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第21話 これで最後かと思うと寂しいですね(1)
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突然訪れた襲撃事件の後、アウグスティン様はヒルデガルド嬢を自宅へと送った。
ヒルデガルド嬢は目を覚ますことはなかったので、女性騎士達が彼女を部屋まで運び、彼女の父親はアウグスティン様にお礼を言った。責めることはなかった。そして……。
「アウグスティン様……ご家族が心配していますよ?」
私はアウグスティン様のベッドに座る。やっぱり座り心地はとても良い。
アウグスティン様は布団にくるまって出てこない。返事もない。あれ以来、部屋に閉じこっている。
「オルガ嬢は……僕の願いを叶えてくれるのではなかったのですか?」
布団の中からくぐもった声が聞こえる。その声は震えている。
自分が連れて行ったレストランでヒルデガルド嬢が襲撃されたのだ。それはショックだろう。
あのシェフは昔、ヒルデガルド嬢を拐った貴族の家で働いていたシェフだった。ヒルデガルド嬢を拐った貴族は、あのシェフにとっては最高の雇い主だったのだろう。復讐するほどに。
アウグスティン様は悪くない。彼は貸し切りのできるレストランを探しただけだ。湖畔にあった何軒ものレストランで声をかけた店にあのシェフがいただけだ。あのシェフにとっては好奇だったのだろう。アウグスティン様とヒルデガルド嬢にとっては不幸だったけど。
「願い?私は叶えようとしていますれど?」
「どこがですか?ヒルデガルド嬢に更に深い心の傷を負わせてしました。こんなつもりじゃなかったのに」
そう、確かにそんなつもりはなかったのだろう。だが、それは人間であれば誰しもが生きているうちに味わう気持ちだ。全ての人が順風満帆な人生を歩むわけではない。アウグスティン様だって、それは分かっているはずだ。
「アウグスティン様の願いには『ヒルデガルド嬢の心に傷を負わせないも、身体を守る』もなかったですわね」
「……すみません、八つ当たりです」
グスグス言うくぐもった声がお布団の中から聞こえる。まだ12歳の子供なのに、自分を律しようとしている。本当に良い子だ。
この子と、もうお別れかと思うと、とても寂しい。
「ねぇ、アウグスティン様、少し雑談をしましょうか」
アウグスティン様の返事はない。だけど聞いていることは分かっている。
「私たち魔女の元に、娘の不治の病を治したい父親が来た時に、魔女はどうすると思いますか?」
「……それはきっと、『治してあげる』って言う簡単な答えではないんですよね?」
アウグスティン様は相変わらず布団の中だ。だけどちゃんと返事を返してくれた。
「ええ、そうですわ。ではどうすると思いますか?」
アウグスティン様が布団から、もそもそと出てくる。顔だけ出して布団に包まる姿は可愛らしい。
「その病の薬の作り方を教えてあげる……ですか?」
「あら、ではその娘が違う病気に罹ったらどうするんですの?」
「……え?まさか、薬を作れるように導くとでも?そんな途方もない。だってその間に娘さんが亡くなったら……」
「それでも人は作るのでしょう?自分と同じ思いをする人をひとりでも減らせるように」
「――――っ!」
「あら?違いました?私たち魔女は人という者はそうだと信じていたんですが……」
「……それだと、魔女は本当の意味では願いを叶えてくれてないという事になるじゃないですか……」
再びアウグスティン様は蓑虫の様に布団の中に戻っていく。どうやらショックだったらしい。
「あら?願いを叶えるが『魔女の贈り物』の絶対条件ですもの。願いは叶えますわ。先ほどの話に戻りますが、アウグスティン様の願いを聞くときに私は色々と聞いたでしょう?話しながら私たちは確実に願いを叶える方法を模索します。もし娘の薬を作れるほどの人間であれば、その様に導くでしょう。できない人間であれば、作れる人間の元に導くでしょう。どれも無理であれば、病気を魔法で治療しますわ。だけどそれは最終手段。だってそれは魔女にとって一番簡単な方法。一番屈辱的な方法ですわ。人を導けない魔女なんて三流扱いされてしまいますもの」
「……何が言いたいんですか?」
再び蓑虫アウグスティン様が現れる。なんとも忙しいものだ。そんなアウグスティン様の瞳はなんとも言えない感情を表している。
どうやら混乱している様相だ。聡くてもまだ子供。そこがかわいいところだと思うと同時に、ヒントをたくさん与えてしまう私はまだまだ甘い。これでは魔女仲間に笑われてしまうわね。
「アウグスティン様の願いは『マリア嬢が火傷を負った原因を調べ、ヒルデガルド嬢を相思相愛の相手と結ばせる』でしたわね。私はやろうと思えば、ヒルデガルド嬢のトラウマの原因である記憶を取り除き、王太子と結婚させることなんて容易いですわ。でもしなかった。それがなぜか、今からお話ししますわ」
私はスラリと立ち上がる。手を振ると、その先に過去の映像が立ち上がった。
ヒルデガルド嬢は目を覚ますことはなかったので、女性騎士達が彼女を部屋まで運び、彼女の父親はアウグスティン様にお礼を言った。責めることはなかった。そして……。
「アウグスティン様……ご家族が心配していますよ?」
私はアウグスティン様のベッドに座る。やっぱり座り心地はとても良い。
アウグスティン様は布団にくるまって出てこない。返事もない。あれ以来、部屋に閉じこっている。
「オルガ嬢は……僕の願いを叶えてくれるのではなかったのですか?」
布団の中からくぐもった声が聞こえる。その声は震えている。
自分が連れて行ったレストランでヒルデガルド嬢が襲撃されたのだ。それはショックだろう。
あのシェフは昔、ヒルデガルド嬢を拐った貴族の家で働いていたシェフだった。ヒルデガルド嬢を拐った貴族は、あのシェフにとっては最高の雇い主だったのだろう。復讐するほどに。
アウグスティン様は悪くない。彼は貸し切りのできるレストランを探しただけだ。湖畔にあった何軒ものレストランで声をかけた店にあのシェフがいただけだ。あのシェフにとっては好奇だったのだろう。アウグスティン様とヒルデガルド嬢にとっては不幸だったけど。
「願い?私は叶えようとしていますれど?」
「どこがですか?ヒルデガルド嬢に更に深い心の傷を負わせてしました。こんなつもりじゃなかったのに」
そう、確かにそんなつもりはなかったのだろう。だが、それは人間であれば誰しもが生きているうちに味わう気持ちだ。全ての人が順風満帆な人生を歩むわけではない。アウグスティン様だって、それは分かっているはずだ。
「アウグスティン様の願いには『ヒルデガルド嬢の心に傷を負わせないも、身体を守る』もなかったですわね」
「……すみません、八つ当たりです」
グスグス言うくぐもった声がお布団の中から聞こえる。まだ12歳の子供なのに、自分を律しようとしている。本当に良い子だ。
この子と、もうお別れかと思うと、とても寂しい。
「ねぇ、アウグスティン様、少し雑談をしましょうか」
アウグスティン様の返事はない。だけど聞いていることは分かっている。
「私たち魔女の元に、娘の不治の病を治したい父親が来た時に、魔女はどうすると思いますか?」
「……それはきっと、『治してあげる』って言う簡単な答えではないんですよね?」
アウグスティン様は相変わらず布団の中だ。だけどちゃんと返事を返してくれた。
「ええ、そうですわ。ではどうすると思いますか?」
アウグスティン様が布団から、もそもそと出てくる。顔だけ出して布団に包まる姿は可愛らしい。
「その病の薬の作り方を教えてあげる……ですか?」
「あら、ではその娘が違う病気に罹ったらどうするんですの?」
「……え?まさか、薬を作れるように導くとでも?そんな途方もない。だってその間に娘さんが亡くなったら……」
「それでも人は作るのでしょう?自分と同じ思いをする人をひとりでも減らせるように」
「――――っ!」
「あら?違いました?私たち魔女は人という者はそうだと信じていたんですが……」
「……それだと、魔女は本当の意味では願いを叶えてくれてないという事になるじゃないですか……」
再びアウグスティン様は蓑虫の様に布団の中に戻っていく。どうやらショックだったらしい。
「あら?願いを叶えるが『魔女の贈り物』の絶対条件ですもの。願いは叶えますわ。先ほどの話に戻りますが、アウグスティン様の願いを聞くときに私は色々と聞いたでしょう?話しながら私たちは確実に願いを叶える方法を模索します。もし娘の薬を作れるほどの人間であれば、その様に導くでしょう。できない人間であれば、作れる人間の元に導くでしょう。どれも無理であれば、病気を魔法で治療しますわ。だけどそれは最終手段。だってそれは魔女にとって一番簡単な方法。一番屈辱的な方法ですわ。人を導けない魔女なんて三流扱いされてしまいますもの」
「……何が言いたいんですか?」
再び蓑虫アウグスティン様が現れる。なんとも忙しいものだ。そんなアウグスティン様の瞳はなんとも言えない感情を表している。
どうやら混乱している様相だ。聡くてもまだ子供。そこがかわいいところだと思うと同時に、ヒントをたくさん与えてしまう私はまだまだ甘い。これでは魔女仲間に笑われてしまうわね。
「アウグスティン様の願いは『マリア嬢が火傷を負った原因を調べ、ヒルデガルド嬢を相思相愛の相手と結ばせる』でしたわね。私はやろうと思えば、ヒルデガルド嬢のトラウマの原因である記憶を取り除き、王太子と結婚させることなんて容易いですわ。でもしなかった。それがなぜか、今からお話ししますわ」
私はスラリと立ち上がる。手を振ると、その先に過去の映像が立ち上がった。
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