World End

nao

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第6章:ギルド編

vsオーガ

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 ジンたちは接近する水弾をたやすく回避する。威力はあるがスピードはそれほどでもない。次の瞬間、彼らは会敵した。ジン達の目の前には身の丈2メートルを優に越えるオーガが5体現れた。

 オーガの特徴である禍々しいツノは3匹が2本、2匹が3本持っている。その上3本持ちの表皮の色は通常のオーガが緑色なのに対し、赤に近い。さらには情報通り、他の個体よりも一回りも大きい。3メートルに達するのではないだろうかとジンは推測した。

「2本持ちが3体に、3本持ちな上に魔物が2体か。割に合わんな」

 ハンゾーの言葉に心の中で同意する。通常オーガはツノによって能力の差が現れる。一般的な個体は1本角であるが、突然変異とでもいうのか、時折2本角のものも現れる。そういった個体は頭脳面でも肉体面でも、通常個体を上回っている。それだけでも厄介なのに魔物が2体だ。その上拙いながらも隊列を組み、配下の3人を理知的にコントロールしている。どう考えても、一冒険者パーティーが請け負う仕事の範疇を越えている。

「——————————!!!」

 隊列の中心にいた、おそらくリーダーと考えられる赤いオーガの片方が咆哮をあげる。ジンはさっと観察する。一回り大きい体躯、髪は薄汚い黄土色。剥き出しのおどろおどろしい牙。筋骨隆々の鋼のような肉体。他のオーガとは違い、曲がりなりにも服のようなものを身につけ、腰回りには長剣を差したベルト状のものを巻きつけている。人間としての名残が随所に見られる。もう1体の赤いオーガも武器は杖に近いものではあるが、やはり服のようなものを着ている。体型から雌のようである。他のオーガ達を観察すると、それぞれ剣、槍、棍棒を所持している。彼らは通常のものと同じでみすぼらしい格好に身を包んではいるが、その肉体は戦闘に特化している。

「動くぞ!」

 ハンゾーの声と同時に、オーガ達が動き始める。素早く隊列を整え、ジンとクロウは武器を抜き放ち、闘気を身に纏って相手の接近に備える。ハンゾーは剣を構え、それに闘気を集中させている。ミーシャは距離をとって法術の発動のために精神を統一している。

 一方オーガ達も無造作には攻めてこない。尖兵として2体が前に出る。棍棒と剣を持っている個体だ。その背後に槍持ちが、そしてさらにその後ろに魔物達が法術を発動させようとしている。狙いはおそらくミーシャであろう。彼女に獰猛な目を向けている。戦いにおいて法術を扱うものを真っ先に潰すのは妥当だろう。

 クロウの大盾に無骨な棍棒が振り下ろされる。それをしっかりと受け止めるも、骨の芯に響くほどの衝撃が襲ってくる。

「ぐっ!」

 その勢いに押されつつも、強化した肉体でなんとか相手の攻撃を抑え切る。だがその背後から、無骨な大剣を振り回してきたオーガには対応ができない。まるで仲間ごと両断するかのような勢いのその斬撃は、しかし下からジンが全力で殴りあげ軌道をそらすが、体が開いてしまう。棍棒のオーガも巧みにしゃがんで躱そうとしていた。どうやら元から動きを止めた獲物に追撃を加え、棍棒を持ったオーガはそれを巧みに避けるというのが前提の攻め方だったようだ。さらに体が伸びきったジンに槍持ちのオーガが鋭い突きを放つ。だがそれはクロウが大楯を巧みに動かして、ジンの体を守る。金属と金属がぶつかる音が響き渡った。そこでハンゾーが『飛燕』を放った。オーガ達は瞬時に後ろに後退してそれを回避する。

「たいした信頼関係だな」

 ジンの言葉にクロウは頷く。

「それに今まで戦ってきたオーガと違って、戦い方に戦略がある」

「ああ」

 クロウの指摘に今度はジンが頷いた。統率のとれた連携に、瞬時の状況判断。それらが通常個体とかけ離れている。否、単なる2本角たちとも逸脱している。彼らの動きには人間臭さが垣間見えているのだ。

「多分、戦闘訓練をあの赤いやつに施されているのだろうな」

 ハンゾーの考えは事実であった。赤い雄オーガは仲間を作っていく上で真っ先に行ったのが戦闘能力を向上させるための特訓である。知能があまり高くないオーガも、流石に体に叩き込まれた技術は自由に使うことができる。戦闘偏差値とでもいえばいいか、それは普通のオーガの10倍はあるだろう。

「みんな行くよ!」

 その声で、一斉にジン達も下がる。瞬間、光の線が放たれた。その光が3匹のオーガに迫る。しかし、それは水の壁に防がれる。後ろにいたオーガリーダーが発動したのだ。光が屈折し、あらぬ方へと飛んで行った。

「対処法もしっかりと理解している、か」

「まだまだぁ!」

 ハンゾーの言葉を無視して、今度は石で出来た槍が10本、オーガ達に襲い掛かる。しかしこれはもう1体の雌の魔物が地面に手をついて岩の壁を作り上げていた。槍はスピードを意識していたため、強度はあまり高くなかったのか、壁にぶつかってあっさりと割れてしまった。

 その結果を見る前に風の刃がミーシャに襲いかかる。だがクロウが素早く彼女の前に入り、盾を構えてそれを防ぐ。お返しとばかりにジンが無神術で作り上げた、炎の高速の散弾を飛ばす。それが2本角のオーガ達に打つかる。オーガ達はたじろぎはするが、大してダメージは見られない。すると槍のオーガが投擲の姿勢を見せて、ジンに向かって槍を投げつけた。

「ちっ!」

 高速で迫る槍をバク転の要領で回避する。それはそのまま数メートル先の岩に深々と突き刺さった。当たれば確実に即死だろう。ジンは冷や汗を掻きながらも、集中は途切らせない。それが何本も何本も飛んでくる。なぜかと疑問を持つも、すぐに理由を理解した。槍オーガに雌の赤オーガが岩槍の供給しているのだ。

「そんなのアリかよ!」

 ジンはぼやくが、どんどん槍が迫ってくる。それを回避しながらも相手の出方を見る。

 一方クロウはといえば棍棒と剣のオーガ達の攻めを必死になって抑えていた。ミーシャに仕切りに襲い掛かる攻撃をなんとか大盾で弾き、巨大なハルバードを振り回して、距離を作る。出来た空間にハンゾーが入り込んで、オーガに斬りかかる。しかし彼の攻撃はオーガリーダーが即座に対応して、水の壁を間に作り妨害する。ハンゾーの剣が壁を切り裂いた瞬間、水は刃へと変化して、ハンゾーに襲い掛かった。

「ふっ!」

 しかしハンゾーはそれを容易く躱し、切り飛ばした。すると追撃とばかりに横から飛んできた風弾がハンゾーを吹き飛ばす。いつの間にかオーガリーダーが移動していたのだ。目の前にいる2本角のオーガに視界が阻まれ、移動していることに気がつかなかった。おかげでハンゾーは吹き飛ばされるが、そこは戦闘経験によるものか、ぶつかる直前にその風弾に気がついた彼は、自ら後ろに飛んでダメージを抑える。そのまま空中で回転しながら、うまく木の幹に着地すると、『飛燕』を連続で放つ。3本の斬撃がオーガ達に襲い掛かる。しかし態勢が崩れながらでは、所詮牽制にしかならない。

「全く本当に割りに合わんな」

「ええ本当にそうですねお師匠様。でもこれぐらいなら」

 クロウは苦笑いしながら答える。今の攻防で敵の能力の高さが窺い知れる。だが程度は理解した。

「ああ、そうだな」

 確かに驚異的ではあるが、それだけだ。彼らにとって敵ではない。案の定、次の瞬間に棍棒のオーガの右腕がクロウによって切り飛ばされた。もちろんオーガリーダーが防ごうとして張った壁の上からだ。

「———————————————!」

 棍棒のオーガが痛みに悲鳴をあげるが、それも一瞬のことだった。ハンゾーが高速で踏み込むと、剣を包んでいた闘気を鋭利な刃物へと変化させ、跪いたオーガの首を刎ね飛ばした。ズンッという音とともに棍棒のオーガは地面に倒れ伏した。コロコロと切り飛ばされたオーガの首が転がった。驚愕で一瞬体を固めた剣のオーガの左足を、ハンゾーが流れのままに切り飛ばした。咆哮を上げながら、グラリとバランスを崩してオーガは地面に腰から落ちた。それをハルバードで上からクロウが頭をカチ割った。脳が辺りに飛び散り、血臭が漂う。

 それと同時に槍のオーガのくぐもった悲鳴と倒れる音が聞こえた。ジンが短剣をオーガの心臓に深々と突き刺していたのだ。そこら中に岩の槍が所狭しと突き刺さっているが、その全てをジンは回避しきっていた。時折飛んでくる雌オーガの援護も巧みに避けて、ついに接近すると、そのまま止めを刺した。

「こっちは終わったぞ」

 ハンゾーがジンに声をかける。

「こっちもだ」

「それじゃあ後はあいつらってことですかね」

「援護は任せて!」

 4人の視線の先には2体の魔物が、視線を鋭くしていた。

「———————————————!」

 オーガリーダーが剣を腰のベルトから抜きながら再び咆哮する。それに呼応するかのように、雌オーガが闇の霧をジン達の目を潰すために放った。周囲が一瞬にして暗闇に包まれた。
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