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第6話 聖女の片鱗
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カイザー陛下にエスコートされ、私は初めて帝国の夜の庭園に足を踏み入れた。
一歩進むごとに、花の甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。銀色の月の光が、丁寧に手入れされた花々や噴水を優しく照らし出し、そこはまるで御伽噺の世界のように幻想的だった。
「すごい……綺麗……」
思わず感嘆のため息が漏れる。
故国の王宮にも庭園はあったが、夜に散策するなどという優雅な経験は一度もなかった。
「君の方が、もっと綺麗だ」
すぐ隣から聞こえた囁きに、心臓が大きく跳ねる。見れ ば、カイザー陛下が熱の籠もった瞳で、私をまっすぐに見つめていた。その視線に耐えられなくなり、私は慌てて近くに咲いていた白薔薇へと目を逸らした。
「あら……」
その白薔薇は、夜の冷気に当てられたのか、少しだけ元気がなく、花びらがしょんぼりと萎れているように見えた。
なんだか、これまでの自分を見ているようで、無性に可哀想に思えてくる。私はカイザー陛下のことも忘れ、そっとその花に近づくと、両手で優しく包み込むように触れた。
『元気になって』
心の中で、そう強く願う。
すると、不思議なことが起こった。私の手のひらから、淡く、温かい光が溢れ出し、白薔薇を包み込んだのだ。光が消えた時、あれほど萎れていた薔薇は、まるで朝露に濡れたばかりのように瑞々しく、誇らしげに咲き誇っていた。
「え……?」
自分の身に何が起こったのか分からず、私はただ呆然と自分の手のひらと薔薇を交互に見つめる。
「やはり、な」
静かだが、確信に満ちた声が隣から聞こえた。
「素晴らしい力だ、エリアーナ。それが、君の聖なる力の一端だよ」
カイザー陛下は驚くでもなく、ただ愛おしそうに微笑んで、その薔薇をそっと摘み取ると、私の銀色の髪に優しく挿してくれた。
「今の君は、月の女神も嫉妬するほど美しい」
「陛下……」
「怖がらなくていい。それは、君が人々を癒し、幸せにするために与えられた、祝福の力なのだから」
カイザー陛下は私の手を取り、歩みを止めた。そして、私と向き合うと、真剣な眼差しでこう告げた。
「エリアーナ。君という存在そのものが、この国の希望なのだ。君がいれば、この帝国はもっと豊かになるだろう。民は病に苦しむこともなく、大地は永遠に実り続ける」
彼の言葉は、私の心を強く揺さぶった。
無能だと、出来損ないと、誰からも必要とされなかった私が、誰かの希望になれる……?
「だから、君に、お願いがある」
カイザー陛下は、握る手に少しだけ力を込めた。
「その力を、私の民のために使ってはくれないだろうか。もちろん、君が望むなら、だが。決して無理強いはしない」
彼の深紅の瞳が、私の答えを、ただ静かに待っている。
一歩進むごとに、花の甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。銀色の月の光が、丁寧に手入れされた花々や噴水を優しく照らし出し、そこはまるで御伽噺の世界のように幻想的だった。
「すごい……綺麗……」
思わず感嘆のため息が漏れる。
故国の王宮にも庭園はあったが、夜に散策するなどという優雅な経験は一度もなかった。
「君の方が、もっと綺麗だ」
すぐ隣から聞こえた囁きに、心臓が大きく跳ねる。見れ ば、カイザー陛下が熱の籠もった瞳で、私をまっすぐに見つめていた。その視線に耐えられなくなり、私は慌てて近くに咲いていた白薔薇へと目を逸らした。
「あら……」
その白薔薇は、夜の冷気に当てられたのか、少しだけ元気がなく、花びらがしょんぼりと萎れているように見えた。
なんだか、これまでの自分を見ているようで、無性に可哀想に思えてくる。私はカイザー陛下のことも忘れ、そっとその花に近づくと、両手で優しく包み込むように触れた。
『元気になって』
心の中で、そう強く願う。
すると、不思議なことが起こった。私の手のひらから、淡く、温かい光が溢れ出し、白薔薇を包み込んだのだ。光が消えた時、あれほど萎れていた薔薇は、まるで朝露に濡れたばかりのように瑞々しく、誇らしげに咲き誇っていた。
「え……?」
自分の身に何が起こったのか分からず、私はただ呆然と自分の手のひらと薔薇を交互に見つめる。
「やはり、な」
静かだが、確信に満ちた声が隣から聞こえた。
「素晴らしい力だ、エリアーナ。それが、君の聖なる力の一端だよ」
カイザー陛下は驚くでもなく、ただ愛おしそうに微笑んで、その薔薇をそっと摘み取ると、私の銀色の髪に優しく挿してくれた。
「今の君は、月の女神も嫉妬するほど美しい」
「陛下……」
「怖がらなくていい。それは、君が人々を癒し、幸せにするために与えられた、祝福の力なのだから」
カイザー陛下は私の手を取り、歩みを止めた。そして、私と向き合うと、真剣な眼差しでこう告げた。
「エリアーナ。君という存在そのものが、この国の希望なのだ。君がいれば、この帝国はもっと豊かになるだろう。民は病に苦しむこともなく、大地は永遠に実り続ける」
彼の言葉は、私の心を強く揺さぶった。
無能だと、出来損ないと、誰からも必要とされなかった私が、誰かの希望になれる……?
「だから、君に、お願いがある」
カイザー陛下は、握る手に少しだけ力を込めた。
「その力を、私の民のために使ってはくれないだろうか。もちろん、君が望むなら、だが。決して無理強いはしない」
彼の深紅の瞳が、私の答えを、ただ静かに待っている。
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