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第3章 おじさん、配信サイトにデビューさせられる!?
第25話 ざわめくコメント欄
キノコうさぎとの奇跡的な出会いから数時間後。
俺の家の縁側は、すっかり臨時の動画編集スタジオと化していた。
「よし、よし……いい感じですよ、ご主人! この、キノコうさぎを撫でる時の、デレデレの笑顔! 最高に『ギャップ萌え』です!」
リサは、ノートパソコンの画面を食い入るように見つめながら、興奮気味にキーボードを叩いている。
俺は、そんな彼女の隣で、居心地の悪さに身をよじっていた。
画面に映っているのは、自分でも見たことのないほど、気の抜けた、だらしない顔で、ふわふわの生き物を愛でる中年男性の姿。
これを、全世界に公開されるというのか。羞恥心で、今すぐにでもダンジョンの奥に引きこもりたい気分だ。
「いいか、リサ。本当に、俺の顔はなるべく映さないようにしてくれよ。主役は、あくまであのキノコうさぎだからな」
「分かってますって! でも、視聴者は、ご主人がいるからこそ、この世界観に没入できるんですよ。ほら、このテロップとかどうです?」
リサが指さす画面には、『【衝撃】強面おじさんも、ふわもふモンスターには勝てなかったようです』という、悪意に満ちたテロップが、デカデカと表示されていた。
てか、強面じゃないわ!
「お前な……!」
「まあまあ。これもキャラ付けの一環ですから!」
俺の抗議など、柳に風と受け流し、リサは慣れた手つきで、撮影した映像にBGMをつけ、効果音を入れ、テロップを踊らせていく。
その姿は、まさに現代の魔法使いだ。
そして作業開始から約二時間後。
「できました! 記念すべき第一回『ダンジョン民宿だより』、完成です!」
リサは満足げに完成した動画を俺に見せた。
約10分の動画は、我ながら驚くほど、見応えのあるものに仕上がっていた。
前半は、俺がガチガチに緊張して放送事故を起こしかけている、面白おかしいNGシーン集。
後半は、キノコうさぎとの出会いから、俺が自然な笑顔で彼女を撫でるまでの、心温まるドキュメンタリータッチの映像。
リサの巧みな編集技術によって、単なるホームビデオが、感動的な短編映画のように生まれ変わっていた。
動画の最後は、俺の膝の上で、キノコうさぎが気持ちよさそうに眠ってしまったところで、静かにフェードアウトしていく。
そして、黒い画面に、アキラさんがデザインしてくれた【ダンジョン民宿 ゆうすけ荘】のロゴが浮かび上がるという、完璧なエンディングだった。
「どうです? ちょっと感動的ですらあるでしょ?」
「……まあ、悔しいが、よくできてる」
俺が素直に認めると、リサは「でしょー!」と満面の笑みを見せた。
「じゃあ、早速ピクニコ動画にアップロードしますね! チャンネル名は『ダンジョン民宿だより』で、っと……よし、公開!」
リサがエンターキーを押した瞬間、俺たちのささやかな日常が、再びデジタルの奔流の中へと放たれた。
「さて、どうなることやら……」
俺は、期待半分、不安半分で、その後の反応を見守ることにした。
そして、数時間が経過した頃。
リサが、スマホの画面を見ながら、奇妙な声を上げた。
「うわ……ご主人、ちょっとこれ、見てくださいよ」
リサから手渡されたスマホの画面。そこに表示されていたのは、俺たちが投稿した動画のページだった。その視聴回数は、俺の予想を遥かに超える勢いで伸びており、コメント欄には、びっしりと文字が並んでいた。
『なにこのおじさん、ガチガチで草』
『でもキノコうさぎ撫でてる時の笑顔、優しそうで好きw』
『癒やしの塊みたいな動画だな……』
『このふわふわは、一体何者!? 新種のモンスターか!?』
『ゴブリンが箒落として逃げるとこ、何回見ても笑う』
ほとんどは、好意的なコメントだった。
俺のぎこちなさも、結果的には「味」として受け入れられているらしい。少しだけ胸を撫で下ろす。
だが、その中に、一つだけ、俺たちの目を釘付けにするコメントがあった。
それは他のコメントとは明らかに違う、研究者のような冷静で分析的な口調で書かれていた。
『動画の7分12秒あたりに映り込んでいる、この背中にキノコが生えた生物……。これは、極めて興味深い。もしや、古文書に記されている「共生茸」の一種ではないだろうか。この生物、もしかすると、ダンジョンの生態系において、非常に重要な役割を担っている可能性がある。投稿主さん、もしよろしければ、もう少し詳しい情報を……』
「共生茸……?」
俺は、その聞き慣れない単語を、思わず声に出して読んでいた。
ただ可愛いだけの、ふわふわの生き物。そう思っていたキノコうさぎに、何やらとんでもない秘密が隠されている可能性が、突如として浮上したのだ。
リサがゴクリと喉を鳴らす。
「ご主人……。私たち、また何か、とんでもないものを、掘り当てちゃったのかもしれませんよ……?」
俺の静かでのどかな隠居生活は、どうやら、まだしばらく、俺の手の届かない場所で、勝手にどんどん面白くなっていく運命らしい。
ただの動画投稿。そのはずが、今度はダンジョンの謎そのものに迫る、新たな物語の扉を、知らず知らずのうちに開けてしまったのだから。
俺の家の縁側は、すっかり臨時の動画編集スタジオと化していた。
「よし、よし……いい感じですよ、ご主人! この、キノコうさぎを撫でる時の、デレデレの笑顔! 最高に『ギャップ萌え』です!」
リサは、ノートパソコンの画面を食い入るように見つめながら、興奮気味にキーボードを叩いている。
俺は、そんな彼女の隣で、居心地の悪さに身をよじっていた。
画面に映っているのは、自分でも見たことのないほど、気の抜けた、だらしない顔で、ふわふわの生き物を愛でる中年男性の姿。
これを、全世界に公開されるというのか。羞恥心で、今すぐにでもダンジョンの奥に引きこもりたい気分だ。
「いいか、リサ。本当に、俺の顔はなるべく映さないようにしてくれよ。主役は、あくまであのキノコうさぎだからな」
「分かってますって! でも、視聴者は、ご主人がいるからこそ、この世界観に没入できるんですよ。ほら、このテロップとかどうです?」
リサが指さす画面には、『【衝撃】強面おじさんも、ふわもふモンスターには勝てなかったようです』という、悪意に満ちたテロップが、デカデカと表示されていた。
てか、強面じゃないわ!
「お前な……!」
「まあまあ。これもキャラ付けの一環ですから!」
俺の抗議など、柳に風と受け流し、リサは慣れた手つきで、撮影した映像にBGMをつけ、効果音を入れ、テロップを踊らせていく。
その姿は、まさに現代の魔法使いだ。
そして作業開始から約二時間後。
「できました! 記念すべき第一回『ダンジョン民宿だより』、完成です!」
リサは満足げに完成した動画を俺に見せた。
約10分の動画は、我ながら驚くほど、見応えのあるものに仕上がっていた。
前半は、俺がガチガチに緊張して放送事故を起こしかけている、面白おかしいNGシーン集。
後半は、キノコうさぎとの出会いから、俺が自然な笑顔で彼女を撫でるまでの、心温まるドキュメンタリータッチの映像。
リサの巧みな編集技術によって、単なるホームビデオが、感動的な短編映画のように生まれ変わっていた。
動画の最後は、俺の膝の上で、キノコうさぎが気持ちよさそうに眠ってしまったところで、静かにフェードアウトしていく。
そして、黒い画面に、アキラさんがデザインしてくれた【ダンジョン民宿 ゆうすけ荘】のロゴが浮かび上がるという、完璧なエンディングだった。
「どうです? ちょっと感動的ですらあるでしょ?」
「……まあ、悔しいが、よくできてる」
俺が素直に認めると、リサは「でしょー!」と満面の笑みを見せた。
「じゃあ、早速ピクニコ動画にアップロードしますね! チャンネル名は『ダンジョン民宿だより』で、っと……よし、公開!」
リサがエンターキーを押した瞬間、俺たちのささやかな日常が、再びデジタルの奔流の中へと放たれた。
「さて、どうなることやら……」
俺は、期待半分、不安半分で、その後の反応を見守ることにした。
そして、数時間が経過した頃。
リサが、スマホの画面を見ながら、奇妙な声を上げた。
「うわ……ご主人、ちょっとこれ、見てくださいよ」
リサから手渡されたスマホの画面。そこに表示されていたのは、俺たちが投稿した動画のページだった。その視聴回数は、俺の予想を遥かに超える勢いで伸びており、コメント欄には、びっしりと文字が並んでいた。
『なにこのおじさん、ガチガチで草』
『でもキノコうさぎ撫でてる時の笑顔、優しそうで好きw』
『癒やしの塊みたいな動画だな……』
『このふわふわは、一体何者!? 新種のモンスターか!?』
『ゴブリンが箒落として逃げるとこ、何回見ても笑う』
ほとんどは、好意的なコメントだった。
俺のぎこちなさも、結果的には「味」として受け入れられているらしい。少しだけ胸を撫で下ろす。
だが、その中に、一つだけ、俺たちの目を釘付けにするコメントがあった。
それは他のコメントとは明らかに違う、研究者のような冷静で分析的な口調で書かれていた。
『動画の7分12秒あたりに映り込んでいる、この背中にキノコが生えた生物……。これは、極めて興味深い。もしや、古文書に記されている「共生茸」の一種ではないだろうか。この生物、もしかすると、ダンジョンの生態系において、非常に重要な役割を担っている可能性がある。投稿主さん、もしよろしければ、もう少し詳しい情報を……』
「共生茸……?」
俺は、その聞き慣れない単語を、思わず声に出して読んでいた。
ただ可愛いだけの、ふわふわの生き物。そう思っていたキノコうさぎに、何やらとんでもない秘密が隠されている可能性が、突如として浮上したのだ。
リサがゴクリと喉を鳴らす。
「ご主人……。私たち、また何か、とんでもないものを、掘り当てちゃったのかもしれませんよ……?」
俺の静かでのどかな隠居生活は、どうやら、まだしばらく、俺の手の届かない場所で、勝手にどんどん面白くなっていく運命らしい。
ただの動画投稿。そのはずが、今度はダンジョンの謎そのものに迫る、新たな物語の扉を、知らず知らずのうちに開けてしまったのだから。
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