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第二章 ~魔王勇者課~リプタリア編
第16話 「公開」
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人型兵器に追い回されてから数日後、ドルーク長官の執務室にまたしてもメアリーベルは現れた。
「先日はどうも、素敵なデートへのお誘いありがとうございます」
「いやなに、ベルト君がどうしてもと言うから許可したのだが、お騒がせした様ですまないね」
「いえいえこちらこそ、…ただ予定を少し短縮したくなったくらいですので」
「それは困る、是非とも予定通りの日程でよろしく頼みたい」
「それはそちらの行動次第ですわ」
「何か穴埋めをご所望かな?」
「コロニーシップの一般公開をこちらの指定したタイミングで行っていただければ、」
「ふむ、時期にもよるがいつかね?」
「一隻目が完成した時点で公開を」
「……難しい問題だな」
「表向きの建造目的である植民惑星計画をでっち上げれば問題ないと思いますが?」
「……わかった。政府と話し合い、可能な限り希望に沿えるよう努力しよう」
「確約はしていただけませんのですね」
「こればかりは私の一存で決めるのは難しくてね」
「分かりました。では長官の事を信じてお待ちします。ですが、約束が果たされなかった場合、そちらのスケジュールが狂う事になろうともこちらは一切関知いたしませんのでそのおつもりで」
「脅しかね?」
「いえ、ただの報告です」
「予定を狂わされるのはどちらも困るということか」
「ご理解いただけた様で何よりです。ではまた、一隻目の完成時にお伺いします」
言う事を全て話したメアリーベルは魔法による転移で執務室を後にした。
「ふー、まったくどうして面倒事というものはこう重なるのかね」
ドルーク長官はため息をつきながらデスクにある端末から通信回線を開く。
「私だ、例の機材を1号艦に積み込む予定を繰り上げろ。最優先だ」
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執務室から転移したメアリーベルはさっそくベルト補佐官の部隊から追跡を受けていた。
「今日こそは逃がさんぞ!」
人型兵器に加え、今回のベルトは小型無人機を多数投入してメアリーベルを捕えようとしていた。
「前回よりも豪華だけど、数を増やすだけとか芸が無いなぁ」
ビル群の中を蛇行飛行しながら地下への入口を探すメアリーベルだったが、そこである違和感に気づく。
「下に行かせない気?」
小型無人機の大半はメアリーベルよりも下の空を飛び、下への退路を断つように飛行していた。加えて残りの無人機は周囲を囲むように人型兵器と連携して距離を狭めてくる。
「なるほど、考えたじゃない。けど、」
接触まであとわずかという所で、突然メアリーベルは急加速し、無人機や人型兵器でも追いつけないほどの速度で姿をくらませてしまった。
「ルークが居たから前回は逃げるのが難しかったけど、私ひとりならいくらでも手はあるのよ」
成層圏を越え、衛星でも発見が困難な宇宙空間まで逃走したメアリーベルは周囲に監視の目が無い事を確認してからある場所に向かって転移した。
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「くそ! 転移逃走対策として地下も含め周囲30キロにわたって無人機の警戒網を張ったというのにあんなシンプルな手段で逃げられるとは!」
「ベルト補佐官、どうか落ち着いて」
「私は落ち着いている!! それよりも奴はまだ補足できんのか!?」
「目標は推定でもマッハ20を超えていまして、現在使える衛星を手当たり次第徴用して捜索していますが、依然として……」
「ちぃ!」
――長官から会談中は手出しするなと言われていなければもっと良い捕獲手段があった物を!
「ベルト補佐官…、申し上げにくいのですが、これ以上明確な理由もなく軍部の兵器を徴用するのは困難です」
「理由だと? 奴らは執務室侵入の重要参考人だぞ?」
「ですから実害があったならともかく侵入しただけでこれ以上派手に軍部を動かすのはいくら政府から許諾があったとしても、その…」
「……マスコミが突っついてくるか」
「はい、彼らと市民を納得させる理由が無い限りこれ以上の動員はできません」
「………」
「ベルト補佐官」
「なんだ」
「長官から通信です」
「長官から?」
端末から通信を受け取ったベルトは長官と会話を交わし、しばらくすると乱暴に通話切って口を開く。
「総員撤収!! しばらくの間は通常業務に戻ってくれ」
「長官はなんと、」
「時期を待て、とのお言葉だ」
補佐官に従っていた部下達は彼の心境を察し、それ以上詮索することはできないと理解した。
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-とある場所にて-
「お疲れ~デスフレア、調子はどう?」
「…せんぱ~い、もう止めにしませんか~?(泣)」
「だ~め、もうやるっていっちゃったんだから別の手なんて出来るわけないでしょ」
「ヴィーギナウスのネルアミスじゃあるまいし、」
「だったら最初の時にあんたが出来るなんて言わなきゃよかったんでしょうが」
「だって、実際やってみてこんなに反応させるのが大変だったなんて思わなかったんですよ~」
「前に核融合魔法が使えるようになったとか自慢するからこういう目に合うのよ」
「えぇ~それってたんに先輩の八つ当たりじゃ」
「とにかく、一隻目が出来るのはあと半年後くらいだからそれまでに少しは進めときなさいよ」
「魔力切れで死んじゃいそうです」
「大丈夫、定期的にゴハンは届けるから」
「休暇がほしいです~~~!!!」
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-半年後-
その日、リプタリア全体である報道がなされ、その情報はすべての国民が知る事となった。
大勢の報道人が詰めかける会場で政府の要人が多数参席する中、会見が始まり、マイクの前で大統領の演説が始まった。
「お集まりの報道陣の方々、並びにテレビの前の国民の皆様、私、リプタリア大統領ゼルベルヤ・トーラスは今日という記念すべき日の報告を皆様にできる事に対して、喜びに打ち震えております。我が国が惑星統一国家となって早80年、各地域による格差、文化・風習への理解、そして教育や資源の偏りによって起こる争い。これらの問題を乗り越え世界を、リプタリアを理想郷にするべく我々はこれまで努力してまいりました。そして今、その為の新たな一歩としてかねてより望む声の多かった宇宙進出へと我々はその歩みを進めるのであります。ご覧ください!これこそが新天地へ皆様を運ぶ希望の船! コロニーシップ1番艦『ノアニクス』です!」
公開されたその巨大な船体と内部の地上と変わらない生活環境を備えたコロニーシップの姿にあるものは宇宙進出への夢を思い描き、またあるものはこの艦が作られた本当の目的を勘ぐりながら想像を膨らませるのだった。
「先日はどうも、素敵なデートへのお誘いありがとうございます」
「いやなに、ベルト君がどうしてもと言うから許可したのだが、お騒がせした様ですまないね」
「いえいえこちらこそ、…ただ予定を少し短縮したくなったくらいですので」
「それは困る、是非とも予定通りの日程でよろしく頼みたい」
「それはそちらの行動次第ですわ」
「何か穴埋めをご所望かな?」
「コロニーシップの一般公開をこちらの指定したタイミングで行っていただければ、」
「ふむ、時期にもよるがいつかね?」
「一隻目が完成した時点で公開を」
「……難しい問題だな」
「表向きの建造目的である植民惑星計画をでっち上げれば問題ないと思いますが?」
「……わかった。政府と話し合い、可能な限り希望に沿えるよう努力しよう」
「確約はしていただけませんのですね」
「こればかりは私の一存で決めるのは難しくてね」
「分かりました。では長官の事を信じてお待ちします。ですが、約束が果たされなかった場合、そちらのスケジュールが狂う事になろうともこちらは一切関知いたしませんのでそのおつもりで」
「脅しかね?」
「いえ、ただの報告です」
「予定を狂わされるのはどちらも困るということか」
「ご理解いただけた様で何よりです。ではまた、一隻目の完成時にお伺いします」
言う事を全て話したメアリーベルは魔法による転移で執務室を後にした。
「ふー、まったくどうして面倒事というものはこう重なるのかね」
ドルーク長官はため息をつきながらデスクにある端末から通信回線を開く。
「私だ、例の機材を1号艦に積み込む予定を繰り上げろ。最優先だ」
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執務室から転移したメアリーベルはさっそくベルト補佐官の部隊から追跡を受けていた。
「今日こそは逃がさんぞ!」
人型兵器に加え、今回のベルトは小型無人機を多数投入してメアリーベルを捕えようとしていた。
「前回よりも豪華だけど、数を増やすだけとか芸が無いなぁ」
ビル群の中を蛇行飛行しながら地下への入口を探すメアリーベルだったが、そこである違和感に気づく。
「下に行かせない気?」
小型無人機の大半はメアリーベルよりも下の空を飛び、下への退路を断つように飛行していた。加えて残りの無人機は周囲を囲むように人型兵器と連携して距離を狭めてくる。
「なるほど、考えたじゃない。けど、」
接触まであとわずかという所で、突然メアリーベルは急加速し、無人機や人型兵器でも追いつけないほどの速度で姿をくらませてしまった。
「ルークが居たから前回は逃げるのが難しかったけど、私ひとりならいくらでも手はあるのよ」
成層圏を越え、衛星でも発見が困難な宇宙空間まで逃走したメアリーベルは周囲に監視の目が無い事を確認してからある場所に向かって転移した。
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「ベルト補佐官、どうか落ち着いて」
「私は落ち着いている!! それよりも奴はまだ補足できんのか!?」
「目標は推定でもマッハ20を超えていまして、現在使える衛星を手当たり次第徴用して捜索していますが、依然として……」
「ちぃ!」
――長官から会談中は手出しするなと言われていなければもっと良い捕獲手段があった物を!
「ベルト補佐官…、申し上げにくいのですが、これ以上明確な理由もなく軍部の兵器を徴用するのは困難です」
「理由だと? 奴らは執務室侵入の重要参考人だぞ?」
「ですから実害があったならともかく侵入しただけでこれ以上派手に軍部を動かすのはいくら政府から許諾があったとしても、その…」
「……マスコミが突っついてくるか」
「はい、彼らと市民を納得させる理由が無い限りこれ以上の動員はできません」
「………」
「ベルト補佐官」
「なんだ」
「長官から通信です」
「長官から?」
端末から通信を受け取ったベルトは長官と会話を交わし、しばらくすると乱暴に通話切って口を開く。
「総員撤収!! しばらくの間は通常業務に戻ってくれ」
「長官はなんと、」
「時期を待て、とのお言葉だ」
補佐官に従っていた部下達は彼の心境を察し、それ以上詮索することはできないと理解した。
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「お疲れ~デスフレア、調子はどう?」
「…せんぱ~い、もう止めにしませんか~?(泣)」
「だ~め、もうやるっていっちゃったんだから別の手なんて出来るわけないでしょ」
「ヴィーギナウスのネルアミスじゃあるまいし、」
「だったら最初の時にあんたが出来るなんて言わなきゃよかったんでしょうが」
「だって、実際やってみてこんなに反応させるのが大変だったなんて思わなかったんですよ~」
「前に核融合魔法が使えるようになったとか自慢するからこういう目に合うのよ」
「えぇ~それってたんに先輩の八つ当たりじゃ」
「とにかく、一隻目が出来るのはあと半年後くらいだからそれまでに少しは進めときなさいよ」
「魔力切れで死んじゃいそうです」
「大丈夫、定期的にゴハンは届けるから」
「休暇がほしいです~~~!!!」
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-半年後-
その日、リプタリア全体である報道がなされ、その情報はすべての国民が知る事となった。
大勢の報道人が詰めかける会場で政府の要人が多数参席する中、会見が始まり、マイクの前で大統領の演説が始まった。
「お集まりの報道陣の方々、並びにテレビの前の国民の皆様、私、リプタリア大統領ゼルベルヤ・トーラスは今日という記念すべき日の報告を皆様にできる事に対して、喜びに打ち震えております。我が国が惑星統一国家となって早80年、各地域による格差、文化・風習への理解、そして教育や資源の偏りによって起こる争い。これらの問題を乗り越え世界を、リプタリアを理想郷にするべく我々はこれまで努力してまいりました。そして今、その為の新たな一歩としてかねてより望む声の多かった宇宙進出へと我々はその歩みを進めるのであります。ご覧ください!これこそが新天地へ皆様を運ぶ希望の船! コロニーシップ1番艦『ノアニクス』です!」
公開されたその巨大な船体と内部の地上と変わらない生活環境を備えたコロニーシップの姿にあるものは宇宙進出への夢を思い描き、またあるものはこの艦が作られた本当の目的を勘ぐりながら想像を膨らませるのだった。
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