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第2章
115.ノア家族の話─8。
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ジャルジャは大変混乱していた。
理由は2つあって、1つはナルの突然の出産報告で、もう1つはそれを話した時のフリネの素っ気ない対応だった。
フリネは『…そうですか。では、ノアに弟ができたのですね!良き名前をつけてあげてくださいね!!』と言った。その笑顔はとても素敵で一瞬脳がふやかされそうになったジャルジャは、もういっそふやかされて何も考えられなくなった方が楽なのでは?と思ってしまった。
悩みを共有してくれると思っていたフリネは全然当てにならず、ジャルジャは頼る人がおらず1人ずっともやもやを抱えたまま過ごすことになった。しかし名前は一刻も早くつけてやらねばと、次の日には生まれた子供に会いに行き、“マジュナ”と名付けた。
それからというものジャルジャの情緒は不安定になることが多くなった。しかしそれで家族に迷惑をかけるのは良くないと考えたジャルジャは仕事にうちこみ、長年積もらせた心のうちのモヤモヤに向き合うことをしなかった。
そんなこんなでジャルジャが奮闘して取り持っていた家族の関わりはなくなり、家の空気は最悪になっていった。
ナルはどんどん病んでいき、ジャルジャへの執着心を子供へ向け、ジャルジャをまるで悪者のようにした手上げていった。
その結果育ってしまったのは、『父のように仕事人間にはなりたくないから、剣術を頑張ろう!』なんてズレた思考を持つ長男のラルカと、『他人はゴミムシだから利用するものだ』という母ナルの教えを全うする性格最悪な末っ子マジュナ達だった。
そしてノアはフリネの自分に向けられる愛で充分満たされたが、父親からの愛には飢えてしまい、『他人には自分が貰った愛を分けてあげたい…!』と強く願うような優しい子に育った。それはフリネからの愛で満たされている部分が大きかったが、満たされていない部分を知っているからこその考え方だった。
そしてフリネは愛だけでなくきちんと教育も施していて、『劣っていると感じるなら自分が補って均衡を保てばいい。』という教えにならいノアは『人には得意不得意があるのだから補える人が補えばいいのだ』と考えるようになり、微塵も自分が跡を継ぐなどと考えていなかった。
しかしフリネをとことん嫌っているナルはノアが後継の座を狙っていると考え、その考えは息子にも伝播し、ラルカとマジュナはノアをいじめていた。それは、ナルも一緒だった。フリネにちょっかいを出すことは隙がなく出来なくて、八つ当たりのように矛先をノアに向けていたのだった。
ジャルジャは、それを全く知らなかった。
喧嘩を目撃すればお互いの言い分を聞き、そのうえでお互いに悪いと思うところは注意していたが、ラルカの主張には嘘が多く、ノアの怒られ率は高かった。しかしジャルジャはそこまでどちらかを叱るということはせず、仲直りをする方法を提案していた。
その方法はノアにはいい影響を与えたが、ラルカやマジュナには逆効果だった。
ジャルジャは子供たちがよく喧嘩をするのは自分が家族と向き合うことから逃げたからだと自分を責め、それでももうどうすればいいのかも分からなくなり、彼は年々窶れていった。そしてそれを紛らわせたくて仕事にどんどん傾倒していくという悪循環をうんでいた。
そうしてアクリアパート家当主のジャルジャは領地を穏やかで暮らしやすい場所にしたすごい領主として有名になったが、アクリアパート家は“穏やかで暮らしやすい”とは程遠いものとなっていた。
𓂃◌𓈒𓐍◌𓈒
長くなりましたが、これにて『ノア家族の話』は終わりです。
次回からちゃんと主人公が出てきます。お楽しみに。
理由は2つあって、1つはナルの突然の出産報告で、もう1つはそれを話した時のフリネの素っ気ない対応だった。
フリネは『…そうですか。では、ノアに弟ができたのですね!良き名前をつけてあげてくださいね!!』と言った。その笑顔はとても素敵で一瞬脳がふやかされそうになったジャルジャは、もういっそふやかされて何も考えられなくなった方が楽なのでは?と思ってしまった。
悩みを共有してくれると思っていたフリネは全然当てにならず、ジャルジャは頼る人がおらず1人ずっともやもやを抱えたまま過ごすことになった。しかし名前は一刻も早くつけてやらねばと、次の日には生まれた子供に会いに行き、“マジュナ”と名付けた。
それからというものジャルジャの情緒は不安定になることが多くなった。しかしそれで家族に迷惑をかけるのは良くないと考えたジャルジャは仕事にうちこみ、長年積もらせた心のうちのモヤモヤに向き合うことをしなかった。
そんなこんなでジャルジャが奮闘して取り持っていた家族の関わりはなくなり、家の空気は最悪になっていった。
ナルはどんどん病んでいき、ジャルジャへの執着心を子供へ向け、ジャルジャをまるで悪者のようにした手上げていった。
その結果育ってしまったのは、『父のように仕事人間にはなりたくないから、剣術を頑張ろう!』なんてズレた思考を持つ長男のラルカと、『他人はゴミムシだから利用するものだ』という母ナルの教えを全うする性格最悪な末っ子マジュナ達だった。
そしてノアはフリネの自分に向けられる愛で充分満たされたが、父親からの愛には飢えてしまい、『他人には自分が貰った愛を分けてあげたい…!』と強く願うような優しい子に育った。それはフリネからの愛で満たされている部分が大きかったが、満たされていない部分を知っているからこその考え方だった。
そしてフリネは愛だけでなくきちんと教育も施していて、『劣っていると感じるなら自分が補って均衡を保てばいい。』という教えにならいノアは『人には得意不得意があるのだから補える人が補えばいいのだ』と考えるようになり、微塵も自分が跡を継ぐなどと考えていなかった。
しかしフリネをとことん嫌っているナルはノアが後継の座を狙っていると考え、その考えは息子にも伝播し、ラルカとマジュナはノアをいじめていた。それは、ナルも一緒だった。フリネにちょっかいを出すことは隙がなく出来なくて、八つ当たりのように矛先をノアに向けていたのだった。
ジャルジャは、それを全く知らなかった。
喧嘩を目撃すればお互いの言い分を聞き、そのうえでお互いに悪いと思うところは注意していたが、ラルカの主張には嘘が多く、ノアの怒られ率は高かった。しかしジャルジャはそこまでどちらかを叱るということはせず、仲直りをする方法を提案していた。
その方法はノアにはいい影響を与えたが、ラルカやマジュナには逆効果だった。
ジャルジャは子供たちがよく喧嘩をするのは自分が家族と向き合うことから逃げたからだと自分を責め、それでももうどうすればいいのかも分からなくなり、彼は年々窶れていった。そしてそれを紛らわせたくて仕事にどんどん傾倒していくという悪循環をうんでいた。
そうしてアクリアパート家当主のジャルジャは領地を穏やかで暮らしやすい場所にしたすごい領主として有名になったが、アクリアパート家は“穏やかで暮らしやすい”とは程遠いものとなっていた。
𓂃◌𓈒𓐍◌𓈒
長くなりましたが、これにて『ノア家族の話』は終わりです。
次回からちゃんと主人公が出てきます。お楽しみに。
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