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19 居場所がなくなる
しおりを挟む衝撃的なことが起こりすぎて、フレイは脳がショートしそうだった。
そんなフレイに気付いているのか、いないのか。
レニーが笑顔で追い打ちをかけてくる。
「これからは、一緒に暮らすことになるだろうし、フレイとは仲良くしたいと思ってるんだよ」
「…………」
そう言って、フレイの手を取ったレニーが、ふわりと微笑んだ。
(っ、一体、何の話をしているの……?)
なぜ、フレイが夫の元婚約者と一緒に暮らすことになるのか。
いくらレニーがジョナスの命の恩人だとしても、常識的に考えてあり得ないことだ。
全くもって理解不能なのだが、言いたいことは言えたのか、レニーは笑顔で去って行った。
「フレイ様……。大丈夫ですか?」
気遣わしげな表情のコニーに、フレイはぎこちなく頷いた。
「う、うん。ちょっとびっくりしただけ……」
強がっていると思われたのか、コニーの哀れむような視線に、胸が痛くなる。
でもフレイは、どうすることもできなかった。
(あの人に、僕の居場所が、取られちゃう……)
ジョナスやヴァレリオだけでなく、多くの使用人に囲まれているレニーから、フレイはそっと目を逸らした。
◇
台所に行き、客人のための料理を手伝うが、フレイは浮かない気分のままだった。
あれからヴァレリオとジョナスは、治療薬のことなどで忙しくしており、話せていないのだ。
(でも、レニー様も一緒に暮らすって話は、普通に考えてありえないし、心配しなくてもいいよね?)
もし、レニーがグランディエ公爵邸に留まりたいと願ったとしても、そもそもヴァレリオの許可が必要なのだ。
フレイを気遣い、レニーに挨拶しなくてもいいとまで話してくれたヴァレリオが、一緒に暮らすことを許可するはずがない。
それでも、レニーと顔を合わせたくないのだが、公爵夫人としてそのような行動は許されない。
それに、ジョナスの命の恩人ゆえに、皆がレニーを歓迎しているのだ。
(僕も、心を込めておもてなしをしないと……)
豪華なディナーを用意し、フレイも食堂に向かえば、既にジョナスとレニーが座っていた。
「お待たせしました」
笑顔で料理を運ぶフレイだが、内心動揺を隠せない。
席順が、いつもとは違ったからだ。
ジョナスの食事の手伝いをするため、フレイはいつもジョナスの隣なのだが、ジョナスの隣にはレニーが座っていた。
「っ……フレイがわざわざ作ってくれたの? フレイはすごいね、ありがとう」
純粋に喜んでくれているレニーは、さっそく食べようとご機嫌だ。
フレイもジョナスの隣に席を用意しようとしたが、レニーに制される。
「あっ、フレイ! ジョナス様はおひとりで食事をされるから、大丈夫だよ?」
「……えっ……?」
「ジョナス様には、ボクが特注したスプーンをプレゼントしたんだ。だから今日から、ジョナス様のお手伝いは必要なくなるんだ。よかったね、フレイ」
「…………」
さあ、食べましょう! と場を仕切るレニーに、フレイは自分の居場所がなくなるのを感じていた――。
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