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第2章 擦れ違いは突然に。聖奈の気持ち、月華の想い
禁断の想い、届かぬまま置き去りに
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恭弥も、月詠も、練習に参加させてもらえなかった。空気が重たく、誰もが腫れ物に触るような態度で、二人を静かに見送った。結局、彼らはそのまま帰宅を促される形になった。
だが、恭弥のことがどうしても気にかかって、聖奈も部活を途中で抜けることにした。彼に寄り添うように、歩調を合わせながら歩く。
「姉さん、ごめん。迷惑かけて。」
ふと立ち止まり、恭弥が静かに頭を下げた。
「…でも、まさかあんたたちが喧嘩するなんて思ってなかったわ。」
聖奈の声には、驚きと少しの寂しさが混ざっていた。
しばし無言のまま並んで歩いたあと、聖奈はふいに立ち止まり、恭弥の顔を覗き込むように問いかける。
「恭弥、月華ちゃんとは……何もなかったのよね?」
その瞳は真剣だった。恭弥も、真っ直ぐに返す。
「ああ、何もない。朝、あの二人の様子が変だと思ってたし、月華が変に距離を詰めてきたから、おかしいとは思ってた。ただ……。」
恭弥は少し言葉を詰まらせ、顔を伏せた。
「……正直に言うと、胸を押し付けられたとき、ちょっと理性が揺らいだ。でも、それだけだ。誓って、それ以上のことはしてない。」
その告白に、聖奈の胸がチクリと痛んだ。でも、彼の目が真っ直ぐだったから——信じようと思った。
「でもね、昨日『月華ちゃんと付き合いたい』って言ったって……月詠が、そう言ってたわ。」
聖奈の言葉に、恭弥は小さくうなずいた。
「それは、ちょっと事情があってさ……確かに、月華が誰とも付き合ってなかったら、付き合いたいって思ったことはある。でも、月詠がいる限り、それはできないってわかってる。…あの時は、桃井さんにしつこくされて、思わず言っただけだよ。」
そして、静かに続ける。
「俺には、もう心に決めた人がいるんだ。そのことは、月華にも月詠にも伝えてある。」
その言葉に、聖奈の胸がざわつく。
「それって……私も知ってる人?」
心の奥が、妙な緊張で締めつけられる。
けれど、恭弥は首を横に振った。
「姉さんには言えない。……言いたくない。」
「え~っ!? そんなのズルいじゃない。ますます気になるでしょ!」
思わずしつこくなる聖奈。ドキドキする心を必死に隠しながら、笑顔で迫った。
——本当は、怖かった。この胸の高鳴りの意味も、答えを知ってしまうことも。
「言いなさい。言わないと……二度と口、きいてあげないから!」
冗談っぽく、でもちょっとだけ真剣に。拗ねたように頬をふくらませてみせた。
その仕草に、恭弥の心臓が跳ねた。鼓動が早くなる。けれど、彼の中でも答えを出すことに迷いがあった。
だけど、ついに口を開く。
「姉さんだよ。俺が好きなのは、聖奈姉さんだよ。」
その瞬間、時間が止まったようだった。
「月華なんかじゃない。俺は……目の前にいる、姉さんが好きなんだよ。ずっと。」
照れくささと恥ずかしさで顔を赤く染めながら、恭弥は気持ちをぶつけた。
「だから、月華のことで噂されるのも、喧嘩になるのも嫌だった。でも……俺が見てるのは、ずっと姉さんだけだから。これで、わかってもらえた?」
聖奈は一瞬、返事ができなかった。
嬉しかった。けれど、それをどう伝えたらいいのか分からなかった。
「……ありがとう。なんか、嬉しいけど……複雑な感じがする。」
それは本心だった。でも、伝え方が悪かった。
案の定、恭弥の表情が曇る。
「なんだよそれ……。俺、はっきり言ったのに。それって、振られたってことじゃねぇか。姉さんは、俺のことを弟としか見てないんだな。俺は、そんなの嫌なんだよ。」
「ち、違う! 違うの、恭弥! 私……振ったわけじゃない!」
慌てて弁解しようとした聖奈の声は、恭弥の背中に届かなかった。
彼はそのまま走り出し、夕暮れの街角に消えていった。
追いかけようと足が動きかけた。けれど、自分の不用意な言葉が、彼をどれだけ傷つけたのか思い知って、踏み出せなかった。
『どうしよう……。恭弥に、誤解されちゃった。あんなにちゃんと想いを伝えてくれたのに、私、踏みにじるようなことを……。』
夕焼けが街を包み込む中、聖奈は立ち尽くしていた。
そしてその夜。
恭弥も、月華も、どちらも家には帰らなかった。
だが、恭弥のことがどうしても気にかかって、聖奈も部活を途中で抜けることにした。彼に寄り添うように、歩調を合わせながら歩く。
「姉さん、ごめん。迷惑かけて。」
ふと立ち止まり、恭弥が静かに頭を下げた。
「…でも、まさかあんたたちが喧嘩するなんて思ってなかったわ。」
聖奈の声には、驚きと少しの寂しさが混ざっていた。
しばし無言のまま並んで歩いたあと、聖奈はふいに立ち止まり、恭弥の顔を覗き込むように問いかける。
「恭弥、月華ちゃんとは……何もなかったのよね?」
その瞳は真剣だった。恭弥も、真っ直ぐに返す。
「ああ、何もない。朝、あの二人の様子が変だと思ってたし、月華が変に距離を詰めてきたから、おかしいとは思ってた。ただ……。」
恭弥は少し言葉を詰まらせ、顔を伏せた。
「……正直に言うと、胸を押し付けられたとき、ちょっと理性が揺らいだ。でも、それだけだ。誓って、それ以上のことはしてない。」
その告白に、聖奈の胸がチクリと痛んだ。でも、彼の目が真っ直ぐだったから——信じようと思った。
「でもね、昨日『月華ちゃんと付き合いたい』って言ったって……月詠が、そう言ってたわ。」
聖奈の言葉に、恭弥は小さくうなずいた。
「それは、ちょっと事情があってさ……確かに、月華が誰とも付き合ってなかったら、付き合いたいって思ったことはある。でも、月詠がいる限り、それはできないってわかってる。…あの時は、桃井さんにしつこくされて、思わず言っただけだよ。」
そして、静かに続ける。
「俺には、もう心に決めた人がいるんだ。そのことは、月華にも月詠にも伝えてある。」
その言葉に、聖奈の胸がざわつく。
「それって……私も知ってる人?」
心の奥が、妙な緊張で締めつけられる。
けれど、恭弥は首を横に振った。
「姉さんには言えない。……言いたくない。」
「え~っ!? そんなのズルいじゃない。ますます気になるでしょ!」
思わずしつこくなる聖奈。ドキドキする心を必死に隠しながら、笑顔で迫った。
——本当は、怖かった。この胸の高鳴りの意味も、答えを知ってしまうことも。
「言いなさい。言わないと……二度と口、きいてあげないから!」
冗談っぽく、でもちょっとだけ真剣に。拗ねたように頬をふくらませてみせた。
その仕草に、恭弥の心臓が跳ねた。鼓動が早くなる。けれど、彼の中でも答えを出すことに迷いがあった。
だけど、ついに口を開く。
「姉さんだよ。俺が好きなのは、聖奈姉さんだよ。」
その瞬間、時間が止まったようだった。
「月華なんかじゃない。俺は……目の前にいる、姉さんが好きなんだよ。ずっと。」
照れくささと恥ずかしさで顔を赤く染めながら、恭弥は気持ちをぶつけた。
「だから、月華のことで噂されるのも、喧嘩になるのも嫌だった。でも……俺が見てるのは、ずっと姉さんだけだから。これで、わかってもらえた?」
聖奈は一瞬、返事ができなかった。
嬉しかった。けれど、それをどう伝えたらいいのか分からなかった。
「……ありがとう。なんか、嬉しいけど……複雑な感じがする。」
それは本心だった。でも、伝え方が悪かった。
案の定、恭弥の表情が曇る。
「なんだよそれ……。俺、はっきり言ったのに。それって、振られたってことじゃねぇか。姉さんは、俺のことを弟としか見てないんだな。俺は、そんなの嫌なんだよ。」
「ち、違う! 違うの、恭弥! 私……振ったわけじゃない!」
慌てて弁解しようとした聖奈の声は、恭弥の背中に届かなかった。
彼はそのまま走り出し、夕暮れの街角に消えていった。
追いかけようと足が動きかけた。けれど、自分の不用意な言葉が、彼をどれだけ傷つけたのか思い知って、踏み出せなかった。
『どうしよう……。恭弥に、誤解されちゃった。あんなにちゃんと想いを伝えてくれたのに、私、踏みにじるようなことを……。』
夕焼けが街を包み込む中、聖奈は立ち尽くしていた。
そしてその夜。
恭弥も、月華も、どちらも家には帰らなかった。
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