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第8話 芽生える想い
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「その力を、私の民のために使ってはくれないだろうか」
私の答えを待つカイザー陛下の深紅の瞳は、どこまでも真摯だった。
命令ではない。懇願でもない。ただ、私の意志を尊重しようという、彼の優しさが伝わってくる。
ずっと、誰かの言いなりに生きてきた。
父の命令で、興味もない勉強をさせられ、アルフォンス殿下の言いなりに、自分を殺して過ごしてきた。
自分の意志で、何かを決めるなんて、初めてのことかもしれない。
「……はい」
私は、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「無能で、出来損ないだとばかり思っていた私ですが……そんな私でも、誰かのお役に立てるというのなら。喜んで、力を使わせていただきます」
その答えを聞いた瞬間、カイザー陛下は心底嬉しそうに微笑むと、私の体を力強く、しかし優しく抱きしめた。
「ありがとう、エリアーナ。君は、本当に……私の女神だ」
陛下の腕の中で、彼の心臓が力強く脈打っているのが伝わってくる。私の心臓も、同じくらい速く、そして温かく高鳴っていた。
◇
それから数日後。帝国での穏やかな生活を送る中で、私の耳に侍女たちが囁き合う声が偶然入ってきた。
「聞いた? アステル王国、大変なことになっているらしいわよ」
「ええ、瘴気が王都まで……。交易も完全に止まってしまったとか」
アステル王国――私の故国。
侍女たちの言葉に、私の胸がチクリと痛んだ。私を蔑み、追放した国。それでも、生まれ育った場所に変わりはない。
その夜、私の表情が翳っていることに気づいたカイザー陛下が静かに尋ねてきた。
「何か、心配事か?」
「……故国の噂を、少しだけ耳にいたしました。瘴気の災厄が起きていると……」
私がそう言うと、陛下は「そうか」と短く頷き、私の隣に座ると、その逞しい腕で私の肩をぐっと引き寄せた。
「心配するな。全て私がなんとかする」
「え……?」
「君はもう、アステルの人間ではない。私のヴァルハイム帝国の大切な庇護下にある。君は何も気に病むことなく、ただ、私のそばで笑っていてくれればいい」
有無を言わせぬ、力強い言葉。
それは不思議と私の不安を溶かしていった。
この人は、本当に私を守ってくれる。言葉だけでなく、行動で。その事実が、たまらなく嬉しかった。
「エリアーナ」
カイザー陛下は私の名を呼ぶと、私の顎にそっと指を添え、上を向かせた。
吐息がかかるほど近くにある、彼の美しい顔。
「初めて夜会で会った時から、君だけが欲しかった。それは、君が聖女だからというだけではない。君のその魂の清らかさに、どうしようもなく惹かれたんだ」
熱っぽい告白に、私の思考は真っ白になる。
嬉しい。恥ずかしい。夢を見ているみたいだ。色々な感情が混ざり合って、言葉にならない。
「私のものになってくれるか、エリアーナ」
彼の瞳が、答えを求めるように私を射抜く。
私は吸い込まれるように小さく頷いていた。
私の答えを待つカイザー陛下の深紅の瞳は、どこまでも真摯だった。
命令ではない。懇願でもない。ただ、私の意志を尊重しようという、彼の優しさが伝わってくる。
ずっと、誰かの言いなりに生きてきた。
父の命令で、興味もない勉強をさせられ、アルフォンス殿下の言いなりに、自分を殺して過ごしてきた。
自分の意志で、何かを決めるなんて、初めてのことかもしれない。
「……はい」
私は、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「無能で、出来損ないだとばかり思っていた私ですが……そんな私でも、誰かのお役に立てるというのなら。喜んで、力を使わせていただきます」
その答えを聞いた瞬間、カイザー陛下は心底嬉しそうに微笑むと、私の体を力強く、しかし優しく抱きしめた。
「ありがとう、エリアーナ。君は、本当に……私の女神だ」
陛下の腕の中で、彼の心臓が力強く脈打っているのが伝わってくる。私の心臓も、同じくらい速く、そして温かく高鳴っていた。
◇
それから数日後。帝国での穏やかな生活を送る中で、私の耳に侍女たちが囁き合う声が偶然入ってきた。
「聞いた? アステル王国、大変なことになっているらしいわよ」
「ええ、瘴気が王都まで……。交易も完全に止まってしまったとか」
アステル王国――私の故国。
侍女たちの言葉に、私の胸がチクリと痛んだ。私を蔑み、追放した国。それでも、生まれ育った場所に変わりはない。
その夜、私の表情が翳っていることに気づいたカイザー陛下が静かに尋ねてきた。
「何か、心配事か?」
「……故国の噂を、少しだけ耳にいたしました。瘴気の災厄が起きていると……」
私がそう言うと、陛下は「そうか」と短く頷き、私の隣に座ると、その逞しい腕で私の肩をぐっと引き寄せた。
「心配するな。全て私がなんとかする」
「え……?」
「君はもう、アステルの人間ではない。私のヴァルハイム帝国の大切な庇護下にある。君は何も気に病むことなく、ただ、私のそばで笑っていてくれればいい」
有無を言わせぬ、力強い言葉。
それは不思議と私の不安を溶かしていった。
この人は、本当に私を守ってくれる。言葉だけでなく、行動で。その事実が、たまらなく嬉しかった。
「エリアーナ」
カイザー陛下は私の名を呼ぶと、私の顎にそっと指を添え、上を向かせた。
吐息がかかるほど近くにある、彼の美しい顔。
「初めて夜会で会った時から、君だけが欲しかった。それは、君が聖女だからというだけではない。君のその魂の清らかさに、どうしようもなく惹かれたんだ」
熱っぽい告白に、私の思考は真っ白になる。
嬉しい。恥ずかしい。夢を見ているみたいだ。色々な感情が混ざり合って、言葉にならない。
「私のものになってくれるか、エリアーナ」
彼の瞳が、答えを求めるように私を射抜く。
私は吸い込まれるように小さく頷いていた。
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