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6章 テスト
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真紀の話題で少し心がざわざわしていたが、それも落ち着いた時。
「あ、あの……」
眼鏡をかけた人がオドオドしながら私達の元にやってきた。この人は……クラスメイトだったかな。覚えていなくてすみません。心の中で謝っておきます。
その人は私の目の前に来て。
「僕にも……勉強教えていただけませんか? あ、僕は佐藤と言います。」
なんと。他生徒から怖がられている音霧メンバーの一員である私に頼むとは。そんなに佐藤さんは切羽詰まっているのかな……?
「あ、はい。私で良ければ。」
「お願いします。」
もしかしてこれって……音霧メンバーは怖くないと分かってくれたのでは!?
そう考えつき、俄然気合いが入るのだった。
「花蘇芳 藍さん、ありがとうございました。おかげで理解出来ました!」
「いえ、こちらこそ佐藤さんのお役に立てたようでよかったです。あ、私のことは花蘇芳でも藍でもなんとでも呼んでください。フルネームだと長いでしょう?」
「では花蘇芳さん、と。……音霧の中でも怖くない人もいるんですね。」
ぽそりと呟かれたその言葉。そうだよ、怖くないんだよ。
分かってくれる人が一人でもいれば、伝染的に怖くないと皆さんに分かってもらえるのではないだろうか。そんな風に考えながら音霧の皆さんが怖くないことをアピールしてみる。
「皆さん優しいですよ? 誤解されているだけで。」
「そうですか……。確かに花蘇芳さんは優しいですもんね。類は友を呼ぶ、と言いますし、もしかしたら音霧の人間も怖くない……のかな?」
「そうですよ。怖くないです。」
「それはどうでしょう。」
今までそれぞれお喋りしていたようだが、山吹さんが話に入ってきた。それも冷たい声と目で。
「ちょっと山吹さん、スマイルスマイル! また誤解されますよ!」
「私は別にそれでもいいですけど?」
ちょっとー!? いちごちゃんの時の藤さん同様、威嚇した猫のようなご様子。そんなに人が怖いのね。
「りんのそれはただの……」
「あかね?」
「……なんでもねえ。うー、怖。」
にっこり笑顔で柊木さんの方を向く山吹さん。笑顔を見て怖いなんて……もしかして怒ると笑顔にでもなるのだろうか。
「あの怖い柊木 茜ですら怖いと言うのだから、山吹 竜胆はとても怖い……」
「怖くありませんよ!」
ああもう収拾がつかない。誰か助けてくれー!
「もー、りんどうくんもあかねくんも落ち着きなよー。そして僕みたいにフレンドリーにね!」
桃さんも話に入ってきた。ああ、助け舟が来た……
「フレンドリー……なら面白い話をしてやろうじゃねえか。」
柊木さんはドヤ顔でそう言い切った。この前私の考えた面白い話を一刀両断したくらいだ。きっととても面白い話なのだろう。私も少し気になる。
佐藤さんも柊木さんの話に耳を傾ける。
「猫の中ではな、黒い猫は面白くねえ。だが白い猫は面白え。何故かと言うと……」
「何故かと言うと?」
「……尾も白い。」
ドヤ顔で言い切ったぞ。
……というか、
「それが面白いのなら、私のアルミ缶の上にある果物の話も面白い範疇に入りませんか!?」
「入らん。尾が白くないからな。」
意味不明。やっぱり柊木さんの話を理解するのは、今の私には難しかった。
「……、……っ、」
あれ、佐藤さんの様子が……? 下を向いて肩を震わせている。もしかして……
「ぶっ……真顔で……言い切った……ぶふっ、」
笑っていらっしゃった。まじか。それも内容ではなく真顔で言い切った部分で笑っている。
「柊木さん、寒いです。」
敦子ちゃんが思わずと言った風ではあるが柊木さんに意見する。怖いという感情よりも寒い方が上だったようだ。
「うん、寒い。」
いちごちゃんも同調する。
「なっ! 面白いだろ!」
「私なんて幼い頃から同じ話を聞かされていたので、もう寒いとも感じなくなりましたよ。」
遠い目をする山吹さん。はは、なんて乾いた笑みも口から零れる。山吹さんも苦労しているのね。
「ってか今の寒いギャグで茜の怖いイメージが崩れたよね。結果オーライじゃない?」
確かに寒いギャグを聞いた後、クラスの中の雰囲気が変わった。今までは音霧に対して『恐怖』の感情を向けていたのに、今はそれが減った気がする。まさか柊木さんはこれを狙った……?
「いえ、あれはただの素です。だってほら、『何故ウケない?』とでも言いそうな表情ですよ、あれ。」
うーん、ドヤ顔のままに見えるけど……違うのね。山吹さんは小さな異変も見逃さない目を持っているんだね。すごいや。
柊木さんはドヤ顔のまま、佐藤さんは肩を震わせ、その他は寒いと腕を摩る。
そんな状況は昼休みが終わるまで続いたのだった。
「あ、あの……」
眼鏡をかけた人がオドオドしながら私達の元にやってきた。この人は……クラスメイトだったかな。覚えていなくてすみません。心の中で謝っておきます。
その人は私の目の前に来て。
「僕にも……勉強教えていただけませんか? あ、僕は佐藤と言います。」
なんと。他生徒から怖がられている音霧メンバーの一員である私に頼むとは。そんなに佐藤さんは切羽詰まっているのかな……?
「あ、はい。私で良ければ。」
「お願いします。」
もしかしてこれって……音霧メンバーは怖くないと分かってくれたのでは!?
そう考えつき、俄然気合いが入るのだった。
「花蘇芳 藍さん、ありがとうございました。おかげで理解出来ました!」
「いえ、こちらこそ佐藤さんのお役に立てたようでよかったです。あ、私のことは花蘇芳でも藍でもなんとでも呼んでください。フルネームだと長いでしょう?」
「では花蘇芳さん、と。……音霧の中でも怖くない人もいるんですね。」
ぽそりと呟かれたその言葉。そうだよ、怖くないんだよ。
分かってくれる人が一人でもいれば、伝染的に怖くないと皆さんに分かってもらえるのではないだろうか。そんな風に考えながら音霧の皆さんが怖くないことをアピールしてみる。
「皆さん優しいですよ? 誤解されているだけで。」
「そうですか……。確かに花蘇芳さんは優しいですもんね。類は友を呼ぶ、と言いますし、もしかしたら音霧の人間も怖くない……のかな?」
「そうですよ。怖くないです。」
「それはどうでしょう。」
今までそれぞれお喋りしていたようだが、山吹さんが話に入ってきた。それも冷たい声と目で。
「ちょっと山吹さん、スマイルスマイル! また誤解されますよ!」
「私は別にそれでもいいですけど?」
ちょっとー!? いちごちゃんの時の藤さん同様、威嚇した猫のようなご様子。そんなに人が怖いのね。
「りんのそれはただの……」
「あかね?」
「……なんでもねえ。うー、怖。」
にっこり笑顔で柊木さんの方を向く山吹さん。笑顔を見て怖いなんて……もしかして怒ると笑顔にでもなるのだろうか。
「あの怖い柊木 茜ですら怖いと言うのだから、山吹 竜胆はとても怖い……」
「怖くありませんよ!」
ああもう収拾がつかない。誰か助けてくれー!
「もー、りんどうくんもあかねくんも落ち着きなよー。そして僕みたいにフレンドリーにね!」
桃さんも話に入ってきた。ああ、助け舟が来た……
「フレンドリー……なら面白い話をしてやろうじゃねえか。」
柊木さんはドヤ顔でそう言い切った。この前私の考えた面白い話を一刀両断したくらいだ。きっととても面白い話なのだろう。私も少し気になる。
佐藤さんも柊木さんの話に耳を傾ける。
「猫の中ではな、黒い猫は面白くねえ。だが白い猫は面白え。何故かと言うと……」
「何故かと言うと?」
「……尾も白い。」
ドヤ顔で言い切ったぞ。
……というか、
「それが面白いのなら、私のアルミ缶の上にある果物の話も面白い範疇に入りませんか!?」
「入らん。尾が白くないからな。」
意味不明。やっぱり柊木さんの話を理解するのは、今の私には難しかった。
「……、……っ、」
あれ、佐藤さんの様子が……? 下を向いて肩を震わせている。もしかして……
「ぶっ……真顔で……言い切った……ぶふっ、」
笑っていらっしゃった。まじか。それも内容ではなく真顔で言い切った部分で笑っている。
「柊木さん、寒いです。」
敦子ちゃんが思わずと言った風ではあるが柊木さんに意見する。怖いという感情よりも寒い方が上だったようだ。
「うん、寒い。」
いちごちゃんも同調する。
「なっ! 面白いだろ!」
「私なんて幼い頃から同じ話を聞かされていたので、もう寒いとも感じなくなりましたよ。」
遠い目をする山吹さん。はは、なんて乾いた笑みも口から零れる。山吹さんも苦労しているのね。
「ってか今の寒いギャグで茜の怖いイメージが崩れたよね。結果オーライじゃない?」
確かに寒いギャグを聞いた後、クラスの中の雰囲気が変わった。今までは音霧に対して『恐怖』の感情を向けていたのに、今はそれが減った気がする。まさか柊木さんはこれを狙った……?
「いえ、あれはただの素です。だってほら、『何故ウケない?』とでも言いそうな表情ですよ、あれ。」
うーん、ドヤ顔のままに見えるけど……違うのね。山吹さんは小さな異変も見逃さない目を持っているんだね。すごいや。
柊木さんはドヤ顔のまま、佐藤さんは肩を震わせ、その他は寒いと腕を摩る。
そんな状況は昼休みが終わるまで続いたのだった。
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