4 / 46
3 初夜はいつですか……?
しおりを挟む一年間の婚約期間を終え、ついにフレイはヴァレリオと婚姻した。
王族のような華々しい結婚式だった。
フレイがヴァレリオに想いを寄せていたのは、友人の間では周知の事実。
社交界でも知らない者はいないだろう。
皆に祝福され、夢のような時間を過ごした。
(ただ、誓いのキスは、額だったけど……。でも、これからヴァレリオ様と、初夜……ッ!!)
緊張がピークに達していたフレイだが、脳内はヴァレリオに愛される妄想でいっぱいだった。
そしてフレイは、いつも通りに湯浴みを済ませ、夫夫の寝室に案内された。
まだヴァレリオの姿はなく、落ち着かないフレイは、部屋を行ったり来たりして過ごす。
だが、愛用の寝巻きを見て、はたと思う。
「そういえば、初夜って、特別な夜着が必要なんじゃないのかな? ……あれ? ちょっと待って。湯浴みも、いつも通りじゃなかった!?」
大好きなヴァレリオに、可愛いと思われたい。
もっともっと愛されたい、と願うフレイは、慌てて身だしなみを整えていた。
しかし、いつまで経ってもヴァレリオは姿を現さなかった――。
「こんなに遅れるなんて、やっぱりおかしい。ヴァレリオ様に、なにかあったのかも……」
時計を見れば、夜中の二時だ。
心配になったフレイが寝室を出れば、警護を任された使用人が立っていた。
「奥様、どうかなさいましたか?」
「っ……いや、えっと……」
奥様、と呼ばれたことに、ドキッとしてしまったフレイだが、深呼吸をして自分を落ち着かせる。
そしてヴァレリオのことを聞いたが、「え?」と不思議そうな顔をされてしまった。
その後、フレイの専属侍従のコニーが現れた。
白銀の短髪に赤眼で、小動物のように愛らしいコニーは、フレイのためにヴァレリオが雇ってくれた使用人だ。
歳も近く、いつもフレイの恋の相談に乗ってくれる聞き上手な青年である。
「フレイ様、何かありましたか?」
夜遅いということもあり、フレイはコニーと共に一旦部屋に戻る。
こんな夜中に起こされて、眠たいはずのコニーだが、そんな態度はおくびにも出さずに、あたたかな紅茶を用意してくれた。
「あ、あのねっ。ヴァレリオ様に、何かあったのかと心配になって……」
ぱちぱちと、コニーが不思議そうに瞬きをする。
またしても「お前は何を言っているんだ?」といった顔をされてしまい、フレイはひとり困惑していた。
「怖い夢でも見たのですか? 私でよければ、フレイ様が眠りにつくまで、おそばにいますよ」
もちろん扉は開けておきます、と話したコニーに促され、フレイは寝台に横になった。
コニーが子守唄を歌い始め、フレイの心臓付近を優しくトントンと撫でる。
わけがわからないまま、フレイは天井を見上げていた。
(……どういうこと? 今日が初夜じゃないのかな?)
結局、結婚式で気を張っていたのか、フレイはぐっすりと眠りについていた。
◇◇◇
そして、翌朝。
フレイは気落ちしたまま食堂に向かっていた。
(ヴァレリオ様に愛されるどころか、コニーに寝かしつけられてしまった……)
しかし、食堂には当たり前のようにヴァレリオがいて、「おはよう、フレイ。いい朝だね」と、笑顔で挨拶をしてくれた。
その爽やかな笑顔にノックアウトされたフレイは、どうして初夜を放置したのかを、聞きそびれてしまった……。
日中はヴァレリオは当主の仕事をし、屋敷の管理を任されているフレイは、ジョナスや使用人たちと楽しい時間を過ごす。
食事の時間には、ヴァレリオも必ず顔を出してくれ、婚約していた頃と変わらず、ヴァレリオはフレイを大切に扱ってくれた。
(やっぱり僕たちは、相思相愛だよね?)
昨日は結婚式の挨拶等で、ヴァレリオは大忙しだったように思う。
だから、疲れて寝てしまっただけかもしれない。
(きっと、今夜が本番なんだ)
フレイは心の準備はできている。
むしろ、早く愛し合いたい気持ちでいっぱいだ。
そして夜を迎えたわけだが、またしてもヴァレリオは寝室には来なかった。
「ええっ、なんで……? どうしよう、初夜がいつなのかわからない……。恥ずかしいけど、ヴァレリオ様に聞いてみようか……」
コニーの話によると、ヴァレリオの体調が悪いだとか、仕事が忙しいだとか、そういったことではないらしい。
(こっそりと用意した夜空色の薄い夜着の出番は、一体いつ来るのかな……?)
居ても立っても居られなくなったフレイは、ガウンを羽織って、ヴァレリオの寝室に向かった。
しかし、護衛担当に止められ、またしてもコニーを呼ばれてしまった。
二日連続で、深夜に呼び出されたコニーに、怒られるかと思ったが。
さすがにフレイの様子がおかしいと察したのか、今日は寝かしつけられずに、真剣に話を聞いてくれるようだった。
「フレイ様? 当主様に何か用事があるのなら、昼間の方がよろしいかと……」
「っ、ひ、昼間!? そんなの、真っ昼間からは無理だよっ! ハレンチだっ!」
顔を真っ赤にして否定するフレイを、コニーはますます怪しげに見ている。
このままでは埒が明かない。
そう察したフレイは、初夜について、思い切って聞いてみることにした。
「普通、初夜は、夜にするものなんじゃないの?」
「……………へっ!?!?!?」
フレイの問いに、コニーが目を丸くする。
『初夜』を知っていたのか、といった驚いたような反応だった。
371
あなたにおすすめの小説
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる