髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ

文字の大きさ
40 / 218
第1章

40.目覚ましの心。

しおりを挟む
俺は目覚まし時計。
ダンジョンのドロップアイテムだ。

ダンジョンにいつから居たのかは分からない。ただ、ずっと暗くて狭い場所にいた。そこが宝箱だったと知ったのは、こいつら、ノラガに出会ってからだった。

こいつらが言っていたのだ。『宝箱に目覚まし?!謎だわ……』と。
そして、夜になり、本来の使い方をされた。
普通に起きる時間を設定し、みなが眠る。
しかし、俺はダンジョンのドロップアイテム。
普通なはずがない。

朝、設定された時間になり、俺は役目を果たすべく、顔を出し、叫ぶ。

ギュギャーーー!

そんな突然の奇声に、ノラガが飛び起きる。
思ってたよりも醜い声が出て、俺も、驚いた。

『なんだ?!何が起きた?!』

そして、俺がまともな目覚ましではないことを皆が知った。
捨てられるのだろうか、売られるのだろうか…そんな心配をしていたが、俺の声だと知ったこいつらは、笑い、『起きれてちょうどいい』そういい、受け入れてくれた。
それから俺はこいつらの事が大好きだ。

それから約3年。毎日毎日聞く声は、流石に慣れ、中々起きてくれなくなってきて、俺は叫ぶ回数が増えていった。
それなのに、ずっと使い続けてくれている。俺は嬉しかった。だから、何がなんでも起こしてやろうと思っていた。


昨晩、子供がやってきた。
可愛いなと思ったが、朝、俺を怖がらないか心配だった。

いつものように寝る直前に時間を設定される。

『明日はゆっくりでいいよな~』
『そうだな』
『そうね…』

そんなことを言っていたのに、設定された時間は明け方。
きっと設定を間違えたのだろう。伝えたかったが、時間を設定された以上、時間が来るまで反応できない。
仕方ない。声は、いつもより控えめにしよう。きっとそれでも子供はびっくりし泣きだし、みな起きるだろう。
そう思っていた。

ギュギャーーー!

朝、時間になり声を出す。
その声に、子供は驚いたように起きた。しかし、泣かない。
どこからこの声がしているのだと、キョロキョロとしている。可愛いな~と思ったが、次の叫び声をあげる時。

ギュギャーーー!

声を上げた瞬間、子供と目が合った。なるべく怖がらせないように、叫んだ後、すぐに顔を引っこめる。

するとぺたぺたと触られている感覚になり、驚きと、丁度次の声のタイミングだったこともあり、つい叫んでしまった。

すると、口の中に手が入ってきて、驚き、おもいっきり噛んでしまった。
はっとしてすぐに口から追い出そうと優しく口を動かす。
しかし、思い切り噛んでしまった為、痛かっただろうなと思ったら、やっぱり泣き出してしまった。しかし、声は出ておらず、ただただ生理的な涙を流す。
この子供は一体何なのだ?
とにかく、噛んでしまったのだ。口でもごもごしていては、痛いかもしれない。
舌で無理やり追い出し、慰めようと声をかける。
しかし、俺の声は言葉にはならない。
仕方ない。仕方ないが、変な声で泣き止んでくれないかなぁなんて思っていたが、泣き止まない。

俺では泣き止ませることは出来そうにないので、誰かに起きてもらって慰めてもらわなければならない。
そう思い、少し疲れてしまうが頑張って手を出し、子供の耳を塞ぐ。

ギュギャーーーーーー!!!!!

今までで1番大きな声をだす。
その声は塞いでいても子供の耳に届いた様で、驚き余計に泣かせてしまった。
しかし、ノラガが起きる。
良かった。慰めてやってくれ。
そう思っていたら、俺が悪者にされた。

しかし、仕方ない。俺が初めに噛んで泣かせてしまった。
“壊す”。少し怖いが甘んじて受け入れよう。

すると、子供が庇ってくれた。
嬉しかった。とても。とても嬉しかった。
そして、驚いた。

俺を庇い、抱きしめてくれるこの子供に、俺も、腕をのばし応える。
この子は賢く、とても優しいんだなと思い、体の中心がポカポカとし始める。
初めてだ。今まで、ノラガには感謝していたし、大好きだった。しかし、ここまで体の中心がポカポカとする感覚は初めてだった。

そして、子供の手を見て、俺のやってしまった罪の重さに急激にあたたかかった所が冷めてゆく。

すると、子供は“大丈夫だよ”と拙いしゃべりで伝え、撫でてくれる。
冷えたところがまた、あたたかくなった。









しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

モブっと異世界転生

月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。 ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。 目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。 サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。 死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?! しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ! *誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

処理中です...