髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

文字の大きさ
39 / 218
第1章

39.変な目覚まし。

しおりを挟む
ケインとまたねと言葉をかわすと、またふわふわとした感覚になる。

あ!狼さんの名前決めてないじゃん!うそ……どうしよう……。

『すまん!それは、お昼寝してくれ!その時にきめよう!』
ケインの慌てた声が聞こえる。

なるほど…お昼寝ね。りょーかい。




ちゅんちゅん……
鳥の鳴き声が聞こえる。

ギュギャーーー!
え…なにこれ。

ぱちっ。
変な音が聞こえ、目が覚める。
辺りを見渡し、窓をみつけ外を見ると、まだ薄暗かった。明け方辺りだろう。

ギュギャーーー!

また聞こえる。なにこれ?
キョロキョロと辺りを見渡すと、みんなはまだ寝ている。変な音を立てるようなものは無さそうだけど……

ギュギャーーー!

はっ!
ずっとキョロキョロとしていると、目撃してしまった。
それはノアさんの、目覚まし。何の変哲もない目覚ましが、時折化け物の顔の形に変形し、騒ぐ。

ギュギャーーー!

うるさ!え?センスどうなってんの?こわ。異世界の目覚ましってこんなんなの?謎だわ。
そしてなぜこんなにうるさいのに誰も起きない。

ギュギャーーー!

もうわかったって!うるさいな!
え…これどうやって止めるの?
止めたくて目覚ましの周りでわちゃわちゃとし、ぺたぺたと目覚ましを触る。

すると丁度、口が現れる当たりを触れている時に──。
ギュギャーーコモモモモ……

手を食べられた。
しかし、目覚ましに現れた化け物の顔が驚いた顔をし、手を強く噛まないようにハムハムして、口から手を追い出そうとした。
なんか可愛いな…やさしい。
しかし、初め強く噛まれて手が痛い。

痛みで静かに涙が零れる。
この体は本当に痛みに弱い。

ぽろぽろと涙がこぼれると、目覚ましのお化けの目が泳ぎ、オドオドとし始めた。
そして、舌で俺の手を完全に追い出し、

ひょ~~~ひょっひょ~~~

と俺の様子を伺いながらへんな鳴き声を上げた。ちょっと面白い。
慰めようとしているのだろうか?
だが、痛みから出ている俺の涙は止まらずぽろぽろと零れる。

すると、困ったよう顔をした目覚ましのお化けから、手がにゅっと出てきた。
急に出てきた為、滅茶苦茶驚いた。手まで出てくるんだな……
そんなことを思っていると、その手で、俺の耳をそっと閉じた。

ギュギャーーーーーー!!!!!

すると、今までより一際大きい声を上げた。
耳を塞いだのはこの為だと思われるが、大きすぎて、全然聞こえる。滅茶苦茶聞こえる。
びっくりしすぎて心臓痛い。耳痛い。頭痛い。
すると涙ももっと零れる。

しかし、その大きな音に驚いたのは俺だけではなく、寝ていたみんなが飛び起きた。

「「「なんだ(なに)?!」」」

そして、こちらを見て皆がぎょっとする。
それは、俺が泣いてるから?それとも、目覚ましから手が出てるから?それが俺の耳を塞いでるから?
多分どれもだろう。俺ならそうだ。

「どうしたの?!」
ライさんが、俺のことを抱きしめ、ぽんぽんとしてくれる。
一瞬目覚ましのことを睨んでいた。

「こいつか?こいつがなにかしたのか?」
いやいや、違うよ?!
「壊すか?」
いや、ガイさんやめて!壊さないで!

ノアさんとガイさんの言葉に、目覚ましのお化けがギョッとして、バツの悪そうな顔をする。

「やっぱりお前か…」
いや違うよノアさん!
てかお化け!なんでそんな顔するの?!
あ、俺の手を噛んで、最初に泣かせたからか…いやあれは仕方ないでしょ!急に口に手が入ると反射的に閉じるものだよ!

「やっぱり壊そう」
ガイさん!そればっかり!!

「ちぁうの!こぁさないで!!!」

ガイさんが今にも壊しそうだったので、ライさんの腕から抜け出し、目覚ましを持ち守る。
子供の体には思ったより大きな目覚ましだった為、両手で抱きしめる。

すると目覚ましのお化けが手を伸ばし、きゅっとしてきた。
なんかさっきから可愛いなこの目覚まし。初めは化け物みたいな顔を急に出てくるから怖かったけど。

「ユキ、ならどうして泣いていた?その手はどうした?」

手を見ると歯型が着いていた。

ギャ!

俺の手を見て目覚ましのお化けが驚きの声をあげる。

「だいろーぅらよ~!」
そう声をかけ、ヨシヨシと撫でてやる。

「そいつに噛まれたんじゃないのか?」
「んとね、ぼくぁね、て、おくちに、いれちゃっちゃから。らからね、このこ、わるくにゃいよ!」












しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

モブっと異世界転生

月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。 ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。 目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。 サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。 死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?! しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ! *誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

縫剣のセネカ

藤花スイ
ファンタジー
「ぬいけんのせねか」と読みます。 -- コルドバ村のセネカは英雄に憧れるお転婆娘だ。 幼馴染のルキウスと共に穏やかな日々を過ごしていた。 ある日、セネカとルキウスの両親は村を守るために戦いに向かった。 訳も分からず見送ったその後、二人は孤児となった。 その経験から、大切なものを守るためには強さが必要だとセネカは思い知った。 二人は力をつけて英雄になるのだと誓った。 しかし、セネカが十歳の時に授かったのは【縫う】という非戦闘系のスキルだった。 一方、ルキウスは破格のスキル【神聖魔法】を得て、王都の教会へと旅立ってゆく。 二人の道は分かれてしまった。 残されたセネカは、ルキウスとの約束を胸に問い続ける。 どうやって戦っていくのか。希望はどこにあるのか⋯⋯。 セネカは剣士で、膨大な魔力を持っている。 でも【縫う】と剣をどう合わせたら良いのか分からなかった。 答えは簡単に出ないけれど、セネカは諦めなかった。 創意を続ければいつしか全ての力が繋がる時が来ると信じていた。 セネカは誰よりも早く冒険者の道を駆け上がる。 天才剣士のルキウスに置いていかれないようにとひた向きに力を磨いていく。 遠い地でルキウスもまた自分の道を歩み始めた。 セネカとの大切な約束を守るために。 そして二人は巻き込まれていく。 あの日、月が瞬いた理由を知ることもなく⋯⋯。 これは、一人の少女が針と糸を使って世界と繋がる物語 (旧題:スキル【縫う】で無双します! 〜ハズレスキルと言われたけれど、努力で当たりにしてみます〜)

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...