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第36話 炎と肉のカーニバル! 王子の皮むきスキル
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「総員、配置につけ! 戦闘開始よ!」
私の号令と共に王宮の中庭に設けられた特設キッチンが動き出した。
四十五品・一千人分の料理。
これはもはや調理ではない。戦争だ。
「カイル殿下! ジャガイモの在庫が足りません! あと三百個、すぐに剥いてください!」
「ミリア嬢はタマネギです! 涙を流している暇はありませんよ!」
私は容赦なく王族に指示を飛ばす。
不敬? 知ったことか。
厨房では料理長が法律だ。
「くっ……! 見ていろ、この私の『神速のピーラー捌き』を!」
カイル殿下が袖をまくり上げ、猛然とジャガイモに向かった。
シュッシュッシュッ!
目にも止まらぬ速さだ。
かつて剣術の稽古をサボって厨房に忍び込み、つまみ食いの対価として下働きをさせられていた経験が、まさかここで役に立つとは。
「殿下、すごいですわ! ジャガイモが裸になっていきます!」
「ふははは! 見ろ、この美しい曲線を! 私は今、次期国王ではなく『ジャガイモ王』だ!」
「……悲しい才能ですね」
ミリア嬢も涙目でタマネギを刻みながら「このタマネギのみじん切りが……絶品ソースになるのね……」とブツブツ呟いている。
二人とも完全に食欲の奴隷と化していた。
◇
一方、ソース担当エリアでは、ビクトリア王女が優雅に鍋をかき混ぜていた。
「あら、火加減が強すぎましてよ! 赤ワインの風味が飛びますわ!」
彼女が作っているのは、メインディッシュ用の『トリュフ入り赤ワインソース』。美食の国ガリアの英才教育を受けた彼女の舌は正確無比だ。
「ここにバターを足して『乳化』させるのよ! ……ふふ、完璧な艶テリだわ」
味見をした王女がうっとりと頬を染める。
「悔しいけれど……レティシアのレシピとガリアの食材が合わされば最強ですわね」
◇
そして、メインステージ。
中庭の中央には、巨大な鉄の串に刺された『牛の丸焼き』が鎮座している。
脂の乗った最高級牛。その重量、数百キロ。
「よし、下味のすり込み完了だ!」
バルト料理長たちが全身オイルまみれになってサムズアップする。
「では、点火します! ジルベール様!」
私が呼ぶと、腕組みをして待機していた旦那様がスッと片手をかざした。
「……任せろ。『紅蓮の獄炎』」
ボォォォォォッ!!
彼の手のひらから、凄まじい熱量の炎が噴き出した。だが、それは暴走することなく、牛の表面を均一に包み込む。
普通なら表面だけ焦げてしまうが、彼の超精密な魔力操作が遠赤外線のように肉の芯まで熱を伝えていく。
「ああっ、いい音……!」
ジリジリ、パチパチッ。
肉の表面が焼ける音。
溶け出した脂が炭火に落ち、ジュウッと煙を上げて燻される香り。
「香り付けにローズマリーとタイムの束を投入!」
私がハーブの束を炎に投げ込むと、爽やかな香りが肉の獣臭さを消し、食欲をそそるアロマへと変えていく。
「……熱くないか、レティシア」
炎を操りながらジルベール様が私を気遣う。
「平気です! むしろこのお肉の焼ける匂いが、私のアドレナリンです!」
「君は本当に……ブレないな」
ジルベール様は苦笑しつつ、魔力を強めた。
牛の表面が、見る見るうちに美しい飴色に変わっていく。
「よし、焼き上がりまであと十分! カイル殿下、付け合わせのマッシュポテトは!?」
「できている! バターと生クリームを限界まで練り込んだ、悪魔のポテトだ!」
「ビクトリア王女、ソースは!?」
「とっくに完成していますわ! 早く肉にかけさせなさいよ!」
全員のボルテージが最高潮に達する。
かつて敵対していた者たちが、一つの巨大な肉を前に汗だくになって笑い合っている。
「……なんか、いいですね」
私は額の汗を拭いながら呟いた。
「ああ。……悪くない光景だ」
ジルベール様も、炎越しに優しい目を向けた。
そして、ついにその時が来た。
「焼き上がりぃぃぃ!!」
私の宣言と共に中庭に歓声が上がった。
こんがりと焼けた牛の丸焼き。
ナイフを入れると、中からは美しいロゼ色の断面が現れ、肉汁が滝のように溢れ出した。
さあ、準備は整った。
あとは会場で待つ腹ペコのVIPたちに、この「爆弾」を投下するだけだ!
私の号令と共に王宮の中庭に設けられた特設キッチンが動き出した。
四十五品・一千人分の料理。
これはもはや調理ではない。戦争だ。
「カイル殿下! ジャガイモの在庫が足りません! あと三百個、すぐに剥いてください!」
「ミリア嬢はタマネギです! 涙を流している暇はありませんよ!」
私は容赦なく王族に指示を飛ばす。
不敬? 知ったことか。
厨房では料理長が法律だ。
「くっ……! 見ていろ、この私の『神速のピーラー捌き』を!」
カイル殿下が袖をまくり上げ、猛然とジャガイモに向かった。
シュッシュッシュッ!
目にも止まらぬ速さだ。
かつて剣術の稽古をサボって厨房に忍び込み、つまみ食いの対価として下働きをさせられていた経験が、まさかここで役に立つとは。
「殿下、すごいですわ! ジャガイモが裸になっていきます!」
「ふははは! 見ろ、この美しい曲線を! 私は今、次期国王ではなく『ジャガイモ王』だ!」
「……悲しい才能ですね」
ミリア嬢も涙目でタマネギを刻みながら「このタマネギのみじん切りが……絶品ソースになるのね……」とブツブツ呟いている。
二人とも完全に食欲の奴隷と化していた。
◇
一方、ソース担当エリアでは、ビクトリア王女が優雅に鍋をかき混ぜていた。
「あら、火加減が強すぎましてよ! 赤ワインの風味が飛びますわ!」
彼女が作っているのは、メインディッシュ用の『トリュフ入り赤ワインソース』。美食の国ガリアの英才教育を受けた彼女の舌は正確無比だ。
「ここにバターを足して『乳化』させるのよ! ……ふふ、完璧な艶テリだわ」
味見をした王女がうっとりと頬を染める。
「悔しいけれど……レティシアのレシピとガリアの食材が合わされば最強ですわね」
◇
そして、メインステージ。
中庭の中央には、巨大な鉄の串に刺された『牛の丸焼き』が鎮座している。
脂の乗った最高級牛。その重量、数百キロ。
「よし、下味のすり込み完了だ!」
バルト料理長たちが全身オイルまみれになってサムズアップする。
「では、点火します! ジルベール様!」
私が呼ぶと、腕組みをして待機していた旦那様がスッと片手をかざした。
「……任せろ。『紅蓮の獄炎』」
ボォォォォォッ!!
彼の手のひらから、凄まじい熱量の炎が噴き出した。だが、それは暴走することなく、牛の表面を均一に包み込む。
普通なら表面だけ焦げてしまうが、彼の超精密な魔力操作が遠赤外線のように肉の芯まで熱を伝えていく。
「ああっ、いい音……!」
ジリジリ、パチパチッ。
肉の表面が焼ける音。
溶け出した脂が炭火に落ち、ジュウッと煙を上げて燻される香り。
「香り付けにローズマリーとタイムの束を投入!」
私がハーブの束を炎に投げ込むと、爽やかな香りが肉の獣臭さを消し、食欲をそそるアロマへと変えていく。
「……熱くないか、レティシア」
炎を操りながらジルベール様が私を気遣う。
「平気です! むしろこのお肉の焼ける匂いが、私のアドレナリンです!」
「君は本当に……ブレないな」
ジルベール様は苦笑しつつ、魔力を強めた。
牛の表面が、見る見るうちに美しい飴色に変わっていく。
「よし、焼き上がりまであと十分! カイル殿下、付け合わせのマッシュポテトは!?」
「できている! バターと生クリームを限界まで練り込んだ、悪魔のポテトだ!」
「ビクトリア王女、ソースは!?」
「とっくに完成していますわ! 早く肉にかけさせなさいよ!」
全員のボルテージが最高潮に達する。
かつて敵対していた者たちが、一つの巨大な肉を前に汗だくになって笑い合っている。
「……なんか、いいですね」
私は額の汗を拭いながら呟いた。
「ああ。……悪くない光景だ」
ジルベール様も、炎越しに優しい目を向けた。
そして、ついにその時が来た。
「焼き上がりぃぃぃ!!」
私の宣言と共に中庭に歓声が上がった。
こんがりと焼けた牛の丸焼き。
ナイフを入れると、中からは美しいロゼ色の断面が現れ、肉汁が滝のように溢れ出した。
さあ、準備は整った。
あとは会場で待つ腹ペコのVIPたちに、この「爆弾」を投下するだけだ!
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