127 / 137
その後
125 ユージーン
しおりを挟む「ノエルお兄ちゃんがいないからって、そんなに泣かなくてもいいのにっ。すぐに帰ってくるよ?」
こてりと首を傾げたニコラスが、私の手を握り歩き出す。
シアさんに背を押される私は、なんとか足を動かして小さな家に戻った。
すぐにキッチンに向かったシアさんは、白銀の髪を背ろで一纏めにし、今日は自分が料理を作ると意気込んでいる。
「おふくろの味」だと言いながら……。
目元を手で隠す私は、必死に込み上げてくるものを堪えているのに、どうしてか感情を制御することが出来ない。
「こら、ニコラス。テオくんの膝の上に乗ろうとするんじゃない。その席は、ノエルの席だぞ?」
「ええ~。仕方ないからパパの膝でいっか」
「……なんだ、仕方がないって」
「だって、テオお兄ちゃんの方がいい匂いがするんだもんっ」
「パパの加齢臭で我慢しなさい」
「カレーシュー?」
ピンと来ていないニコラスが可愛らしくて、私はくつくつと喉を鳴らした。
泣きながら笑っていた私が顔を上げると、穏やかな色をした緋色の瞳と目が合う。
こほんと咳払いをしたフェルノさんが、自身の膝を叩いた。
「テオくんも、乗るかね?」
「っ……」
大真面目な顔で告げたフェルノさんは、私を自身の息子だと告げてくれている。
笑顔で気持ちだけ受け取った私は、新しい家族に囲まれて、夕飯の席を共にした。
宿屋で調理を担当しているため、シアさんも料理上手だ。
ノエルと似た味にほっこりとするが、私が好む食材ばかりが使用されていることに気付いた。
ノエルと恋仲になる前から、何度か食事を共にしたことはあったが、その時から私のことをよく見てくれていたことを知る……。
いい歳して、今日は何度泣けばいいのだろうな?
私を苦しめたあの女と、私を売った両親を、ずっと恨んでいた。
だがなにより、幼少期をやり直したい気持ちが強かった。
弟に寄り添い、もっと家族を大切にしていたなら、もしかしたら売られることはなかったのかもしれないと思っていたから……。
でも、あの女の養子にならなかったとしても、どこか金持ちのお嬢様の婿になっていたのだろうなと予想出来て、これでよかったんだと思えた。
愛するノエルと出逢えただけでも幸せだというのに、これ以上ない幸福感に胸がいっぱいになる。
「もうっ。テオちゃんったら、泣くほど美味しかったの? なんていい子なのかしらッ♡ ……って、コラッ!! どさくさに紛れて、テオちゃんのお皿にピーマンを入れないっ!!」
「バレたっ」
「…………ふふっ、どれも美味しいです」
ほうっと声を上げたシアさんは、私を自慢の息子だとにこにこと笑っていた。
いつも近所の人たちにも私のことを自慢しているらしく、羨ましがられるのだと得意げに話す。
その姿がノエルと重なり、私は愛情で溢れる家族を、生涯大切にしていこうと決意した。
「ただいまっ!」
カラン、カランとベルの音が鳴ったと同時に、ノエルに飛びつかれた私は、小さな体をなんなく受け止めた。
私の膝の上に乗り、小太りのおじさんが重くて、何度も落としてしまったと話すノエル。
「わざとじゃないよっ?」と付け加えたノエルの目が泳いでいて、皆が大笑いしている。
私の顔色を窺っているノエルは、元両親にお茶目な復讐をしてくれたようだ。
また感動が押し寄せて来ているのだが、ノエルは私に嫌われたと思っているのか、上目遣いで見つめられてしまう。
ご両親の前ではさすがに何も出来ないので、熱い視線を送り返しておく。
「お邪魔みたいだから、帰りましょうか♡」
「そうだな、また来るよ」
「……チッ。ふたりのチューが見たかったのに」
にんまりしているニコラスの顔を見ていられなくなったのか、ノエルが私の胸元に顔を隠す。
小さく笑った私は、私のために駆けつけてくれた三人に感謝の気持ちを伝えた。
用がなくても遊びに来るようにと言いつけられて、笑顔で了承した。
135
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる