47 / 51
第6章 老紳士とギャルと、時を超えた約束
第47話 町を挙げろ!初恋の人、大捜索!
ダンジョンから民宿に戻った俺たちは、囲炉裏の間に集まり、緊急作戦会議を開いていた。
議題はもちろん「佐々木小夜子さんを探せ!大作戦」である。
「手がかりは……50年以上前に、町の食堂で働いていたこと。苗字が佐々木で、下の名前が小夜子さん……。うーん、あまりにも情報が少ないですね」
リサがノートに書き出した情報を眺めながら腕を組んで唸る。
「本当に、無理を言ってすまないね……。見つからなくても、仕方がないと覚悟はできておるんじゃ」
篠田さんは、申し訳なさそうに、そう言って肩を落とす。
その時だった。
今まで黙って話を聞いていたアカリさんが、おもむろに口を開いた。
「……ねえ、あんたたち」
彼女は、俺とリサの顔をまっすぐに見つめた。
「じいじが、ずっと、この日のことを夢見てたの知ってんだ。だから……マジでお願い。じいじの初恋の人、見つけてやってよ」
その瞳は、気だるげなものではなく、真剣そのものだった。
俺は、この機会に、ずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「アカリちゃんは、どうして、そこまで篠田さんのために……? 失礼だけど、二人は本当の家族、ではないんだろう?」
すると、アカリさんは、少しだけ照れくさそうに視線を逸らしながら、ぽつりぽつりと話してくれた。
彼女は、篠田さんが若い頃に世話になった、恩人の孫娘なのだという。幼い頃に両親を亡くした彼女にとって、ずっと親代わりとなって面倒を見てくれたのが、篠田さんだったのだ。
「だから、じいじは、あたしにとって、本物のおじいちゃんみたいなもん。その、たった一人のじいじがさ、人生でやり残したこと、あるって言うなら……。孫として、叶えてやりたいって思うじゃん。普通」
パパ活だなんて、とんでもない勘違いをしていた自分たちが、心底恥ずかしくなった。
俺とリサは目に見えないくらいの速さでアイコンタクトを交わし、『全力で協力しよう!』という熱い誓いを立てた。
翌日。
俺たちの町を挙げた大捜索が始まった。
まず向かったのは、町で一番の情報が集まる場所――魚屋の市場だ。
俺たちが、魚屋の大将に事情を話すと、彼は鼻で笑った。
「ああん? 佐々木小夜子ぉ? 50年以上も前の話だろ? そんな昔のこと、知るかよ!」
最初は取り付く島もなかった。
だが、篠田さんが自ら深々と頭を下げ、「どうか、お願いします」と懇願し、アカリさんも、「お願い、おじさん! 力、貸してよ!」と普段の彼女からは想像もできないくらい、素直に頼み込んだ。
その姿にさすがの大将も心を動かされたらしい。
「……ったく、しょうがねえなあ!」
彼はガシガシと頭をかくと、市場の同業者たちに向かって野太い声を張り上げた。
「おーい、おめえら! ちょっと耳貸せ! 50年くれえ前に、この町にいた佐々木小夜子って女、知ってるやつはいねえかー!」
次に訪れた八百屋では、おばちゃんが目をキラキラさせて話を聞いてくれた。
「まあ! 50年越しの初恋! なんてロマンチックなの!」
彼女は井戸端会議ネットワークの総帥として、その情報網を駆使し、町中の主婦たちに聞き込みをしてくれると、力強く約束してくれた。
隣の鈴木さんも、家の押し入れから、卒業アルバムや昔の町内会の名簿といった、貴重な資料を引っ張り出してきて、一緒に名前を探してくれた。
そして、リサが「最終手段です!」と連絡を取ったのが役場の佐藤さんだった。
「個人情報の観点から、非常に難しい案件ですが……」
佐藤さんは、最初こそ公務員として慎重な姿勢だった。しかし、篠田さんの切実な物語と、
「これが成功すれば、うちの町が『ロマンスの聖地』として、ピクニコ動画でバズるかもしれませんよ!」
というリサの悪魔の囁きに、心が揺らいだらしい。
「……分かりました。職権濫用はできませんので、個人的に――あくまで個人的に探してみます」
小さな民宿から始まった捜索は、漁師ネットワーク、主婦ネットワーク、老人会ネットワーク、そしてついには行政までを巻き込んだかもしれない、町ぐるみの一大プロジェクトへと発展していった。
だが、捜索は困難を極めた。
「佐々木」という苗字は、この町にも決して少なくない。何より50年という歳月は、あまりにも長い。結婚して、苗字が変わっている可能性が非常に高かった。
様々な情報が寄せられるものの、なかなか決定的なものには、たどり着かない。
捜索開始から半日が過ぎた頃。
篠田さんの顔にも、少しずつ諦めの色が浮かび始めていた。
もう、無理なのかもしれない。
誰もが、そう思い始めた、その時だった。
俺のスマホが、けたたましく鳴った。
表示された名前は「役場 佐藤美咲」。
俺が緊張しながら電話に出ると、スピーカーの向こうから、今まで聞いたこともないくらい興奮した佐藤さんの声が聞こえてきた。
「た、田中さん! 見つかったかもしれません!」
彼女は息を切らしながら叫ぶように言った。
「一人だけ……一人だけ、該当しそうな方が、いらっしゃいました! 旧姓が、佐々木小夜子さん。ご結婚されて、今は、別のお名前になっていますが……間違いありません! 確かに、今もこの町にお住まいです!」
その言葉にその場にいた、俺とリサ、アカリさんも、そして篠田さんも、ただ息をのんだ。
50年という長すぎた時を超えて。
運命の歯車が、今、再び、ゆっくりと、動き出そうとしていた。
議題はもちろん「佐々木小夜子さんを探せ!大作戦」である。
「手がかりは……50年以上前に、町の食堂で働いていたこと。苗字が佐々木で、下の名前が小夜子さん……。うーん、あまりにも情報が少ないですね」
リサがノートに書き出した情報を眺めながら腕を組んで唸る。
「本当に、無理を言ってすまないね……。見つからなくても、仕方がないと覚悟はできておるんじゃ」
篠田さんは、申し訳なさそうに、そう言って肩を落とす。
その時だった。
今まで黙って話を聞いていたアカリさんが、おもむろに口を開いた。
「……ねえ、あんたたち」
彼女は、俺とリサの顔をまっすぐに見つめた。
「じいじが、ずっと、この日のことを夢見てたの知ってんだ。だから……マジでお願い。じいじの初恋の人、見つけてやってよ」
その瞳は、気だるげなものではなく、真剣そのものだった。
俺は、この機会に、ずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「アカリちゃんは、どうして、そこまで篠田さんのために……? 失礼だけど、二人は本当の家族、ではないんだろう?」
すると、アカリさんは、少しだけ照れくさそうに視線を逸らしながら、ぽつりぽつりと話してくれた。
彼女は、篠田さんが若い頃に世話になった、恩人の孫娘なのだという。幼い頃に両親を亡くした彼女にとって、ずっと親代わりとなって面倒を見てくれたのが、篠田さんだったのだ。
「だから、じいじは、あたしにとって、本物のおじいちゃんみたいなもん。その、たった一人のじいじがさ、人生でやり残したこと、あるって言うなら……。孫として、叶えてやりたいって思うじゃん。普通」
パパ活だなんて、とんでもない勘違いをしていた自分たちが、心底恥ずかしくなった。
俺とリサは目に見えないくらいの速さでアイコンタクトを交わし、『全力で協力しよう!』という熱い誓いを立てた。
翌日。
俺たちの町を挙げた大捜索が始まった。
まず向かったのは、町で一番の情報が集まる場所――魚屋の市場だ。
俺たちが、魚屋の大将に事情を話すと、彼は鼻で笑った。
「ああん? 佐々木小夜子ぉ? 50年以上も前の話だろ? そんな昔のこと、知るかよ!」
最初は取り付く島もなかった。
だが、篠田さんが自ら深々と頭を下げ、「どうか、お願いします」と懇願し、アカリさんも、「お願い、おじさん! 力、貸してよ!」と普段の彼女からは想像もできないくらい、素直に頼み込んだ。
その姿にさすがの大将も心を動かされたらしい。
「……ったく、しょうがねえなあ!」
彼はガシガシと頭をかくと、市場の同業者たちに向かって野太い声を張り上げた。
「おーい、おめえら! ちょっと耳貸せ! 50年くれえ前に、この町にいた佐々木小夜子って女、知ってるやつはいねえかー!」
次に訪れた八百屋では、おばちゃんが目をキラキラさせて話を聞いてくれた。
「まあ! 50年越しの初恋! なんてロマンチックなの!」
彼女は井戸端会議ネットワークの総帥として、その情報網を駆使し、町中の主婦たちに聞き込みをしてくれると、力強く約束してくれた。
隣の鈴木さんも、家の押し入れから、卒業アルバムや昔の町内会の名簿といった、貴重な資料を引っ張り出してきて、一緒に名前を探してくれた。
そして、リサが「最終手段です!」と連絡を取ったのが役場の佐藤さんだった。
「個人情報の観点から、非常に難しい案件ですが……」
佐藤さんは、最初こそ公務員として慎重な姿勢だった。しかし、篠田さんの切実な物語と、
「これが成功すれば、うちの町が『ロマンスの聖地』として、ピクニコ動画でバズるかもしれませんよ!」
というリサの悪魔の囁きに、心が揺らいだらしい。
「……分かりました。職権濫用はできませんので、個人的に――あくまで個人的に探してみます」
小さな民宿から始まった捜索は、漁師ネットワーク、主婦ネットワーク、老人会ネットワーク、そしてついには行政までを巻き込んだかもしれない、町ぐるみの一大プロジェクトへと発展していった。
だが、捜索は困難を極めた。
「佐々木」という苗字は、この町にも決して少なくない。何より50年という歳月は、あまりにも長い。結婚して、苗字が変わっている可能性が非常に高かった。
様々な情報が寄せられるものの、なかなか決定的なものには、たどり着かない。
捜索開始から半日が過ぎた頃。
篠田さんの顔にも、少しずつ諦めの色が浮かび始めていた。
もう、無理なのかもしれない。
誰もが、そう思い始めた、その時だった。
俺のスマホが、けたたましく鳴った。
表示された名前は「役場 佐藤美咲」。
俺が緊張しながら電話に出ると、スピーカーの向こうから、今まで聞いたこともないくらい興奮した佐藤さんの声が聞こえてきた。
「た、田中さん! 見つかったかもしれません!」
彼女は息を切らしながら叫ぶように言った。
「一人だけ……一人だけ、該当しそうな方が、いらっしゃいました! 旧姓が、佐々木小夜子さん。ご結婚されて、今は、別のお名前になっていますが……間違いありません! 確かに、今もこの町にお住まいです!」
その言葉にその場にいた、俺とリサ、アカリさんも、そして篠田さんも、ただ息をのんだ。
50年という長すぎた時を超えて。
運命の歯車が、今、再び、ゆっくりと、動き出そうとしていた。
あなたにおすすめの小説
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。