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第5章 学校生活再会しても恋は複雑なんです
動きの鈍さが示すもの
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練習が始まると、恭弥も月華も、長く剣を握っていなかったことを痛感した。
「……あれ?私、こんなにも動けなかったっけ?」
月華は宮沢と対戦中だったが、まともに攻撃を返すこともできず、防戦一方。しかも次の相手、初心者の紺野にまで、動きで後れを取り――
「えっ、なんで……私、月華ちゃんに勝っちゃった……?」
不意を突かれて一本取られた月華は、顔を赤らめたまま、己の体の鈍さと、紺野の上達に呆然としていた。
一方、恭弥も聖奈との手合わせで、何度も注意を受けていた。
「恭弥、もっと早く動いて。相手の動きを真似るんじゃなく、先を読んで」 「だめ、ここは一度下がって。攻撃が雑になってる」
聖奈の指導は的確だが、どこかに甘さが混ざっていた。兄弟のような、恋人のような――恭弥もまた、彼女に強く出ることを無意識に避けていた。
そこに凍夜の声が響く。
「綾野弟は、姫柊と組ませる。綾野姉は、高坂妹を見てやってくれ」
聖奈が眉をひそめた。
「私、できます。パートナーを変える必要なんて……」
「それでは綾野弟が壊れる」
凍夜は言い切り、恭弥の前に咲が立った。
「恭弥くん、よろしくね。私、まだリハビリ中だけど……軽くいこうか。でも、甘くはないから覚悟してね?」
咲の微笑みに、どこか含みがある。剣を交えた瞬間、恭弥はその意味を理解した。
(軽やかで……でも一撃が重い。それに……なんだ、この感覚……)
咲の剣筋が触れるたび、恭弥の体をじわりと熱が伝う。刃を交わすたび、まるで全身を包まれているような、心地よさと刺激が入り混じる。
「……姫柊先輩……これ……何か、変です」
恭弥は思わず声を漏らした。手のひらがじんじんと熱い。心臓の音が異様に早くなっていく。
咲が、にっこりと笑った。
「そう、それが私の剣よ。――“心を暴く”刀。ドキドキしちゃうでしょ?」
恭弥は気づく。咲の動き、気配、そのすべてが、自分の感情を煽っている。冷静でいようとすればするほど、意識は乱され、身体が追いつかない。
「く……やめてください。先輩……これ以上は……!」
「ダメよ、ここで止めたら。――ちゃんと最後まで、感じきって」
咲の声が耳の奥に染みる。最後の一撃が放たれ、恭弥の視界が白く染まった――。
恭弥がゆっくりと目を開けたとき、白い天井とほんのり甘い香りが鼻をくすぐった。
「……ここは?」
ぼんやりと視界が晴れていくと、すぐ傍に咲の顔があった。優しく笑みを浮かべたその表情が、どこか艶やかに見える。
「ここは保健室。さっき、倒れたんだよ。ちょっとだけ夢、見てたみたいだったけど……。」
咲はそっと恭弥の額に手を当てて、体温を確かめるように撫でた。
その柔らかな感触に、恭弥の心臓がまた跳ね上がる。
「……なんだろう、さっきの感覚、忘れられないんです。姫柊先輩の剣、気持ちよかったっていうか、優しいのに深く刺さるっていうか……。」
口にしてから、自分でも顔が熱くなるのを感じた。
けれど、咲はふわりと笑っただけだった。
「それ、嬉しい。私の剣には、ちょっと変な特性があるの。触れた相手の感情を引き出しやすくなるっていうか――ね、ドキドキしたでしょ。」
咲の指先が、ほんの少しだけ恭弥の胸に触れた。
その微かな刺激だけで、また心臓が跳ねる。
「……正直に言うと、先輩と向き合ってると、自分でもコントロールできなくなって……怖いくらいでした。」
「うん、それがいいの。心が揺れるのって、成長してる証拠なんだよ。」
咲は囁くようにそう言うと、少しだけ顔を近づけた。
「恭弥くん、もうちょっとだけ、その“ドキドキ”の続きをしてみる?」
そう言って、彼女は制服の袖をまくり、柔らかな手のひらを恭弥の手の上に重ねた。
そのまま、彼の指先をとって、彼女自身の心臓の辺りへ導いてくる。
「ほら、私も……ちょっとだけ、ドキドキしてるんだよ。」
鼓動が、確かに伝わってきた。早く、熱く、まるで彼女の中でも何かが抑えきれなくなっているみたいだった。
「先輩……これは、その、練習の続きですか?」
「うん。治療の一環ってことで。ね、私の“力”って、ちょっと強すぎるから――しっかり抜かないと、残っちゃうの。」
囁きながら、咲は自分の髪を耳にかけ、首筋をあらわにした。
その滑らかな肌と、艶のある視線に、恭弥は目を逸らそうとしても、逸らせなかった。
「……少しだけ、付き合ってくれる? ね、ナイショで。」
咲は手を握ったまま、保健室のカーテンを閉め、恭弥のすぐ隣に座り込んだ。
「……あれ?私、こんなにも動けなかったっけ?」
月華は宮沢と対戦中だったが、まともに攻撃を返すこともできず、防戦一方。しかも次の相手、初心者の紺野にまで、動きで後れを取り――
「えっ、なんで……私、月華ちゃんに勝っちゃった……?」
不意を突かれて一本取られた月華は、顔を赤らめたまま、己の体の鈍さと、紺野の上達に呆然としていた。
一方、恭弥も聖奈との手合わせで、何度も注意を受けていた。
「恭弥、もっと早く動いて。相手の動きを真似るんじゃなく、先を読んで」 「だめ、ここは一度下がって。攻撃が雑になってる」
聖奈の指導は的確だが、どこかに甘さが混ざっていた。兄弟のような、恋人のような――恭弥もまた、彼女に強く出ることを無意識に避けていた。
そこに凍夜の声が響く。
「綾野弟は、姫柊と組ませる。綾野姉は、高坂妹を見てやってくれ」
聖奈が眉をひそめた。
「私、できます。パートナーを変える必要なんて……」
「それでは綾野弟が壊れる」
凍夜は言い切り、恭弥の前に咲が立った。
「恭弥くん、よろしくね。私、まだリハビリ中だけど……軽くいこうか。でも、甘くはないから覚悟してね?」
咲の微笑みに、どこか含みがある。剣を交えた瞬間、恭弥はその意味を理解した。
(軽やかで……でも一撃が重い。それに……なんだ、この感覚……)
咲の剣筋が触れるたび、恭弥の体をじわりと熱が伝う。刃を交わすたび、まるで全身を包まれているような、心地よさと刺激が入り混じる。
「……姫柊先輩……これ……何か、変です」
恭弥は思わず声を漏らした。手のひらがじんじんと熱い。心臓の音が異様に早くなっていく。
咲が、にっこりと笑った。
「そう、それが私の剣よ。――“心を暴く”刀。ドキドキしちゃうでしょ?」
恭弥は気づく。咲の動き、気配、そのすべてが、自分の感情を煽っている。冷静でいようとすればするほど、意識は乱され、身体が追いつかない。
「く……やめてください。先輩……これ以上は……!」
「ダメよ、ここで止めたら。――ちゃんと最後まで、感じきって」
咲の声が耳の奥に染みる。最後の一撃が放たれ、恭弥の視界が白く染まった――。
恭弥がゆっくりと目を開けたとき、白い天井とほんのり甘い香りが鼻をくすぐった。
「……ここは?」
ぼんやりと視界が晴れていくと、すぐ傍に咲の顔があった。優しく笑みを浮かべたその表情が、どこか艶やかに見える。
「ここは保健室。さっき、倒れたんだよ。ちょっとだけ夢、見てたみたいだったけど……。」
咲はそっと恭弥の額に手を当てて、体温を確かめるように撫でた。
その柔らかな感触に、恭弥の心臓がまた跳ね上がる。
「……なんだろう、さっきの感覚、忘れられないんです。姫柊先輩の剣、気持ちよかったっていうか、優しいのに深く刺さるっていうか……。」
口にしてから、自分でも顔が熱くなるのを感じた。
けれど、咲はふわりと笑っただけだった。
「それ、嬉しい。私の剣には、ちょっと変な特性があるの。触れた相手の感情を引き出しやすくなるっていうか――ね、ドキドキしたでしょ。」
咲の指先が、ほんの少しだけ恭弥の胸に触れた。
その微かな刺激だけで、また心臓が跳ねる。
「……正直に言うと、先輩と向き合ってると、自分でもコントロールできなくなって……怖いくらいでした。」
「うん、それがいいの。心が揺れるのって、成長してる証拠なんだよ。」
咲は囁くようにそう言うと、少しだけ顔を近づけた。
「恭弥くん、もうちょっとだけ、その“ドキドキ”の続きをしてみる?」
そう言って、彼女は制服の袖をまくり、柔らかな手のひらを恭弥の手の上に重ねた。
そのまま、彼の指先をとって、彼女自身の心臓の辺りへ導いてくる。
「ほら、私も……ちょっとだけ、ドキドキしてるんだよ。」
鼓動が、確かに伝わってきた。早く、熱く、まるで彼女の中でも何かが抑えきれなくなっているみたいだった。
「先輩……これは、その、練習の続きですか?」
「うん。治療の一環ってことで。ね、私の“力”って、ちょっと強すぎるから――しっかり抜かないと、残っちゃうの。」
囁きながら、咲は自分の髪を耳にかけ、首筋をあらわにした。
その滑らかな肌と、艶のある視線に、恭弥は目を逸らそうとしても、逸らせなかった。
「……少しだけ、付き合ってくれる? ね、ナイショで。」
咲は手を握ったまま、保健室のカーテンを閉め、恭弥のすぐ隣に座り込んだ。
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