19 / 45
第19話 愛妻風たまご粥
しおりを挟む
「……起きませんね」
「起きないわね」
朝の光が差し込む寝室。
私と執事長は、ベッドの上で泥のように眠るジルベール様を見下ろしていた。普段なら夜明け前には起きて剣の素振りをしている彼が、今日は昼近くになってもピクリとも動かない。
頬は林檎のように赤く、荒い息を吐いている。
「うぅ……寒い……いや、暑い……」
彼がうわ言を漏らしながら寝返りを打つ。
おでこに手を当てると、火傷しそうなほどの高熱だった。
「大変です! 『氷の魔公爵』様が溶けてしまわれます!」
執事長がパニックになっている。
原因は明白だ。昨夜の仲直りの後、興奮冷めやらぬ彼は薄着のままバルコニーで月を見ながら「妻が可愛すぎる」と一時間ほど独り言を呟いていたらしい。
自業自得の湯冷めである。
「ん……レティシア……?」
重い瞼を開けたジルベール様が、私を見て手を伸ばした。
「すまない……今日は休むわけには……会議が……」
フラフラと起き上がろうとするが、すぐにバランスを崩して枕に沈む。
「ダメです。今日はお休みしてください。会議なんて、私がマヨネーズを賄賂に送れば延期できますから」
「だが……君に、朝食を作ってやれない……」
「まだ言ってるんですか。今は自分の体の心配をしてください」
私は彼を布団に押し戻し、キリッと宣言した。
「私が『特効薬』を作ってきます。それを食べて、大人しく寝ていてくださいね」
◇
厨房に入ると、私は腕まくりをした。
弱った胃腸に消化の悪いステーキは厳禁だ。
かといって、ただの白粥では栄養が足りないし、何より食いしん坊の彼が満足しないだろう。
「ここは、王道の『たまご粥』でいきましょう」
まずは土鍋に、昨日の夕食で使った鶏肉の残りから取った『鶏ガラスープ』を入れる。
そこに洗ったお米を投入。
強火で沸騰させたら、弱火にしてコトコト煮込む。ポイントは、お米の形が崩れて「花が咲く」までじっくり煮ること。そうすることで、デンプンが溶け出し、とろりとした優しい口当たりになる。
「味付けは、塩と……隠し味に『生姜の絞り汁』を少し」
生姜の力で体を芯から温めるのだ。
そして、ここからがメインイベント。
ボウルで溶いた卵を煮立ったお粥の中に高い位置から細く垂らし入れる。
菜箸でゆっくりと円を描くように混ぜる。
――ふわぁっ。
透明なスープの中で黄色い卵が花びらのように広がり、ふんわりと固まっていく。
「よし、完璧な『とき卵』!」
火を止め、彩りに刻んだ小ネギをパラリ。
土鍋の蓋をして蒸らせば完成だ。
◇
「……お待たせしました」
寝室に戻ると、ジルベール様はまだ苦しそうに眉を寄せていた。
サイドテーブルに土鍋を置き、蓋を開ける。
ふわぁ~……。
湯気と共に鶏出汁と生姜の優しい香りが広がる。その匂いに反応したのか、公爵がピクリと鼻を動かした。
「……いい匂いだ」
「食欲はありますか?」
「……少しだけなら」
彼は上体を起こしたが、手元が震えている。
スプーンを持つのも辛そうだ。
(仕方ないわね)
私はスプーンでお粥をすくい、ふーふー、と息を吹きかけた。
熱を冷ましてから、彼の口元へ差し出す。
「はい、あーん」
「……っ!?」
ジルベール様が目を見開いて固まった。
顔の赤さが三割増しになる。
「な、何を……。私は子供ではないぞ」
「病人でしょう? 今は甘えていいんですよ。ほら口を開けて」
私がニッコリ笑うと、彼は観念したように小鳥のように小さく口を開けた。
パクッ。
とろとろのお粥が口の中に滑り込む。
「……ん」
噛む必要はない。
舌の上で米がほどけ、鶏の旨味が染み込んだスープが喉を潤していく。卵のふわふわとした食感が弱った心と体を優しく撫でるようだ。
「……優しい味だ。体が、ポカポカしてくる」
「生姜が効いてますからね。もう一口いけますか?」
「……ああ」
二口目からは、彼の方から口を開けて待つようになった。
パクッ、モグモグ。
「あーん」のたびに彼の瞳がトロンと潤んでいくのがわかる。
普段の「氷の魔公爵」の面影はどこにもない。
ただの甘えん坊な大型犬だ。
あっという間に土鍋は空っぽになった。
「ごちそうさま。……美味かった」
「よかったです。じゃあ、薬を飲んで寝ましょうね」
私が片付けようと立ち上がった時、袖をクイッと引かれた。
「……行くな」
振り返ると、ジルベール様が布団から手を伸ばし、私の服を掴んでいた。
「……?」
「一人にしないでくれ。……寂しい」
熱のせいだろうか。
あの冷徹な公爵様が捨てられた子犬のような目で私を見上げている。破壊力が凄まじい。
「……わかりました。ここにいますよ」
私がベッドの端に腰掛けると、彼は安心したように微笑み、私の手を自分の頬に押し当てた。
「レティシアの手は……冷たくて気持ちいいな……」
「料理人は手が冷たいのが自慢ですから」
「……ずっと、こうしていてくれ……」
彼は私の手を握りしめたまま、スウスウと寝息を立て始めた。
無防備な寝顔。長く伸びた睫毛。
(……ずるいなぁ)
こんな顔を見せられたら、もう逃げられないじゃない。
私は彼の手を握り返し、その熱さが少し心地よいと感じていた。
ただのお粥でここまで懐かれるとは。
私の料理スキルも、とんでもないところまで来てしまったのかもしれない。
「起きないわね」
朝の光が差し込む寝室。
私と執事長は、ベッドの上で泥のように眠るジルベール様を見下ろしていた。普段なら夜明け前には起きて剣の素振りをしている彼が、今日は昼近くになってもピクリとも動かない。
頬は林檎のように赤く、荒い息を吐いている。
「うぅ……寒い……いや、暑い……」
彼がうわ言を漏らしながら寝返りを打つ。
おでこに手を当てると、火傷しそうなほどの高熱だった。
「大変です! 『氷の魔公爵』様が溶けてしまわれます!」
執事長がパニックになっている。
原因は明白だ。昨夜の仲直りの後、興奮冷めやらぬ彼は薄着のままバルコニーで月を見ながら「妻が可愛すぎる」と一時間ほど独り言を呟いていたらしい。
自業自得の湯冷めである。
「ん……レティシア……?」
重い瞼を開けたジルベール様が、私を見て手を伸ばした。
「すまない……今日は休むわけには……会議が……」
フラフラと起き上がろうとするが、すぐにバランスを崩して枕に沈む。
「ダメです。今日はお休みしてください。会議なんて、私がマヨネーズを賄賂に送れば延期できますから」
「だが……君に、朝食を作ってやれない……」
「まだ言ってるんですか。今は自分の体の心配をしてください」
私は彼を布団に押し戻し、キリッと宣言した。
「私が『特効薬』を作ってきます。それを食べて、大人しく寝ていてくださいね」
◇
厨房に入ると、私は腕まくりをした。
弱った胃腸に消化の悪いステーキは厳禁だ。
かといって、ただの白粥では栄養が足りないし、何より食いしん坊の彼が満足しないだろう。
「ここは、王道の『たまご粥』でいきましょう」
まずは土鍋に、昨日の夕食で使った鶏肉の残りから取った『鶏ガラスープ』を入れる。
そこに洗ったお米を投入。
強火で沸騰させたら、弱火にしてコトコト煮込む。ポイントは、お米の形が崩れて「花が咲く」までじっくり煮ること。そうすることで、デンプンが溶け出し、とろりとした優しい口当たりになる。
「味付けは、塩と……隠し味に『生姜の絞り汁』を少し」
生姜の力で体を芯から温めるのだ。
そして、ここからがメインイベント。
ボウルで溶いた卵を煮立ったお粥の中に高い位置から細く垂らし入れる。
菜箸でゆっくりと円を描くように混ぜる。
――ふわぁっ。
透明なスープの中で黄色い卵が花びらのように広がり、ふんわりと固まっていく。
「よし、完璧な『とき卵』!」
火を止め、彩りに刻んだ小ネギをパラリ。
土鍋の蓋をして蒸らせば完成だ。
◇
「……お待たせしました」
寝室に戻ると、ジルベール様はまだ苦しそうに眉を寄せていた。
サイドテーブルに土鍋を置き、蓋を開ける。
ふわぁ~……。
湯気と共に鶏出汁と生姜の優しい香りが広がる。その匂いに反応したのか、公爵がピクリと鼻を動かした。
「……いい匂いだ」
「食欲はありますか?」
「……少しだけなら」
彼は上体を起こしたが、手元が震えている。
スプーンを持つのも辛そうだ。
(仕方ないわね)
私はスプーンでお粥をすくい、ふーふー、と息を吹きかけた。
熱を冷ましてから、彼の口元へ差し出す。
「はい、あーん」
「……っ!?」
ジルベール様が目を見開いて固まった。
顔の赤さが三割増しになる。
「な、何を……。私は子供ではないぞ」
「病人でしょう? 今は甘えていいんですよ。ほら口を開けて」
私がニッコリ笑うと、彼は観念したように小鳥のように小さく口を開けた。
パクッ。
とろとろのお粥が口の中に滑り込む。
「……ん」
噛む必要はない。
舌の上で米がほどけ、鶏の旨味が染み込んだスープが喉を潤していく。卵のふわふわとした食感が弱った心と体を優しく撫でるようだ。
「……優しい味だ。体が、ポカポカしてくる」
「生姜が効いてますからね。もう一口いけますか?」
「……ああ」
二口目からは、彼の方から口を開けて待つようになった。
パクッ、モグモグ。
「あーん」のたびに彼の瞳がトロンと潤んでいくのがわかる。
普段の「氷の魔公爵」の面影はどこにもない。
ただの甘えん坊な大型犬だ。
あっという間に土鍋は空っぽになった。
「ごちそうさま。……美味かった」
「よかったです。じゃあ、薬を飲んで寝ましょうね」
私が片付けようと立ち上がった時、袖をクイッと引かれた。
「……行くな」
振り返ると、ジルベール様が布団から手を伸ばし、私の服を掴んでいた。
「……?」
「一人にしないでくれ。……寂しい」
熱のせいだろうか。
あの冷徹な公爵様が捨てられた子犬のような目で私を見上げている。破壊力が凄まじい。
「……わかりました。ここにいますよ」
私がベッドの端に腰掛けると、彼は安心したように微笑み、私の手を自分の頬に押し当てた。
「レティシアの手は……冷たくて気持ちいいな……」
「料理人は手が冷たいのが自慢ですから」
「……ずっと、こうしていてくれ……」
彼は私の手を握りしめたまま、スウスウと寝息を立て始めた。
無防備な寝顔。長く伸びた睫毛。
(……ずるいなぁ)
こんな顔を見せられたら、もう逃げられないじゃない。
私は彼の手を握り返し、その熱さが少し心地よいと感じていた。
ただのお粥でここまで懐かれるとは。
私の料理スキルも、とんでもないところまで来てしまったのかもしれない。
727
あなたにおすすめの小説
地味だと婚約破棄されましたが、私の作る"お弁当"が、冷徹公爵様やもふもふ聖獣たちの胃袋を掴んだようです〜隣国の冷徹公爵様に拾われ幸せ!〜
咲月ねむと
恋愛
伯爵令嬢のエリアーナは、婚約者である王太子から「地味でつまらない」と、大勢の前で婚約破棄を言い渡されてしまう。
全てを失い途方に暮れる彼女を拾ったのは、隣国からやって来た『氷の悪魔』と恐れられる冷徹公爵ヴィンセントだった。
「お前から、腹の減る匂いがする」
空腹で倒れかけていた彼に、前世の記憶を頼りに作ったささやかな料理を渡したのが、彼女の運命を変えるきっかけとなる。
公爵領で待っていたのは、気難しい最強の聖獣フェンリルや、屈強な騎士団。しかし彼らは皆、エリアーナの作る温かく美味しい「お弁当」の虜になってしまう!
これは、地味だと虐げられた令嬢が、愛情たっぷりのお弁当で人々の胃袋と心を掴み、最高の幸せを手に入れる、お腹も心も満たされる、ほっこり甘いシンデレラストーリー。
元婚約者への、美味しいざまぁもあります。
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます
咲月ねむと
恋愛
王宮で侍女として働く私、アリシアは、前世の記憶を持つ転生者。清掃員だった前世の知識を活かし、お掃除に情熱を燃やす日々を送っていた。その情熱はいつしか「浄化」というユニークスキルにまで開花!…したことに本人は全く気づいていない。
そんなある日、婚約者である第二王子から「お前の周りだけ綺麗すぎて不気味だ!俺の完璧な美貌が霞む!」という理不尽な理由で婚約破棄され、瘴気が漂うという辺境の地へ追放されてしまう。
しかし、アリシアはへこたれない。「これで思う存分お掃除ができる!」と目を輝かせ、意気揚々と辺境へ。そこで出会ったのは、「氷の騎士」と恐れられるほど冷徹で、実は極度の綺麗好きである辺境伯カイだった。
アリシアがただただ夢中で掃除をすると、瘴気に汚染された土地は浄化され、作物も豊かに実り始める。呪われた森は聖域に変わり、魔物さえも彼女に懐いてしまう。本人はただ掃除をしているだけなのに、周囲からは「伝説の浄化の聖女様」と崇められていく。
一方、カイはアリシアの完璧な仕事ぶり(浄化スキル)に心酔。「君の磨き上げた床は宝石よりも美しい。君こそ私の女神だ」と、猛烈なアタックを開始。アリシアは「お掃除道具をたくさんくれるなんて、なんて良いご主人様!」と、これまた盛大に勘違い。
これは、お掃除大好き侍女が、無自覚な浄化スキルで辺境をピカピカに改革し、綺麗好きなハイスペックヒーローに溺愛される、勘違いから始まる心温まる異世界ラブコメディ。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~
夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。
しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。
しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。
夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。
いきなり事件が発生してしまう。
結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。
しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。
(こうなったら、私がなんとかするしかないわ!)
腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。
それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる