り出した。
その姿に震え上がる元両親は、必死に謝罪の言葉を吐き出しているが、それを無視するフェルノさんが二人を縄で縛り上げた。
その光景を見て涙を拭ったノエルは、青褪める二人の首根っこを掴む。
「この二人にお金を貸した人が、きっと血眼になって探しているはず……。僕が連れて行きます。だから、テオのことをよろしくお願いします」
「ああ、頼んだぞ。ノエル」
「はいっ! 待っててね、テオ」
そう言って、可愛らしく微笑んだノエルは、突然とてつもないスピードで空に舞い上がる。
悲鳴が聞こえて来たが、その声はすぐに聞こえなくなった。
「よし。これでようやく片付いたな?」
「ごめんね、テオちゃん。アイツらが前回来た時に、追い返したんだけど。私たちが甘かったわ」
「っ……」
どうしてか、フェルノさんとシアさんから謝罪される私は、いつのまにか二人が元両親を追い返してくれていたことを知った。
あの怯えようは、きっと魔法をぶっ放してくれたのだろう。
優しい二人がそんなことをするだなんて、全く想像出来ないが……。
迷惑をかけて申し訳ないと思うのに、感極まっている私は、お礼を伝えることが出来なかった。
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