愛のない結婚だと知ってしまった僕は、

ぽんちゃん

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24 フレイちゃん……。あなた、

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 三日ほど馬車に揺られ、ラヴィーン伯爵邸に到着すると、深夜にもかかわらず、フレイの両親が待っていた。

「おかえり、フレイ。さあ、早くパパに可愛い顔を見せておくれ」

 落ち着いた深緑色の髪と瞳を持つ男性が、笑顔で出迎えてくれる。
 フレイの父――ハリソンは、フレイが突然帰ってきたというのに、まったく迷惑そうにはしていなかった。
 両手を広げて抱擁ほうようを待つ母のフランシーヌも、大歓迎の姿勢だ。

 精神的にダメージを受けていたからか、フレイは初めての馬車酔いを経験し、気分は最悪だったが、ふたりのおかげで元気を取り戻すことができた。

「待っていたわ、フレイちゃん」

 フレイと同じ桃色の髪と瞳を持つ女性に、ぎゅうっと抱きしめられる。
 おっとりとしたフランシーヌに頬擦りをされ、フレイの涙腺は早々に崩壊した。

(父様と母様のように、絶対に幸せになると、そう約束して嫁いだのに……)

「っ……戻ってきて、しまいましたっ」

 急に泣き始めたフレイに戸惑うふたりは、顔を見合わせていた。

「あらあら。この子ったら、何を言ってるの?」

「…………なにがあったんだ? フレイ。ゆっくりでいいから、話せるかい?」

 心配してくれる両親と、談話室に向かう。
 両親がフレイの隣に座ってくれ、ひたすらに甘やかしてくれる。
 そうしてあたたかな紅茶を飲んで落ち着いたところで、フレイは全てを話すことにした。


「僕では、ヴァレリオ様のお心を、癒やすことはできませんでした。…………ヴァレリオ様に、真に愛する人ができたんです」

「「………………」」


 泣かずに話せたが、両親は無言だった。
 ちらりと両親の顔色をうかがえば、ふたりとも困惑しきった表情でフレイを見ていた。

「……どういうことだい?」

「ヴァレリオ様が寵愛しているのは、ヴァレリオ様の元婚約者のお方です。そのお方が、ジョナスお義父様の病の治療薬を用意してくださった、命の恩人なのです」

「それで?」

 話の続きを促すフランシーヌがにっこりと笑う。
 いつも穏やかな母の顔が、だからなんだ、と言いたげに見えたのは、フレイの気のせいだろうか。

「っ、そ、それで……ヴァレリオ様にとっての僕は、ただ政略結婚で選んだ相手で……。ヴァレリオ様は、生涯を共にしたいと思えるような相手に出会えたので、もう僕はお払い箱、だということです」

 フレイの話を聞き終えたハリソンは、どうにもおかしいと、首を傾げた。
 ヴァレリオが愛人を囲うような人だとは思っていなかったのだろう。
 フレイだってそうだ。

「いや、そうじゃない。実はね、ふたりが婚姻して一カ月した頃に、ヴァレリオ様が訪ねてきたんだ」

「……ヴァレリオ様が? そんな話は、聞いていませんけど……」

「うん。まあ、そうだろうね」

 肩を竦めたハリソンが、フランシーヌと顔を見合わせて笑い合う。
 フレイの現状を聞いて、どうして穏やかに笑っているのだろうか。
 もっと大騒ぎすると思っていたフレイは、不思議でたまらなかった。

「フレイの話した通り、ヴァレリオ様はジョナス様のために、結婚しようと決断したんだ」

「っ……やっぱり」

 ジョナスから聞いていた通りだったが、やはり辛い事実だ。
 恋愛結婚をしたつもりでいたことが、恥ずかしくてたまらない。
 フレイは唇を噛み締めた。

 しょんぼりするフレイの頭を優しく撫でたハリソンは、「でもね?」と優しい声で告げた。

「フレイと婚約してから、フレイのいいところをたくさん知って、フレイの隣にいるだけで、ヴァレリオ様は癒やされていたんだって」

「っ……」

 俯いていたフレイは、ハッと顔を上げた。

「フレイの未来ために、白い結婚をすると誓っていたけど……。その誓いを破ってでも、フレイと共に生きたいと思ったんだって。だから許してほしいって、私たちに頭を下げに来たんだよ」

「っ……う、うそだ、そんなのっ……そんな話、聞いてないっ」

 ヴァレリオが、フレイに囁いた愛の言葉が思い起こされる。
 宝物のようにフレイに触れる手は、いつだって優しかった。

(もし今の話が真実なら、ヴァレリオ様は、僕を愛してくれていた……?)

 今のヴァレリオには、レニーという存在がいるのに、フレイの気持ちは舞い上がってしまう。
 しかし、部屋の隅で気配を消し、ニコリとも笑っていないコニーの顔を見て、フレイは現実に引き戻された。

「っ……。でも、それはレニー様が現れる前の話でしょう? きっと今は、僕と結婚したことを後悔してると思う……」

「……フレイちゃん」

 そっとフランシーヌに抱き寄せられ、フレイは幼子のようにだるい体を預けた。

「フレイには、真実を話さなかったこと、本当に悪いと思ってる。でも私たちは、フレイならきっとヴァレリオ様と心を通わせることができると思っていたんだ。だって、ラヴィーン家で一番ヴァレリオ様のことを愛していたのは、フレイだっただろう?」

「っ、そう、だけど……」

 フレイはすっかり自信喪失していた。

「ヴァレリオ様のフレイへの気持ちは、そう簡単に揺らぐようなものではないと感じたけど……」

 話し合う必要があるとハリソンは言うが、フレイは拒否する。


「だって!! 離れには、レニー様が住んでいるんだよっ!? 僕、ヴァレリオ様が、他の人と愛し合うところを見ることなんて、耐えられないよ!!」


 ヴァレリオとレニーが睦み合っているところを想像し、急に気分が悪くなったフレイは、お手洗いに駆け込んだ。

「……うぇ……きもちわるい……」

 フレイは涙と口元を拭う。
 胃の中のものをすべて吐き出してしまった。
 それでも気分は優れず、泣いてばかりいるフレイの看病をしてくれたフランシーヌが、ポツリとこぼした言葉に、フレイはハッと目を見開いた。


「フレイちゃん……。あなた、悪阻つわりじゃない?」

「…………………………え?」
















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