笑顔の仮面は外れない〜陽光の私と月光の貴方〜 【完結】

君影 ルナ

文字の大きさ
11 / 45

11 お出掛けデー

しおりを挟む
 さて今日は休日。それも月一のラル様とのお出掛けデーです。事前に連絡が入り、今回は街に出掛けるとのことです。

 私はあまり自発的に外へ出ていかないので、今日はとても楽しみですね!

「お嬢様、ぼーっとしていないで準備してください。」
「はーい。」

 お出掛け先のことに思いを馳せすぎて準備が疎かになってしまいました。これでは時間に間に合いませんね。急がないとです。

 普段よりも質素な服に着替え、お化粧も普段よりも軽くしてもらいます。貴族然とした服装だと人攫いやスリなどの危険もあるのでそのようにとの指令です。















 迎えに来たラル様には応接室にて待っていていただきました。待たせてはいけないとやや早足で向かいます。

 その扉の前で少し上がった息を整え、扉を開ける。

「お待たせして申し訳ありません。」
「いや、いい。今来た所だから。」

 二人とも貴族らしさを封印した格好。しかしラル様はなんというか……

「格好いい……」

 ぽつりと口から漏れ出てしまいました。

 しかしそうなってしまうのも仕方ないと思うのです。着ているものは普段より質素なはずなのに、身から溢れ出るオーラが違うというか……とにかく格好いいんですから。

「ん? 何か言ったか?」
「あっ、いえ! なんでもないです!」
「そうか?」

 ほっ、ラル様が地獄耳じゃなくてよかったです。もし聞かれていたら恥ずかしさでその辺に埋まりたくなると思いますので。

「では行くか。」
「はい。」
















「……。」
「……。」
「……。」
「……。」

 やっぱりラル様とは何を話していいか分からないです。街を歩きながらも私達は無言でした。あ、笑顔は健在ですよ。

 婚約した当初はこちらから色々話しかけたりもしたのですが、どれもラル様に響くこともなく。ああ、そうか、などの相槌で終わってしまいました。

 なのでいつからかは忘れましたが、私達が共にいる時は無言の空間が自然と出来てしまうのです。

 ……ああ、駄目ですね。ネガテイブになってしまいそうでした。危ない危ない。

 根気強く話しかけていればもしかしたら。そんな淡い期待を込めてまた話しかけます。

「ら、ラル様、今日は天気が良くてお出掛け日和ですね。」
「ああ。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」

 ああもうどうしましょう! 折角のお出掛けなのです。もっとラル様と楽しみたいのです!



 ぐるぐるぐるぐる考えていて、背後から近付く気配に気付くことは出来ませんでした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

転生令嬢はやんちゃする

ナギ
恋愛
【完結しました!】 猫を助けてぐしゃっといって。 そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。 木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。 でも私は私、まいぺぇす。 2017年5月18日 完結しました。 わぁいながい! お付き合いいただきありがとうございました! でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。 いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。 【感謝】 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。 完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。 与太話、中身なくて、楽しい。 最近息子ちゃんをいじってます。 息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。 が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。 ひとくぎりがつくまでは。

処理中です...