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第七十四話 胃袋を掴むならこれだよね!
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久々の更新になります。漸く書き上げれた感じですm(_ _)m
まだ描きたいことが残っているので、これからも頑張ります
温かく見守ってもらえたら幸いですm(_ _)m
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「いらっしゃいませ。って、ダーリン」
美味しそうな匂いに釣られて来てみれば、カウンターの反対側からルナの声がした。
「あれ? ルナ、何でここに居るの?」
「えへへ、私ここでお店開くことになったの。どう、驚いた?」
照れくさそうに、悪戯っ子のように話す彼女。愛らしい赤いチェックのエプロンに三角巾を被るその姿はまさに“看板娘”だ。
「肉ジャガかな? 美味しそうだね、一つ貰える?」
「はい、エリーさん直伝の肉ジャガだよ」
照れくさそうに小皿を一つ手渡してくれる。俺はお礼を軽くして料理に箸を付けた。もとい、先割れスプーンを突きさす。
因みに、家で箸が使えるのは俺とラフィア、そしてキャロである。幼少期は学習率が高いのか、いち早く新しいものに順応した様だ。エリーは補助箸では様にはなっているが、ノーマルだとぎこちない。後の面々は補助箸で要練習ってとこ、日も浅いしね。
出来たてなのか、ジャガイモが芯まで熱い。
ホフホフしながら口の中でジャガイモが冷めるのを待つ。芯まで味が染みていて思わずにんまりとしてしまう。
「うん、美味しい。エリー顔負けの美味しさだね」
「しっかりと味が染みていますね。この短期間で此処まで美味しく出来れば大したものです」
ルナは気を利かせてラフィアの分も出してくれたようだ。ラフィアも満足そうな顔をしている。
「やったー! エリーさんにはまだまだ及ばないけど、ダーリンたちに褒められた。うれしい!」
ルナに笑顔の花が咲く。
「最初のお客はどんな人なのかなぁ~って思ってたけど、まさかダーリンたちだとは思わなかったよ」
「俺が最初のお客?」
「うん。物珍しいからか、みんな遠目では見るんだけど誰も購入しなくって。やっぱり値段が高いのかなぁ~」
しょんぼりとするルナ。奥を覗くとスタッフも少し暗い表情だ……
眉を寄せ、価格に目をやると、一皿、大銅貨一枚(=1000円)定食、大銅貨二枚、と有る。
旨いのだが、確かに高い。酒場で出されるのは割高だが、町の飯屋なら銅貨7、8枚程度出せばかなりの満足感はある。屋台に至っては小銅貨(=10円)でバラ売りする所すら有るくらいだ。
「確かに高級料理だ。まぁ、ダンジョン産をふんだんに使ってるから仕方ないかな?」
思わず眉尻を下げる。つられてルナも暗くなった。
「この様子だと客足が付かないかもしれない。だけど、食べたことあるルナはこの料理がおいしいことを知っているよね?」
ルナは、うん、と返事をすると覗き込むように俺を見る。真意を測りかねているようだ。
「だからね、来た人にまずは食べてもらうんだよ」
「だけどダーリン、だれも買ってくれないんだよ? せっかく作ったのに……」
口を尖らせて俯くルナ。なんともまぁ、可愛い仕草である。
「高いからね。ルナだって高いと思うものはなかなか手が出ないでしょ?」
彼女は、そりゃぁね、と小さな声で頷く。
「だから、少しだけタダで分けてあげるの」
何のことは無い、所謂試食だ。この町に来て分かったことは、
1. 値段交渉は当たり前。いくら値切れるかが腕の見せ所
2. 値段の中間帯が少ない。大概は高級か安物かどちらか
3. オマケはするが、試食が無い
である。
「いいの? タダで食べさせちゃって」
そんな勿体ないことを、と言外にするルナ。分からなくもない。まぁ、試食システムなんて日本だけじゃね? と思うし、異世界なら無くて当然かもね。
「少しだけだしね。だけどメインは入れないといけないよ。言い方悪いけど、餌付けをするんだから一番おいしい所を入れないと効果が薄いからね」
「ダーリンって、やる事大胆だね。そんな大盤振る舞いしたらすぐに破産しそうなのに……」
少量ではあるが、メインを入れるという事に驚いていた。否、呆れているのかもしれないな……
「“損して得取れ”だよ。この料理を一度知ったらまた欲しくなるさ」
そう言うとルナは、なるほどぉ、と感心していた。
試食の量や呼び込みの仕方などを詳しく説明をして直ぐに出来そうか確認する。ルナは思考が柔軟で、定食用の小皿で対応出来そうだという。ならば直ぐにやろうと促した。
「ん~ じゃぁ、ミルリア、あなた呼び込みをしてくれるかな。ルードは盛り付けね」
テキパキと指示を出すルナ。店内が俄かに活気づいた。対策が決まれば後はそれに沿って動くだけ。
それはさて置き、
「数日様子見て、それでも売れ行きが悪かったら対策を考えようか」
「分かった。その時は相談するね」
ルナは気合を入れ直し調理場へと向かう。
屋内にも拘らず匂いが充満していないところを見ると、換気扇の類が有るかもしれない。切ったら匂いで釣れるかな? 後で確認してみるか。
小腹も満ちたところでぶらりと店内巡りを再開。
「それにしても懐かしいものを見た」
「何が懐かしかったのですか?」
どうも口にしていたようだ。ラフィアが覗き込んでくる。
「ん、いやぁ、さっきのスプーンだよ。先端が割れていたでしょ? 地球に居た頃の給食セットだったんだよ」
正確には“俺”は地球に今でもいる。地球に居る俺をザーナが再現したのが今の俺の基なのだから。
ラフィアに給食の説明をしつつ、学校の概要を話す。
「面白いシステムも有るものですね」
と、面白がられたよ。
他愛もない話をしつつ、ウナの居るバックヤードへと移動する。開店祝いに顔を見せに行くのだ。手土産ないけど……
でも仕方ないでしょ。此の開店自体がサプライズされたものなんだし……
途中、サービスセンターでウナに会いたい旨を話すと悪戯だと思われたようで確認に時間を要し、確認を終えた彼女は平謝りしてきたという一幕があった。
そりゃぁ、悪戯だと思うよな、アポなしだし。彼女には悪いことしたなぁ……
「ウナ、開店おめでとう。というか、びっくりしたよ、色々と……」
「ありがとうございます、晴成様。これも晴成様やラフィア様のお許しがあればこそ、です」
深々と頭を下げるウナ。キャリアウーマン然とした彼女が子供二人に頭下げる光景に驚いたのか、周りにいるスタッフの動きが止まる。
「ん、まぁ、でもこれからだよ。どれだけリピーターを得られるか、で全然違ってくるからね」
「はい、肝に銘じます」
「ウナ、わたくしからも一言。先ずは開店おめでとう。最初に言った通り、晴成さんの名に恥じない商いをしなさい。それに尽きます。良いですね」
「はい、心得ております」
ラフィアはウナの返事を受けて、宜しい、と一言返した。
俺たちは簡単な挨拶を済ませ、その場を後にした。
開店初日の忙しい時にあまり時間を取らせるのも迷惑な話だしな。
二人して店内をぐるりと回る。ラフィアは化粧品コーナーに興味津々だった。
今はまだ年齢的に必要ないのに、とか、自分でならもっと沢山の種類が出せるでしょ、とか余計な事は言わない。ただ、帰るときには店員におだてられて気を良くしたのか、ジュニアのメイクセットを手にしていた。
流石セールスのプロだ、とは思わなくも無いが、彼女が満足なら問題ない。
半日ほどのショッピングデートから帰る頃には来客者の上々の評判が耳に届く。
「あのタダで食べれる料理、超うまかった。タダほど旨いものは無いねぇ」
「タダの分だけとか、分かってないね。あれは買ってこそ真価を発揮するんだよ」
「フ、“皿買い”ではまだまだ。“定食”でこそ、あの料理の醍醐味が分かるのである」
どうやら、ルナの店に客が付いたようだ。
「ルナ、よかったですね」
「そうだね」
あ、キャロたちに土産買うのを忘れた。
そこには慌てて戻る俺が居た……
まだ描きたいことが残っているので、これからも頑張ります
温かく見守ってもらえたら幸いですm(_ _)m
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「いらっしゃいませ。って、ダーリン」
美味しそうな匂いに釣られて来てみれば、カウンターの反対側からルナの声がした。
「あれ? ルナ、何でここに居るの?」
「えへへ、私ここでお店開くことになったの。どう、驚いた?」
照れくさそうに、悪戯っ子のように話す彼女。愛らしい赤いチェックのエプロンに三角巾を被るその姿はまさに“看板娘”だ。
「肉ジャガかな? 美味しそうだね、一つ貰える?」
「はい、エリーさん直伝の肉ジャガだよ」
照れくさそうに小皿を一つ手渡してくれる。俺はお礼を軽くして料理に箸を付けた。もとい、先割れスプーンを突きさす。
因みに、家で箸が使えるのは俺とラフィア、そしてキャロである。幼少期は学習率が高いのか、いち早く新しいものに順応した様だ。エリーは補助箸では様にはなっているが、ノーマルだとぎこちない。後の面々は補助箸で要練習ってとこ、日も浅いしね。
出来たてなのか、ジャガイモが芯まで熱い。
ホフホフしながら口の中でジャガイモが冷めるのを待つ。芯まで味が染みていて思わずにんまりとしてしまう。
「うん、美味しい。エリー顔負けの美味しさだね」
「しっかりと味が染みていますね。この短期間で此処まで美味しく出来れば大したものです」
ルナは気を利かせてラフィアの分も出してくれたようだ。ラフィアも満足そうな顔をしている。
「やったー! エリーさんにはまだまだ及ばないけど、ダーリンたちに褒められた。うれしい!」
ルナに笑顔の花が咲く。
「最初のお客はどんな人なのかなぁ~って思ってたけど、まさかダーリンたちだとは思わなかったよ」
「俺が最初のお客?」
「うん。物珍しいからか、みんな遠目では見るんだけど誰も購入しなくって。やっぱり値段が高いのかなぁ~」
しょんぼりとするルナ。奥を覗くとスタッフも少し暗い表情だ……
眉を寄せ、価格に目をやると、一皿、大銅貨一枚(=1000円)定食、大銅貨二枚、と有る。
旨いのだが、確かに高い。酒場で出されるのは割高だが、町の飯屋なら銅貨7、8枚程度出せばかなりの満足感はある。屋台に至っては小銅貨(=10円)でバラ売りする所すら有るくらいだ。
「確かに高級料理だ。まぁ、ダンジョン産をふんだんに使ってるから仕方ないかな?」
思わず眉尻を下げる。つられてルナも暗くなった。
「この様子だと客足が付かないかもしれない。だけど、食べたことあるルナはこの料理がおいしいことを知っているよね?」
ルナは、うん、と返事をすると覗き込むように俺を見る。真意を測りかねているようだ。
「だからね、来た人にまずは食べてもらうんだよ」
「だけどダーリン、だれも買ってくれないんだよ? せっかく作ったのに……」
口を尖らせて俯くルナ。なんともまぁ、可愛い仕草である。
「高いからね。ルナだって高いと思うものはなかなか手が出ないでしょ?」
彼女は、そりゃぁね、と小さな声で頷く。
「だから、少しだけタダで分けてあげるの」
何のことは無い、所謂試食だ。この町に来て分かったことは、
1. 値段交渉は当たり前。いくら値切れるかが腕の見せ所
2. 値段の中間帯が少ない。大概は高級か安物かどちらか
3. オマケはするが、試食が無い
である。
「いいの? タダで食べさせちゃって」
そんな勿体ないことを、と言外にするルナ。分からなくもない。まぁ、試食システムなんて日本だけじゃね? と思うし、異世界なら無くて当然かもね。
「少しだけだしね。だけどメインは入れないといけないよ。言い方悪いけど、餌付けをするんだから一番おいしい所を入れないと効果が薄いからね」
「ダーリンって、やる事大胆だね。そんな大盤振る舞いしたらすぐに破産しそうなのに……」
少量ではあるが、メインを入れるという事に驚いていた。否、呆れているのかもしれないな……
「“損して得取れ”だよ。この料理を一度知ったらまた欲しくなるさ」
そう言うとルナは、なるほどぉ、と感心していた。
試食の量や呼び込みの仕方などを詳しく説明をして直ぐに出来そうか確認する。ルナは思考が柔軟で、定食用の小皿で対応出来そうだという。ならば直ぐにやろうと促した。
「ん~ じゃぁ、ミルリア、あなた呼び込みをしてくれるかな。ルードは盛り付けね」
テキパキと指示を出すルナ。店内が俄かに活気づいた。対策が決まれば後はそれに沿って動くだけ。
それはさて置き、
「数日様子見て、それでも売れ行きが悪かったら対策を考えようか」
「分かった。その時は相談するね」
ルナは気合を入れ直し調理場へと向かう。
屋内にも拘らず匂いが充満していないところを見ると、換気扇の類が有るかもしれない。切ったら匂いで釣れるかな? 後で確認してみるか。
小腹も満ちたところでぶらりと店内巡りを再開。
「それにしても懐かしいものを見た」
「何が懐かしかったのですか?」
どうも口にしていたようだ。ラフィアが覗き込んでくる。
「ん、いやぁ、さっきのスプーンだよ。先端が割れていたでしょ? 地球に居た頃の給食セットだったんだよ」
正確には“俺”は地球に今でもいる。地球に居る俺をザーナが再現したのが今の俺の基なのだから。
ラフィアに給食の説明をしつつ、学校の概要を話す。
「面白いシステムも有るものですね」
と、面白がられたよ。
他愛もない話をしつつ、ウナの居るバックヤードへと移動する。開店祝いに顔を見せに行くのだ。手土産ないけど……
でも仕方ないでしょ。此の開店自体がサプライズされたものなんだし……
途中、サービスセンターでウナに会いたい旨を話すと悪戯だと思われたようで確認に時間を要し、確認を終えた彼女は平謝りしてきたという一幕があった。
そりゃぁ、悪戯だと思うよな、アポなしだし。彼女には悪いことしたなぁ……
「ウナ、開店おめでとう。というか、びっくりしたよ、色々と……」
「ありがとうございます、晴成様。これも晴成様やラフィア様のお許しがあればこそ、です」
深々と頭を下げるウナ。キャリアウーマン然とした彼女が子供二人に頭下げる光景に驚いたのか、周りにいるスタッフの動きが止まる。
「ん、まぁ、でもこれからだよ。どれだけリピーターを得られるか、で全然違ってくるからね」
「はい、肝に銘じます」
「ウナ、わたくしからも一言。先ずは開店おめでとう。最初に言った通り、晴成さんの名に恥じない商いをしなさい。それに尽きます。良いですね」
「はい、心得ております」
ラフィアはウナの返事を受けて、宜しい、と一言返した。
俺たちは簡単な挨拶を済ませ、その場を後にした。
開店初日の忙しい時にあまり時間を取らせるのも迷惑な話だしな。
二人して店内をぐるりと回る。ラフィアは化粧品コーナーに興味津々だった。
今はまだ年齢的に必要ないのに、とか、自分でならもっと沢山の種類が出せるでしょ、とか余計な事は言わない。ただ、帰るときには店員におだてられて気を良くしたのか、ジュニアのメイクセットを手にしていた。
流石セールスのプロだ、とは思わなくも無いが、彼女が満足なら問題ない。
半日ほどのショッピングデートから帰る頃には来客者の上々の評判が耳に届く。
「あのタダで食べれる料理、超うまかった。タダほど旨いものは無いねぇ」
「タダの分だけとか、分かってないね。あれは買ってこそ真価を発揮するんだよ」
「フ、“皿買い”ではまだまだ。“定食”でこそ、あの料理の醍醐味が分かるのである」
どうやら、ルナの店に客が付いたようだ。
「ルナ、よかったですね」
「そうだね」
あ、キャロたちに土産買うのを忘れた。
そこには慌てて戻る俺が居た……
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