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事例 壱 『コウシュ村』
伍
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なんとか聞くに耐えないメロディが鳴り終わる。随分と長い時間あの音を聞いていたような気がするほど不快だった。
ソッと塞いでいた耳を解放し、深呼吸を数回繰り返す。ドクドクと鳴る心臓の音は未だ落ち着かないが、メロディが鳴り止んだことで少しはマシになった気がした。
こればかりは時間が解決してくれるだろう。そう楽観視でもしないとちょっとメンタルがやられそうだ。
「な……なんだったんだ、あの音……」
それにしてもあんなに聞くに耐えない音なら鳴らさなければ良いのに。そんな愚痴を頭の中で繰り広げ、しかしあることにふと気がついた。
「ここ、廃村(仮)だよな? 人、いないよな? じゃあ、何故あの放送が鳴ったんだ? それに……鳴らす意味なんて無いよな?」
確かああいうメロディは防災無線の点検の意味合いがあったはず。だが村には人なんて一人もいないのだから、もしものために鳴らしておく意味もない。
だって人がいないんだもの。防災もクソもないだろうに。
それなら、人はどこか……それこそ放送を司るところにはいる、ということか? そこなら、何か分かるかもしれない……?
謎しか無かったあの放送に首を傾げるが、今ここで悩んでも解決することはないと頭を横に振って疑問を脳内から追い出す。
それよりも、分厚い雲とシンシンと降り積もる雪がレフ板の役割を担っていて、明るいんだか暗いんだか分からず時間感覚がおかしくなりそうになっていたから、まさか今がまだ夕方だとは思わず驚いてしまった。
「夕方……逢魔時……」
これだけ不気味な場所だ、幽霊の一人くらいいても何らおかしくはないだろう。そう考えると、さっさとこの村から出ていくのが最適解であるような気がしてならない。
放送している場所に行き人を探すのも手だが、個人的にはもう帰りたいという気持ちで一杯なのだ。これから第二第三のお婆さんに追いかけられるともしれないし。
そうと決まれば、今まで歩いてきた道を引き返す。帰りたい気持ちが多分に含まれた早足でサクサクと一歩一歩確かに雪を踏み締めていくと、すんなり村の入り口には辿り着いた。
未だに動かず突っ立っているお婆さんの首から下、そしてその足元にある生首。見ていて気分の良いものではないと目を逸らす。勿論、上を向かないように気をつけて、だ。
あの人形をもう一度見る勇気はない。というか見たら最期、そのまま恐怖で死んでしまいそうだから。
そう誰に向けるでもない言い訳をツラツラと頭の中で並べながら、そして見たくないものから目を逸らしながら、お婆さんの右横を通り過ぎようとした。
ここまで何もかもがすんなり行ったから、何の心配もしていなかった。
──まさか、村から出られないだなんて、思わないだろう。
ソッと塞いでいた耳を解放し、深呼吸を数回繰り返す。ドクドクと鳴る心臓の音は未だ落ち着かないが、メロディが鳴り止んだことで少しはマシになった気がした。
こればかりは時間が解決してくれるだろう。そう楽観視でもしないとちょっとメンタルがやられそうだ。
「な……なんだったんだ、あの音……」
それにしてもあんなに聞くに耐えない音なら鳴らさなければ良いのに。そんな愚痴を頭の中で繰り広げ、しかしあることにふと気がついた。
「ここ、廃村(仮)だよな? 人、いないよな? じゃあ、何故あの放送が鳴ったんだ? それに……鳴らす意味なんて無いよな?」
確かああいうメロディは防災無線の点検の意味合いがあったはず。だが村には人なんて一人もいないのだから、もしものために鳴らしておく意味もない。
だって人がいないんだもの。防災もクソもないだろうに。
それなら、人はどこか……それこそ放送を司るところにはいる、ということか? そこなら、何か分かるかもしれない……?
謎しか無かったあの放送に首を傾げるが、今ここで悩んでも解決することはないと頭を横に振って疑問を脳内から追い出す。
それよりも、分厚い雲とシンシンと降り積もる雪がレフ板の役割を担っていて、明るいんだか暗いんだか分からず時間感覚がおかしくなりそうになっていたから、まさか今がまだ夕方だとは思わず驚いてしまった。
「夕方……逢魔時……」
これだけ不気味な場所だ、幽霊の一人くらいいても何らおかしくはないだろう。そう考えると、さっさとこの村から出ていくのが最適解であるような気がしてならない。
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そう誰に向けるでもない言い訳をツラツラと頭の中で並べながら、そして見たくないものから目を逸らしながら、お婆さんの右横を通り過ぎようとした。
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──まさか、村から出られないだなんて、思わないだろう。
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