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第37話 晩餐会パニック! 各国の王を唸らせろ 王宮の大広間
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シャンデリアが煌めく中、世界各国の王や大使たちが退屈そうにグラスを傾けていた。
「今年の料理も、どうせ代わり映えしないのだろう?」
「冷めたテリーヌに、パサパサの魚……。胃薬を持ってくるべきだったか」
囁かれる辛辣な本音。
美食の国・ガリア王国の国王に至っては、「早く帰ってワインが飲みたい」とあからさまに不機嫌だ。だが、その空気は一瞬で塗り替えられた。
「――只今より、メインディッシュの入場です!」
私の合図と共に大広間の巨大な扉が重々しい音を立てて開かれた。
ゴゴゴゴゴ……。
地響きのような音と共に現れたのは、巨大な魔導ワゴン。その上に鎮座しているのは――炎を纏った『牛の丸焼き』だ。
「な、なんだあれは!?」
「牛が……燃えながら進んでくるぞ!?」
各国の要人たちが椅子から腰を浮かす。
ジルベール様の魔法で保温された肉塊は、揺らめく陽炎を纏い、まるで神話の魔獣のような威圧感を放っている。
そして何より、その香りが凶悪だった。
焦げた脂の甘い匂い。ローズマリーの清涼感。
ニンニクと赤ワインソースの芳醇なアロマ。
「うっ……! な、なんだこの香りは……!」
「唾液が……止まらん……!」
先ほどまで澄ましていた貴族たちがハンカチで口元を押さえ始めた。
「さあ、切り分けますよ!」
魔導ワゴンが中央で止まると、バルト料理長率いる精鋭部隊が鮮やかな手つきで巨大肉にナイフを入れた。
ザクッ、スッ。
刃が入るたびに、閉じ込められていた肉汁が「ドワッ!」と噴き出し、鉄板の上でジューッと音を立てる。
「み、見ろ! 肉汁の滝だ!」
「中が……美しいバラ色だぞ!?」
切り分けられた肉は、瞬く間に皿に盛られ、カイル殿下が死に物狂いで作った『特製マッシュポテト』とビクトリア王女渾身の『トリュフソース』がかけられた。
そして給仕たちによって各テーブルへと運ばれる。
「どうぞ。熱いうちに召し上がれ」
ガリア国王の目の前に皿が置かれた。
分厚いローストビーフ。
彼は震える手でナイフを入れた。
「……柔らかい」
力を入れていないのに肉がバターのように切れる。
そう呟いて一切れを口に運ぶ。
「…………ッ!!」
国王の動きが止まった。
表面の香ばしさ。中のしっとりとしたレアな食感。噛み締めた瞬間に溢れ出す、濃厚な牛の旨味。そこに、娘であるビクトリア王女が作ったソースが絡み合う。
赤ワインの酸味とトリュフの妖艶な香りが脂の重さを打ち消し、芸術的なハーモニーを奏でている。
「こ、これは……我が国の牛か?」
ガリアの国王が呟いた。
「知っている味のはずなのに……まるで別物だ! 焼くだけで、肉がここまで化けるというのか!?」
「付け合わせのポテトも凄いですぞ陛下!」
隣の大使が叫ぶ。
「クリームのように滑らかで……肉汁と絡めると、これだけで酒が飲めます!」
カチャ、カチャ、カチャ!
静粛だった会場に猛烈な勢いでナイフとフォークが動く音が響き渡った。
もはや外交の話など誰もしていない。
「美味い! なんだこの肉は!」
「おかわりだ! 私の国と貿易してくれ!」
「このシェフを呼べ! 国宝に認定する!」
会場は完全にパニック状態。
大皿に盛られた追加の肉がピラニアの群れに襲われたかのように消えていく。
その様子を厨房の入り口から覗いていた私たちは、ハイタッチを交わした。
「やったわね! 完食よ!」
「ふん、当然ですわ。わたくしのソースのおかげですもの!」
「いや、私のマッシュポテトが勝因だ!」
王女と殿下が喧嘩しているが、その顔は晴れやかだ。
「……レティシア」
ジルベール様が騒然とする会場を見つめながら私に囁いた。
「見ろ。あの堅物だったガリア国王が皿に残ったソースをパンで拭って食べている」
「ふふ、最高の賛辞ですね」
「君の料理は、国境すらも胃袋で溶かしてしまうらしい」
彼は私の腰を引き寄せ、誇らしげに微笑んだ。
「自慢の妻だ。……だが、少し嫉妬するな。君の味を、世界中の男共に知られてしまった」
「あら、一番美味しいところは、調理中に旦那様にあげたじゃないですか」
「……足りん。帰ったら、私だけのフルコースを要求する」
晩餐会は大成功。
各国の王たちは満腹の幸福感に包まれながら、口々に「ヴァルシュタイン公爵領との友好」を約束していった。
料理外交、完全勝利である。
だが、物語はここで終わらない。
この宴の成功が、思わぬ「ご褒美」を呼び寄せることになるのだ。
宴の後。
満足げに腹をさする国王陛下が、私とジルベール様を呼び出した。
「公爵夫人よ。そちの功績を称え、褒美を取らせる。……王家の宝物庫にある『伝説の調理器具』をやるぞ」
「伝説の……調理器具?」
私の目が宝石を見た時よりも輝いたのは言うまでもない。
「今年の料理も、どうせ代わり映えしないのだろう?」
「冷めたテリーヌに、パサパサの魚……。胃薬を持ってくるべきだったか」
囁かれる辛辣な本音。
美食の国・ガリア王国の国王に至っては、「早く帰ってワインが飲みたい」とあからさまに不機嫌だ。だが、その空気は一瞬で塗り替えられた。
「――只今より、メインディッシュの入場です!」
私の合図と共に大広間の巨大な扉が重々しい音を立てて開かれた。
ゴゴゴゴゴ……。
地響きのような音と共に現れたのは、巨大な魔導ワゴン。その上に鎮座しているのは――炎を纏った『牛の丸焼き』だ。
「な、なんだあれは!?」
「牛が……燃えながら進んでくるぞ!?」
各国の要人たちが椅子から腰を浮かす。
ジルベール様の魔法で保温された肉塊は、揺らめく陽炎を纏い、まるで神話の魔獣のような威圧感を放っている。
そして何より、その香りが凶悪だった。
焦げた脂の甘い匂い。ローズマリーの清涼感。
ニンニクと赤ワインソースの芳醇なアロマ。
「うっ……! な、なんだこの香りは……!」
「唾液が……止まらん……!」
先ほどまで澄ましていた貴族たちがハンカチで口元を押さえ始めた。
「さあ、切り分けますよ!」
魔導ワゴンが中央で止まると、バルト料理長率いる精鋭部隊が鮮やかな手つきで巨大肉にナイフを入れた。
ザクッ、スッ。
刃が入るたびに、閉じ込められていた肉汁が「ドワッ!」と噴き出し、鉄板の上でジューッと音を立てる。
「み、見ろ! 肉汁の滝だ!」
「中が……美しいバラ色だぞ!?」
切り分けられた肉は、瞬く間に皿に盛られ、カイル殿下が死に物狂いで作った『特製マッシュポテト』とビクトリア王女渾身の『トリュフソース』がかけられた。
そして給仕たちによって各テーブルへと運ばれる。
「どうぞ。熱いうちに召し上がれ」
ガリア国王の目の前に皿が置かれた。
分厚いローストビーフ。
彼は震える手でナイフを入れた。
「……柔らかい」
力を入れていないのに肉がバターのように切れる。
そう呟いて一切れを口に運ぶ。
「…………ッ!!」
国王の動きが止まった。
表面の香ばしさ。中のしっとりとしたレアな食感。噛み締めた瞬間に溢れ出す、濃厚な牛の旨味。そこに、娘であるビクトリア王女が作ったソースが絡み合う。
赤ワインの酸味とトリュフの妖艶な香りが脂の重さを打ち消し、芸術的なハーモニーを奏でている。
「こ、これは……我が国の牛か?」
ガリアの国王が呟いた。
「知っている味のはずなのに……まるで別物だ! 焼くだけで、肉がここまで化けるというのか!?」
「付け合わせのポテトも凄いですぞ陛下!」
隣の大使が叫ぶ。
「クリームのように滑らかで……肉汁と絡めると、これだけで酒が飲めます!」
カチャ、カチャ、カチャ!
静粛だった会場に猛烈な勢いでナイフとフォークが動く音が響き渡った。
もはや外交の話など誰もしていない。
「美味い! なんだこの肉は!」
「おかわりだ! 私の国と貿易してくれ!」
「このシェフを呼べ! 国宝に認定する!」
会場は完全にパニック状態。
大皿に盛られた追加の肉がピラニアの群れに襲われたかのように消えていく。
その様子を厨房の入り口から覗いていた私たちは、ハイタッチを交わした。
「やったわね! 完食よ!」
「ふん、当然ですわ。わたくしのソースのおかげですもの!」
「いや、私のマッシュポテトが勝因だ!」
王女と殿下が喧嘩しているが、その顔は晴れやかだ。
「……レティシア」
ジルベール様が騒然とする会場を見つめながら私に囁いた。
「見ろ。あの堅物だったガリア国王が皿に残ったソースをパンで拭って食べている」
「ふふ、最高の賛辞ですね」
「君の料理は、国境すらも胃袋で溶かしてしまうらしい」
彼は私の腰を引き寄せ、誇らしげに微笑んだ。
「自慢の妻だ。……だが、少し嫉妬するな。君の味を、世界中の男共に知られてしまった」
「あら、一番美味しいところは、調理中に旦那様にあげたじゃないですか」
「……足りん。帰ったら、私だけのフルコースを要求する」
晩餐会は大成功。
各国の王たちは満腹の幸福感に包まれながら、口々に「ヴァルシュタイン公爵領との友好」を約束していった。
料理外交、完全勝利である。
だが、物語はここで終わらない。
この宴の成功が、思わぬ「ご褒美」を呼び寄せることになるのだ。
宴の後。
満足げに腹をさする国王陛下が、私とジルベール様を呼び出した。
「公爵夫人よ。そちの功績を称え、褒美を取らせる。……王家の宝物庫にある『伝説の調理器具』をやるぞ」
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