お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます

咲月ねむと

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​第17話 マニアックな解説

​「まずはこちら、天井のシャンデリアにご注目くださいませ!」

 ​私の高らかな声が広大な玄関ホールに響き渡る。指示棒代わりの『ピヨちゃん』が指し示す先で、巨大なシャンデリアが眩いばかりの光を放っていた。

​「あちらは、全部で128個のクリスタルパーツで構成されておりますの。わたくしが全て一つ一つ取り外し、洗浄液に浸した後、子羊の柔らかな皮で丁寧に磨き上げました!光の屈折率が、以前の1.5倍は向上しているはずですわ!」

 ​私の熱弁に視察団の役人たちはぽかんと口を開けている。聖銀の調査に来たはずが、なぜかお掃除の講義を聞かされているのだから無理もない。

​「つ、次に、こちらの廊下をどうぞ!三種類の最高級蜜蝋ワックスを塗り重ねておりますので、まるで氷の上を滑るかのような、滑らかな歩き心地をご体験いただけますわ!」

 ​私が胸を張って案内すると、リリア嬢はヒールをカツカツと鳴らしながら、わざとらしく顔をしかめた。

​「…ワックス臭くて、頭が痛いわ」
「まぁ、お気づきになりましたか!?」

 ​私はぱっと顔を輝かせた。

​「こちらは、リラックス効果のあるカモミールの香りを配合した、わたくしオリジナルの蜜蝋ですの!お目が高いですわね、リリア様!」
「なっ…!」

 ​嫌味のつもりが、またもや褒め言葉として変換されてしまい、リリア嬢は悔しそうに唇を噛んだ。

​「もういい!くだらん案内はそこまでだ、アリシア!」

 ​延々とお掃除自慢を聞かされ、ついにエドワード王子の堪忍袋の緒が切れた。

​「貴様は、我々が何のために、このような辺境まで足を運んだか分かっているのか!さっさと聖銀の鉱山とやらへ案内しろ!」

 ​その高圧的な命令に、カイ様の眉がピクリと動く。しかし、私が答える方が早かった。

​「まぁ!鉱山にご興味がおありでしたのね!あそこも素晴らしい現場でしたわ!特に、あの最奥部で発見いたしました聖銀の壁!あの輝きは、どんな宝石よりも美しくて、磨きがいがあって…!」
「話を聞けぇっ!」

 ​私の話がさらに脱線していく様に王子の額に青筋が浮かぶ。その時、今まで黙って成り行きを見守っていたカイ様が静かに口を開いた。

​「王子。まずは客人をもてなすのが、この家の流儀です。アリシアの案内が終わるまで、お静かにお待ちいただこう」

 ​その声は穏やかでありながら、逆らうことを一切許さない響きを持っていた。この屋敷での主導権が誰にあるのかを、暗に、しかし明確に示す一言だった。エドワード王子はぐっと言葉に詰まり屈辱に顔を歪めた。

​「…さ、皆様、こちらが応接室でございます」

 ​緊迫した空気をものともせず、私は一行を応接室へと案内した。そこには、湯気の立つ紅茶と色とりどりのお茶菓子が用意されていた。

​「まぁ、美味しい…!王宮の物より、香りが豊かだわ…」

 ​一口飲んだ役人の一人が驚きの声を上げる。
 それもそのはず。この茶葉も、お菓子に使われている果物も、すべて浄化されたこの土地で採れた、特別な恵みなのだから。
 ​その事実に、エドワード王子が再び衝撃を受けている。彼がしびれを切らし、テーブルを叩いて叫んだ。

​「カイ辺境伯!単刀直入に聞く!『聖女』の力とは何だ!聖銀は本当に存在するのか!すべて話せ!」

 ​ついに核心に迫る質問。
 カイ様の瞳が、すっと細められる。

 二人の間に火花が散る、その緊迫した瞬間。
 ​私は最高の笑顔で王子様の目の前にクッキーの皿を差し出した。

​「エドワード様、どうぞ、こちらのクッキーを。このお皿も、わたくしが特別な磨き粉で仕上げましたの。光にかざすと、虹色に輝いて見えませんこと?」

 ​私のマイペースすぎる一言に、部屋の空気が再びカッと音を立てて凍りついたのだった。
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