恋も剣も本気です!青春剣士たちのラブ・グラディエーション ~気が付くとは~れむ状態!?~

てんちょう

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第16章 つかの間の休息と激戦の女子トーナメント

あのときの夢を、今この手で――手作りのお守りに、ぎゅっと詰まった“翼”のぬくもり

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放課後の練習場。和やかな空気の中で恭弥が冗談まじりに声をかけた直後、吹田の目から涙がこぼれ落ちた。

それに気づいたのは聖奈だった。

「……吹田先輩?」

聖奈が声をかけると、姫香が慌てて振り返る。

「ちょ、弟君!? 吹田先輩が泣いてるんだけど!? 謝んなさいよ、今すぐ!」

恭弥は目を丸くしながら、しどろもどろに謝罪を繰り返す。

「す、すみません吹田先輩!俺、そんなつもりじゃ……!」

しかし、吹田は俯いたまま、かすかに首を振った。

「……大丈夫。ほんとに、大丈夫だから。」

小さく言い残し、その場をそっと離れていった。

「恭弥、追いなよ。ちゃんと謝ってきて。」

聖奈と咲が背中を押し、恭弥は練習場を後にした。


吹田の姿を見つけたのは、校舎裏の小さな広場――彼女と金山がよく自主トレしていた場所だった。
どこか懐かしむように景色を見つめる吹田に、恭弥は息を整えて近づいた。

「吹田先輩……さっきは本当に、すみませんでした。」

頭を下げる恭弥に、吹田はゆっくりと顔を向けた。

「……顔を上げて。恭弥が謝ることじゃないのよ。」

彼女は優しく微笑みながら、かすかに目元をぬぐった。

「ただね、あの輪に入って笑ってるみんなを見たら、つい……思い出しちゃったの。翼のこと。」

(翼……金山先輩のことか。)

「ここは、私が金山と最初に出会って、一緒に練習を始めた場所。楽しい時も、苦しい時も、ずっとここで支え合ってきた。勝ち負け以上に――私にとって、一緒に戦うことが夢だった。」

言葉を選ぶように、吹田はぽつりと続けた。

「もちろん、茜ちゃんが実力でレギュラーを勝ち取ったことに、不満なんてない。むしろ、尊敬してる。……でも、本音を言えば、私は“金山翼”と団体戦を勝ちたかった。それだけは、どうしても譲れなかった夢だったの。」

その時、恭弥が一歩前に出た。

「……先輩の気持ち、少しだけわかる気がします。俺にも、月詠や月華みたいな、かけがえのない仲間がいます。いずれ、離れ離れになるかもしれないけど、それでも、俺は最後まで応援したい。どんな場所にいても。」

「……金山先輩も、きっと同じ気持ちじゃないでしょうか。吹田先輩に、心から頑張ってほしいって。」
 
その言葉に、吹田の目が少し見開かれた。

そして――

「……翼?」

誰かが後ろから歩いてくる気配に振り向くと、そこには懐かしい笑顔があった。

「茉央、なに泣いてるのさ。らしくないよ。」

金山翼だった。引退し、もう試合には出ないはずの彼女が、そこにいた。

「翼……? なんで……」

吹田は目を潤ませながら、思わずその胸に飛び込んだ。

「私さ、茉央が泣くと思って、お守り作ってきたの。裁縫苦手なのに、塾の合間に徹夜して縫ったんだから。笑え。」

そう言って、彼女は小さな手作りのお守りを手渡した。

吹田がそれを受け取ると、少し縫い目が曲がった部分を見つけて、笑いながら突っ込む。

「……変な形してるし、縫い忘れもあるし。」

「もー、茉央ってば、相変わらず口悪いんだから!」

二人で笑い合うその姿は、まるでずっと昔のままだった。

「ありがとう、翼。これで、私は頑張れるよ。」

吹田はお守りを胸にぎゅっと抱きしめた。

「茉央、勝てよ。私は――おまえの一番のファンだから。」

そのエールに、聖奈たちも、茜も、自然と背筋が伸びる。

とくに茜は、金山の想いを受け継ぐ者として、静かに拳を握った。

(……私が、金山さんの分まで、この舞台で証明してみせる。)

新たな誓いが、確かにその場に刻まれていた。

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