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第1章
40.目覚ましの心。
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俺は目覚まし時計。
ダンジョンのドロップアイテムだ。
ダンジョンにいつから居たのかは分からない。ただ、ずっと暗くて狭い場所にいた。そこが宝箱だったと知ったのは、こいつら、ノラガに出会ってからだった。
こいつらが言っていたのだ。『宝箱に目覚まし?!謎だわ……』と。
そして、夜になり、本来の使い方をされた。
普通に起きる時間を設定し、みなが眠る。
しかし、俺はダンジョンのドロップアイテム。
普通なはずがない。
朝、設定された時間になり、俺は役目を果たすべく、顔を出し、叫ぶ。
ギュギャーーー!
そんな突然の奇声に、ノラガが飛び起きる。
思ってたよりも醜い声が出て、俺も、驚いた。
『なんだ?!何が起きた?!』
そして、俺がまともな目覚ましではないことを皆が知った。
捨てられるのだろうか、売られるのだろうか…そんな心配をしていたが、俺の声だと知ったこいつらは、笑い、『起きれてちょうどいい』そういい、受け入れてくれた。
それから俺はこいつらの事が大好きだ。
それから約3年。毎日毎日聞く声は、流石に慣れ、中々起きてくれなくなってきて、俺は叫ぶ回数が増えていった。
それなのに、ずっと使い続けてくれている。俺は嬉しかった。だから、何がなんでも起こしてやろうと思っていた。
昨晩、子供がやってきた。
可愛いなと思ったが、朝、俺を怖がらないか心配だった。
いつものように寝る直前に時間を設定される。
『明日はゆっくりでいいよな~』
『そうだな』
『そうね…』
そんなことを言っていたのに、設定された時間は明け方。
きっと設定を間違えたのだろう。伝えたかったが、時間を設定された以上、時間が来るまで反応できない。
仕方ない。声は、いつもより控えめにしよう。きっとそれでも子供はびっくりし泣きだし、みな起きるだろう。
そう思っていた。
ギュギャーーー!
朝、時間になり声を出す。
その声に、子供は驚いたように起きた。しかし、泣かない。
どこからこの声がしているのだと、キョロキョロとしている。可愛いな~と思ったが、次の叫び声をあげる時。
ギュギャーーー!
声を上げた瞬間、子供と目が合った。なるべく怖がらせないように、叫んだ後、すぐに顔を引っこめる。
するとぺたぺたと触られている感覚になり、驚きと、丁度次の声のタイミングだったこともあり、つい叫んでしまった。
すると、口の中に手が入ってきて、驚き、おもいっきり噛んでしまった。
はっとしてすぐに口から追い出そうと優しく口を動かす。
しかし、思い切り噛んでしまった為、痛かっただろうなと思ったら、やっぱり泣き出してしまった。しかし、声は出ておらず、ただただ生理的な涙を流す。
この子供は一体何なのだ?
とにかく、噛んでしまったのだ。口でもごもごしていては、痛いかもしれない。
舌で無理やり追い出し、慰めようと声をかける。
しかし、俺の声は言葉にはならない。
仕方ない。仕方ないが、変な声で泣き止んでくれないかなぁなんて思っていたが、泣き止まない。
俺では泣き止ませることは出来そうにないので、誰かに起きてもらって慰めてもらわなければならない。
そう思い、少し疲れてしまうが頑張って手を出し、子供の耳を塞ぐ。
ギュギャーーーーーー!!!!!
今までで1番大きな声をだす。
その声は塞いでいても子供の耳に届いた様で、驚き余計に泣かせてしまった。
しかし、ノラガが起きる。
良かった。慰めてやってくれ。
そう思っていたら、俺が悪者にされた。
しかし、仕方ない。俺が初めに噛んで泣かせてしまった。
“壊す”。少し怖いが甘んじて受け入れよう。
すると、子供が庇ってくれた。
嬉しかった。とても。とても嬉しかった。
そして、驚いた。
俺を庇い、抱きしめてくれるこの子供に、俺も、腕をのばし応える。
この子は賢く、とても優しいんだなと思い、体の中心がポカポカとし始める。
初めてだ。今まで、ノラガには感謝していたし、大好きだった。しかし、ここまで体の中心がポカポカとする感覚は初めてだった。
そして、子供の手を見て、俺のやってしまった罪の重さに急激にあたたかかった所が冷めてゆく。
すると、子供は“大丈夫だよ”と拙いしゃべりで伝え、撫でてくれる。
冷えたところがまた、あたたかくなった。
ダンジョンのドロップアイテムだ。
ダンジョンにいつから居たのかは分からない。ただ、ずっと暗くて狭い場所にいた。そこが宝箱だったと知ったのは、こいつら、ノラガに出会ってからだった。
こいつらが言っていたのだ。『宝箱に目覚まし?!謎だわ……』と。
そして、夜になり、本来の使い方をされた。
普通に起きる時間を設定し、みなが眠る。
しかし、俺はダンジョンのドロップアイテム。
普通なはずがない。
朝、設定された時間になり、俺は役目を果たすべく、顔を出し、叫ぶ。
ギュギャーーー!
そんな突然の奇声に、ノラガが飛び起きる。
思ってたよりも醜い声が出て、俺も、驚いた。
『なんだ?!何が起きた?!』
そして、俺がまともな目覚ましではないことを皆が知った。
捨てられるのだろうか、売られるのだろうか…そんな心配をしていたが、俺の声だと知ったこいつらは、笑い、『起きれてちょうどいい』そういい、受け入れてくれた。
それから俺はこいつらの事が大好きだ。
それから約3年。毎日毎日聞く声は、流石に慣れ、中々起きてくれなくなってきて、俺は叫ぶ回数が増えていった。
それなのに、ずっと使い続けてくれている。俺は嬉しかった。だから、何がなんでも起こしてやろうと思っていた。
昨晩、子供がやってきた。
可愛いなと思ったが、朝、俺を怖がらないか心配だった。
いつものように寝る直前に時間を設定される。
『明日はゆっくりでいいよな~』
『そうだな』
『そうね…』
そんなことを言っていたのに、設定された時間は明け方。
きっと設定を間違えたのだろう。伝えたかったが、時間を設定された以上、時間が来るまで反応できない。
仕方ない。声は、いつもより控えめにしよう。きっとそれでも子供はびっくりし泣きだし、みな起きるだろう。
そう思っていた。
ギュギャーーー!
朝、時間になり声を出す。
その声に、子供は驚いたように起きた。しかし、泣かない。
どこからこの声がしているのだと、キョロキョロとしている。可愛いな~と思ったが、次の叫び声をあげる時。
ギュギャーーー!
声を上げた瞬間、子供と目が合った。なるべく怖がらせないように、叫んだ後、すぐに顔を引っこめる。
するとぺたぺたと触られている感覚になり、驚きと、丁度次の声のタイミングだったこともあり、つい叫んでしまった。
すると、口の中に手が入ってきて、驚き、おもいっきり噛んでしまった。
はっとしてすぐに口から追い出そうと優しく口を動かす。
しかし、思い切り噛んでしまった為、痛かっただろうなと思ったら、やっぱり泣き出してしまった。しかし、声は出ておらず、ただただ生理的な涙を流す。
この子供は一体何なのだ?
とにかく、噛んでしまったのだ。口でもごもごしていては、痛いかもしれない。
舌で無理やり追い出し、慰めようと声をかける。
しかし、俺の声は言葉にはならない。
仕方ない。仕方ないが、変な声で泣き止んでくれないかなぁなんて思っていたが、泣き止まない。
俺では泣き止ませることは出来そうにないので、誰かに起きてもらって慰めてもらわなければならない。
そう思い、少し疲れてしまうが頑張って手を出し、子供の耳を塞ぐ。
ギュギャーーーーーー!!!!!
今までで1番大きな声をだす。
その声は塞いでいても子供の耳に届いた様で、驚き余計に泣かせてしまった。
しかし、ノラガが起きる。
良かった。慰めてやってくれ。
そう思っていたら、俺が悪者にされた。
しかし、仕方ない。俺が初めに噛んで泣かせてしまった。
“壊す”。少し怖いが甘んじて受け入れよう。
すると、子供が庇ってくれた。
嬉しかった。とても。とても嬉しかった。
そして、驚いた。
俺を庇い、抱きしめてくれるこの子供に、俺も、腕をのばし応える。
この子は賢く、とても優しいんだなと思い、体の中心がポカポカとし始める。
初めてだ。今まで、ノラガには感謝していたし、大好きだった。しかし、ここまで体の中心がポカポカとする感覚は初めてだった。
そして、子供の手を見て、俺のやってしまった罪の重さに急激にあたたかかった所が冷めてゆく。
すると、子供は“大丈夫だよ”と拙いしゃべりで伝え、撫でてくれる。
冷えたところがまた、あたたかくなった。
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