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事例 壱 『コウシュ村』
玖
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分からない、分からない、分からない。
何故俺がこんなことに巻き込まれなければならない?
何故俺はこの集落に来た?
何故ここから出られない?
何故、何故、何故……
何故、自分のことすらも分からないんだ?
次から次へと湧き上がる疑問に答えてくれるであろう『欠けた記憶』は未だ埋まる気配を見せず、俺はただただ項垂れることしか出来なかった。
・─・・・ ─・・─・ ・─
─・ ・・ ・─ ─ ─・
それからしばらくの間一人パニックを起こしていると、急に『ガタン!』と大きな物音が部屋の外から聞こえてきた。
その音でパニックを上書きされ、一周回って冷静になったのは何か嫌な感じだ。
そしてまたまた止まっていた呼吸を思い出したように再開し、いつもと同じように咽せると一気に意識が現実に戻ってきた。
そして己の危機感が『懐中電灯を消し、どこかに隠れろ』と言う。
何故急にそんなことを思ったのかは分からないが、その直感を信じて都合よくそこにあったクローゼットに隠れることにした。
その中が空で、入るのに苦労しなかったのは幸いだったろう。
そしてまだ何も起こっていない今、外から見て違和感がない数ミリ程度クローゼットの扉を開けて、居間の様子を窺えるようにしておく。ほら、何が起こっているか『分からない』のが怖いから。
ガチャ……キィィ……
ペタ……
ペタ……
ペタ……
そうこうしている間に、廊下に続く扉──勿論閉めたままにしていたアレ──が開く音がして、ユックリ部屋の中にナニカが入ってくる足音が聞こえてきた。
今以上に息を潜め、しかしドクドク鳴る己の心臓の音が自分の中で大きく響く。
まさかその音が部屋に入ってきたナニカに聞こえてしまうのではないか、とありもしない心配をしては、ジワリジワリと冷や汗が滲み、額から顎へと落ちていく。
コクリと生唾を飲んだ音すら五月蝿く感じてしまうのは、今が危機的状況だからか。
内心の焦りが呼吸に反映されたかのようで、だんだんと過呼吸気味に早まっていく。
ペタ……
ペタ……
ペタ……
部屋に入ってきたナニカは、ゆったりとした足どりで居間を徘徊しているらしい。クローゼットの隙間から見えたのは、項垂れたように首だけ下を向いたまま歩き回っている女の姿だった。
ボサボサの長髪の中から覗くガラスのような目が特徴的で……
そこまで観察した時、デジャブを感じた。そう、村の境界にあった日本人形の生首のようだと。そう考えてしまえば、もう早い。トラウマのようにそれを思い出し、サァァ……と血の気が引いた。
そうして俺の恐怖に対するキャパが限界を超えてしまったらしく、意識はフッと落ちていったのだった。
何故俺がこんなことに巻き込まれなければならない?
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・─・・・ ─・・─・ ・─
─・ ・・ ・─ ─ ─・
それからしばらくの間一人パニックを起こしていると、急に『ガタン!』と大きな物音が部屋の外から聞こえてきた。
その音でパニックを上書きされ、一周回って冷静になったのは何か嫌な感じだ。
そしてまたまた止まっていた呼吸を思い出したように再開し、いつもと同じように咽せると一気に意識が現実に戻ってきた。
そして己の危機感が『懐中電灯を消し、どこかに隠れろ』と言う。
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その中が空で、入るのに苦労しなかったのは幸いだったろう。
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ガチャ……キィィ……
ペタ……
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