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第9話 星空の誓い
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「私のものになってくれるか、エリアーナ」
熱を帯びたカイザー陛下の問いかけに、私は夢を見ているような心地で、小さくはっきりと頷いた。
私の答えを受け、陛下は満足そうに微笑むと、おもむろに私の手を取った。そして、先ほど庭園でそうしてくれたように、再び私の前に静かに跪く。
「エリアーナ」
今度は、先ほどよりもずっと真剣で厳かな声だった。
彼が懐から取り出したのは、黒いベルベットの小さな箱。蓋が開かれると、そこに収められていた指輪が満天の星の光を受けてキラリと輝いた。
中央に燃えるように輝くのは、彼の瞳と同じ深紅のルビー。それを支える台座は、私の髪の色のような、繊細で美しい銀細工で作られている。
一目で、私のためだけに作られたものだと分かった。
「エリアーナ・フォン・ヴィステル。どうか、私の妃になってほしい」
カイザー陛下は、私の瞳をまっすぐに見つめて告げる。
「このヴァルヘイム帝国の母として、生涯、私の隣で微笑んでいてはくれないだろうか」
ああ、なんてことだろう。
出来損ないと蔑まれ、誰からも愛されず、ただ息を潜めて生きてきた私が。
大陸一と謳われる偉大な皇帝陛下から、こんなにも真摯に愛を乞われている。
これまでの不遇な人生が、すべてこの瞬間のためにあったのではないかとさえ思えてくる。
私の瞳から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちた。でも、それはもう、悲しみの涙ではなかった。
「はい……っ! 喜んで、お受けいたします……!」
涙でぐしゃぐしゃの顔だったけれど、私はきっと人生で一番美しい笑顔でそう答えた。
「ありがとう」
カイザー陛下はそう言うと、私の左手の薬指に、そっと誓いの指輪をはめてくれた。
驚くほどぴったりと、私の指に収まる。
彼は立ち上がると、私の涙を優しく指で拭い、その唇をゆっくりと重ねてきた。
甘くて、優しい、愛に満ちた口づけ。満天の星々が、まるで私たちを祝福するように、きらきらと瞬いていた。
◇
その頃、アステル王国は、まさに地獄の様相を呈していた。
王都を覆い尽くした瘴気は、ついに王宮の城壁をも突破し、その内部にまで侵入し始めていたのだ。
「うわあああっ!」
「くるな! あっちへいけ!」
玉座の間では、華麗な装飾が施された窓ガラスが音を立てて割れ、そこから紫黒の瘴気が、まるで生き物のように流れ込んでくる。
大臣たちは醜い悲鳴を上げて逃げ惑い、リリアは腰を抜かして震えるばかり。
そして、王太子アルフォンスは。
床に這いつくばり、ただただ絶望に顔を歪ませていた。
もはや、王太子の威厳も、プライドも、そこにはない。
彼の脳裏に浮かぶのは、自分自身が「無能」と罵り、追放した少女の姿。
なぜ、気づかなかった。
なぜ、手放してしまった。
「エリアーナ……助けてくれ……エリアーナ……」
後悔と懇願が入り混じった声は、瘴気の渦の中に虚しく消えていった。
熱を帯びたカイザー陛下の問いかけに、私は夢を見ているような心地で、小さくはっきりと頷いた。
私の答えを受け、陛下は満足そうに微笑むと、おもむろに私の手を取った。そして、先ほど庭園でそうしてくれたように、再び私の前に静かに跪く。
「エリアーナ」
今度は、先ほどよりもずっと真剣で厳かな声だった。
彼が懐から取り出したのは、黒いベルベットの小さな箱。蓋が開かれると、そこに収められていた指輪が満天の星の光を受けてキラリと輝いた。
中央に燃えるように輝くのは、彼の瞳と同じ深紅のルビー。それを支える台座は、私の髪の色のような、繊細で美しい銀細工で作られている。
一目で、私のためだけに作られたものだと分かった。
「エリアーナ・フォン・ヴィステル。どうか、私の妃になってほしい」
カイザー陛下は、私の瞳をまっすぐに見つめて告げる。
「このヴァルヘイム帝国の母として、生涯、私の隣で微笑んでいてはくれないだろうか」
ああ、なんてことだろう。
出来損ないと蔑まれ、誰からも愛されず、ただ息を潜めて生きてきた私が。
大陸一と謳われる偉大な皇帝陛下から、こんなにも真摯に愛を乞われている。
これまでの不遇な人生が、すべてこの瞬間のためにあったのではないかとさえ思えてくる。
私の瞳から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちた。でも、それはもう、悲しみの涙ではなかった。
「はい……っ! 喜んで、お受けいたします……!」
涙でぐしゃぐしゃの顔だったけれど、私はきっと人生で一番美しい笑顔でそう答えた。
「ありがとう」
カイザー陛下はそう言うと、私の左手の薬指に、そっと誓いの指輪をはめてくれた。
驚くほどぴったりと、私の指に収まる。
彼は立ち上がると、私の涙を優しく指で拭い、その唇をゆっくりと重ねてきた。
甘くて、優しい、愛に満ちた口づけ。満天の星々が、まるで私たちを祝福するように、きらきらと瞬いていた。
◇
その頃、アステル王国は、まさに地獄の様相を呈していた。
王都を覆い尽くした瘴気は、ついに王宮の城壁をも突破し、その内部にまで侵入し始めていたのだ。
「うわあああっ!」
「くるな! あっちへいけ!」
玉座の間では、華麗な装飾が施された窓ガラスが音を立てて割れ、そこから紫黒の瘴気が、まるで生き物のように流れ込んでくる。
大臣たちは醜い悲鳴を上げて逃げ惑い、リリアは腰を抜かして震えるばかり。
そして、王太子アルフォンスは。
床に這いつくばり、ただただ絶望に顔を歪ませていた。
もはや、王太子の威厳も、プライドも、そこにはない。
彼の脳裏に浮かぶのは、自分自身が「無能」と罵り、追放した少女の姿。
なぜ、気づかなかった。
なぜ、手放してしまった。
「エリアーナ……助けてくれ……エリアーナ……」
後悔と懇願が入り混じった声は、瘴気の渦の中に虚しく消えていった。
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