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第5章 わんぱくキッズと、夏休みの自由研究
第42話 これが結論
泉での大パニックの後、俺とリサは、ずぶ濡れでガタガタ震える二人の少年と、魂が半分抜け出てしまったような顔の母親たちを連れて、大急ぎで民宿へと帰還した。
「さあ、二人とも、風邪を引く前にお風呂に入るんだ!」
俺は急いでお風呂を沸かし、少年たちを湯船へと放り込む。リサは、キッチンで温かいココアを淹れてくれていた。その手際の良さは、もうすっかり、この民宿の頼れる副支配人だ。
風呂から上がった息子たちの無事な姿を見て、母親二人は、ようやく安堵の涙を流した。
「よかった……本当によかった……!」
心配性の恵美さんは、勇敢に友達を助けた息子の翔太くんを、言葉にならないといった様子で、ただただ強く抱きしめている。
おおらかな陽子さんも、さすがに肝が冷えたのだろう。
「もう、本当に心配したんだから!」
大輝くんの頭をわしゃわしゃと撫でていた。 幸い、二人に大きな怪我はなかった。俺が、軽い擦り傷に救急絆創膏を貼ってやると、少年たちの顔つきが、ここに来た時よりも、ずっと逞しく、そして大人びて見えたことに気づく。
その夜。
温かいココアと、俺が夜食に握ったおにぎりを囲みながら、ささやかな反省会が開かれた。
「翔太、本当にありがとう。俺、翔太がいなかったら、マジで、ヌシに食べられてた……」
大輝くんが神妙な顔つきで親友に深々と頭を下げた。
翔太くんは、少し照れくさそうだが、誇らしげに胸を張る。
「大輝くんだって、僕を守ってくれたじゃないか。ヌシの前に立った時、すごくカッコよかったよ。本物の勇者みたいだった」
お互いを素直に認め合い称え合う二人。
その姿に母親たちも、俺もリサも、ただただ目を細めるばかりだった。
翔太くんはストーブの前で乾かしていた、少しよれてしまった研究ノートを広げると、今日の出来事を熱心に書き込み始めた。
『ヌシは、敵意を持って襲ってきたわけではないのかもしれない。ダンジョンの平和を乱されたことに驚き、威嚇行動に出ただけではないか』
『ゴブリンやスライムの集団行動は、外部の脅威に対する、ダンジョン全体の防衛本能の表れか?』
彼の考察は、身をもって体験したことで、さらに深みを増していた。
その隣で大輝くんも、スケッチブックにクレヨンを走らせる。
「俺が見たヌシ、描いてやるよ! 目がギョロっとしてて、口がガバーって開いててな!」
小さな博士と小さな画家。
二人の共同作業によって最高の自由研究が少しずつ形になっていく。
翌朝。
二人の少年の顔には、もう昨日のような幼さはなかった。一つの大きな冒険を乗り越えた、自信と誇りに満ち溢れていたのだ。
チェックアウトの時。
大輝くんは最高の笑顔で俺に言った。
「おじさん、いっぱい迷惑かけてごめん! でも、すっげー楽しかった! 今までで、一番の夏休みになった!」
翔太くんは、完成したばかりの自由研究ノートを誇らしげに俺に見せてくれた。その最後のページには、こう締めくくられていた。
『このダンジョンでは、人間とモンスターが、本当の友達になれる可能性がある。僕たちの冒険が、その最初の証明だ』
母親たちも、
「本当に、お世話になりました。ハラハラし通しでしたけど、子供たちの、素晴らしい成長を見ることができました」
と、心から感謝してくれた。
一家が名残惜しそうに車に乗り込もうとした、その時だった。
ダンジョンの入り口の方から、ゴブ吉が慌てた様子で走ってくるのが見えた。
その両手には、何かキラキラと光るものが、大切そうに抱えられている。
それは泉のヌシの頭に乗っていた、あの王冠のような岩のかけらだった。ヌシが二人の勇気を称えて、贈ってくれたのかもしれない。
ゴブ吉は、そのかけらを大輝くんと翔太くんの手に一つずつ、そっと握らせた。
「うわー! ヌシからのお土産だ!」
「やったー! 僕たちの、勇者の証だ!」
少年たちは、最高の宝物を手に入れて大喜びだ。わんぱくなお客さんたちを乗せたミニバンが遠ざかっていく。
嵐が去った後のような静けさが戻った民宿で、俺とリサは一抹の寂しさと、大きな満足感に包まれていた。
「いやー、嵐のような夏休みでしたねぇ」
リサが額の汗を拭いながら笑う。
「ああ。だが、きっと、あいつらにとっては、最高の自由研究になったんじゃないか」
俺は縁側に置き忘れられていた、大輝くんの虫あみに目をやった。
その網の先が真夏の強い日差しを浴びて、一瞬だけ、キラリと誇らしげに輝いたように見えた。
「さあ、二人とも、風邪を引く前にお風呂に入るんだ!」
俺は急いでお風呂を沸かし、少年たちを湯船へと放り込む。リサは、キッチンで温かいココアを淹れてくれていた。その手際の良さは、もうすっかり、この民宿の頼れる副支配人だ。
風呂から上がった息子たちの無事な姿を見て、母親二人は、ようやく安堵の涙を流した。
「よかった……本当によかった……!」
心配性の恵美さんは、勇敢に友達を助けた息子の翔太くんを、言葉にならないといった様子で、ただただ強く抱きしめている。
おおらかな陽子さんも、さすがに肝が冷えたのだろう。
「もう、本当に心配したんだから!」
大輝くんの頭をわしゃわしゃと撫でていた。 幸い、二人に大きな怪我はなかった。俺が、軽い擦り傷に救急絆創膏を貼ってやると、少年たちの顔つきが、ここに来た時よりも、ずっと逞しく、そして大人びて見えたことに気づく。
その夜。
温かいココアと、俺が夜食に握ったおにぎりを囲みながら、ささやかな反省会が開かれた。
「翔太、本当にありがとう。俺、翔太がいなかったら、マジで、ヌシに食べられてた……」
大輝くんが神妙な顔つきで親友に深々と頭を下げた。
翔太くんは、少し照れくさそうだが、誇らしげに胸を張る。
「大輝くんだって、僕を守ってくれたじゃないか。ヌシの前に立った時、すごくカッコよかったよ。本物の勇者みたいだった」
お互いを素直に認め合い称え合う二人。
その姿に母親たちも、俺もリサも、ただただ目を細めるばかりだった。
翔太くんはストーブの前で乾かしていた、少しよれてしまった研究ノートを広げると、今日の出来事を熱心に書き込み始めた。
『ヌシは、敵意を持って襲ってきたわけではないのかもしれない。ダンジョンの平和を乱されたことに驚き、威嚇行動に出ただけではないか』
『ゴブリンやスライムの集団行動は、外部の脅威に対する、ダンジョン全体の防衛本能の表れか?』
彼の考察は、身をもって体験したことで、さらに深みを増していた。
その隣で大輝くんも、スケッチブックにクレヨンを走らせる。
「俺が見たヌシ、描いてやるよ! 目がギョロっとしてて、口がガバーって開いててな!」
小さな博士と小さな画家。
二人の共同作業によって最高の自由研究が少しずつ形になっていく。
翌朝。
二人の少年の顔には、もう昨日のような幼さはなかった。一つの大きな冒険を乗り越えた、自信と誇りに満ち溢れていたのだ。
チェックアウトの時。
大輝くんは最高の笑顔で俺に言った。
「おじさん、いっぱい迷惑かけてごめん! でも、すっげー楽しかった! 今までで、一番の夏休みになった!」
翔太くんは、完成したばかりの自由研究ノートを誇らしげに俺に見せてくれた。その最後のページには、こう締めくくられていた。
『このダンジョンでは、人間とモンスターが、本当の友達になれる可能性がある。僕たちの冒険が、その最初の証明だ』
母親たちも、
「本当に、お世話になりました。ハラハラし通しでしたけど、子供たちの、素晴らしい成長を見ることができました」
と、心から感謝してくれた。
一家が名残惜しそうに車に乗り込もうとした、その時だった。
ダンジョンの入り口の方から、ゴブ吉が慌てた様子で走ってくるのが見えた。
その両手には、何かキラキラと光るものが、大切そうに抱えられている。
それは泉のヌシの頭に乗っていた、あの王冠のような岩のかけらだった。ヌシが二人の勇気を称えて、贈ってくれたのかもしれない。
ゴブ吉は、そのかけらを大輝くんと翔太くんの手に一つずつ、そっと握らせた。
「うわー! ヌシからのお土産だ!」
「やったー! 僕たちの、勇者の証だ!」
少年たちは、最高の宝物を手に入れて大喜びだ。わんぱくなお客さんたちを乗せたミニバンが遠ざかっていく。
嵐が去った後のような静けさが戻った民宿で、俺とリサは一抹の寂しさと、大きな満足感に包まれていた。
「いやー、嵐のような夏休みでしたねぇ」
リサが額の汗を拭いながら笑う。
「ああ。だが、きっと、あいつらにとっては、最高の自由研究になったんじゃないか」
俺は縁側に置き忘れられていた、大輝くんの虫あみに目をやった。
その網の先が真夏の強い日差しを浴びて、一瞬だけ、キラリと誇らしげに輝いたように見えた。
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