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7章 夏休み
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「夏休み明けに文化祭があります。ということで今日はクラスの出し物を決めたいと思います。案を出してください。」
次の日のLHR。いつも通りクラス委員長の山吹さんが仕切る。
文化祭の出し物ねえ……何も思いつかない。よし、他の人に任せよう。
文化祭に出るのも初めてなのでとても楽しみである。
「はい! 喫茶店が良いと思います!」
喫茶店、か。よし、ストレリチアでバイトしていた経験を活かしていける。貢献出来ることが見つかって良かった。
「そんで音霧のメンバーに給仕係をやってもらいたい! 衣装は私が担当するから! 花蘇芳 藍さんの給仕姿をこの目に焼き付けたい!」
ん? なんか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするのは気のせい……だよね。うん、そうだ。
そもそも嫌われ者の集まりである音霧メンバーが給仕とか大丈夫……? 最近クラスメイトには話しかけられるようになったけど、やっぱりまだまだ他クラス他学年からは怖がられているはず。それなのにいいの?
「でもさあ、ただの喫茶店だと他と被るんじゃない?」
珍しく藤さんが意見する。確かに一理あるね。
「ああ確かに。二年B組も喫茶店やるって言ってたねー。どうする?」
「え、B組も喫茶店? 茜が張り切って本格的な喫茶店にしそうじゃない?」
この言い方だと柊木さんとB組の人達も打ち解けてきているのだろうか。
「ああ、ありそうですね。茜ならやりかねない。それに対抗するには何かインパクトのあるものにしなければならないかもしれません。」
「はいはい! なら和風カフェみたいなのはどう?」
先程と同じ人が提案する。和風ね……良いのでは? わらび餅、抹茶、羊羹……
ああ、考えただけで美味しそう。
「ならば衣装は和服じゃなーい?」
「和服……萌える!」
もえる……? 衣装が燃えちゃったら終わりじゃない?
「……他に意見はありますか?」
皆さんはもう和風カフェを開く気満々だ。目がキラキラしている。
「ではA組は和風カフェにします。」
あちこちでイェーイと喜ぶ声が。私も楽しみだ。和風……お団子、餡蜜、最中……
「文化祭準備は夏休み中にもやりますから、きちんと集まってくださいね。」
山吹さんの言葉に皆さんいい返事をする。
体育祭の時にはなかった団結力みたいなものが今のA組にはあった。私達音霧メンバーも含めた団結力がね。
「では次は……」
結局私と山吹さんと藤さんは強制的に給仕係に。どうしても和服を着て欲しいらしい。
給仕係は当日しか仕事がないので、他の準備を手伝うことに。山吹さんはメニュー関係を手伝い、藤さんと私は内装を作る仕事を手伝う。
「藍ちゃん頑張ろうね。」
「はい。」
「花蘇芳 藍さん、酸漿 藤さん、よろしくね!」
同じ内装準備の子が一人話しかけてきた。
「よろしくお願いします。あ、私の名前フルネームだと長いでしょう? 花蘇芳でも藍でもいいですよ。」
「俺もー。」
「じゃあ花蘇芳さん、酸漿さんと。私は永崎 晴子だよ。」
「では永崎さんと呼ばせていただきます。」
「うん!」
「じゃあ作業始めよー!」
それぞれが動き始めた。
作業と言っても最初なので、何が必要か、どこから調達するかなどを話し合っている。
話を聞いていると隣にいた藤さんがつんつんと私を突く。
「ねえねえ、藍ちゃんは茜に何か言われた?」
「え? ……何も言われてませんが……どうかされましたか?」
「いやあのね、茜コーヒー不足で死んでたでしょ?」
「はい。」
昨日ソファでコーヒーコーヒーと呟いていた柊木さんを思い出す。
「で、週末になれば喫茶店に行くんだけど、どうしても一人では行けないなんて言うんだよ。」
「はあ……」
意外だ。私の勝手なイメージ柊木さんだと『一人でくつろいだ方がコーヒーを楽しめる!』なんて言いそうなんだけど。
「そんでいつも竜胆か俺に一緒に行こうなんて言うんだよ。同学年だからだと思うんだけど。」
「へえ……」
昨日桃さんは勝手に行くと言っていたし、一人で行けないことは山吹さんと藤さんしか知らないのだろう。あれかな、年下には格好つけたいみたいな感じだろうか。
「だからもしかして同学年の藍ちゃんに一緒に行こうなんて言ってるんじゃないかなって思って。」
「なるほど。ですが私は何も言われてませんね。」
「そっかー。じゃあまた俺か竜胆かなー。……俺苦いの無理なのにー。」
確かに藤さんの好きな食べ物ってチョコだものね。コーヒーが苦手なのも分かる気がする。
「私が知っている喫茶店だと色々とありますよ?」
「甘いのも?」
「はい。」
「へえ、それはいいね。後で俺も連れてってよ。」
「いいですよ。一緒に行きましょう!」
予定が一つ増えた。
「藍、お前喫茶店知ってるらしいじゃねえか。どこだ?」
その日の夜。お茶を飲んでいたら早速柊木さんが喫茶店についての情報を求めてきた。藤さんから聞いたのかな?
「喫茶 ストレリチアってところです。隣町の。」
「隣町……ストレリチア……聞いた事ねえな。」
「大通りから少し外れたところにありますから。知る人ぞ知る、みたいな感じです。」
私のその言葉を聞いた柊木さんは、目をキランと光らせた。
「ほお。……週末そこに連れてけ。」
「いいですよ。……あ、藤さんも誘ってみてもいいですか? 後で一緒に行く約束をしましたので。」
「もちろんいいぞ。大人数で行くのも楽しいだろうし。」
「ありがとうございます。」
藤さんを探しに立ち上がった。
次の日のLHR。いつも通りクラス委員長の山吹さんが仕切る。
文化祭の出し物ねえ……何も思いつかない。よし、他の人に任せよう。
文化祭に出るのも初めてなのでとても楽しみである。
「はい! 喫茶店が良いと思います!」
喫茶店、か。よし、ストレリチアでバイトしていた経験を活かしていける。貢献出来ることが見つかって良かった。
「そんで音霧のメンバーに給仕係をやってもらいたい! 衣装は私が担当するから! 花蘇芳 藍さんの給仕姿をこの目に焼き付けたい!」
ん? なんか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするのは気のせい……だよね。うん、そうだ。
そもそも嫌われ者の集まりである音霧メンバーが給仕とか大丈夫……? 最近クラスメイトには話しかけられるようになったけど、やっぱりまだまだ他クラス他学年からは怖がられているはず。それなのにいいの?
「でもさあ、ただの喫茶店だと他と被るんじゃない?」
珍しく藤さんが意見する。確かに一理あるね。
「ああ確かに。二年B組も喫茶店やるって言ってたねー。どうする?」
「え、B組も喫茶店? 茜が張り切って本格的な喫茶店にしそうじゃない?」
この言い方だと柊木さんとB組の人達も打ち解けてきているのだろうか。
「ああ、ありそうですね。茜ならやりかねない。それに対抗するには何かインパクトのあるものにしなければならないかもしれません。」
「はいはい! なら和風カフェみたいなのはどう?」
先程と同じ人が提案する。和風ね……良いのでは? わらび餅、抹茶、羊羹……
ああ、考えただけで美味しそう。
「ならば衣装は和服じゃなーい?」
「和服……萌える!」
もえる……? 衣装が燃えちゃったら終わりじゃない?
「……他に意見はありますか?」
皆さんはもう和風カフェを開く気満々だ。目がキラキラしている。
「ではA組は和風カフェにします。」
あちこちでイェーイと喜ぶ声が。私も楽しみだ。和風……お団子、餡蜜、最中……
「文化祭準備は夏休み中にもやりますから、きちんと集まってくださいね。」
山吹さんの言葉に皆さんいい返事をする。
体育祭の時にはなかった団結力みたいなものが今のA組にはあった。私達音霧メンバーも含めた団結力がね。
「では次は……」
結局私と山吹さんと藤さんは強制的に給仕係に。どうしても和服を着て欲しいらしい。
給仕係は当日しか仕事がないので、他の準備を手伝うことに。山吹さんはメニュー関係を手伝い、藤さんと私は内装を作る仕事を手伝う。
「藍ちゃん頑張ろうね。」
「はい。」
「花蘇芳 藍さん、酸漿 藤さん、よろしくね!」
同じ内装準備の子が一人話しかけてきた。
「よろしくお願いします。あ、私の名前フルネームだと長いでしょう? 花蘇芳でも藍でもいいですよ。」
「俺もー。」
「じゃあ花蘇芳さん、酸漿さんと。私は永崎 晴子だよ。」
「では永崎さんと呼ばせていただきます。」
「うん!」
「じゃあ作業始めよー!」
それぞれが動き始めた。
作業と言っても最初なので、何が必要か、どこから調達するかなどを話し合っている。
話を聞いていると隣にいた藤さんがつんつんと私を突く。
「ねえねえ、藍ちゃんは茜に何か言われた?」
「え? ……何も言われてませんが……どうかされましたか?」
「いやあのね、茜コーヒー不足で死んでたでしょ?」
「はい。」
昨日ソファでコーヒーコーヒーと呟いていた柊木さんを思い出す。
「で、週末になれば喫茶店に行くんだけど、どうしても一人では行けないなんて言うんだよ。」
「はあ……」
意外だ。私の勝手なイメージ柊木さんだと『一人でくつろいだ方がコーヒーを楽しめる!』なんて言いそうなんだけど。
「そんでいつも竜胆か俺に一緒に行こうなんて言うんだよ。同学年だからだと思うんだけど。」
「へえ……」
昨日桃さんは勝手に行くと言っていたし、一人で行けないことは山吹さんと藤さんしか知らないのだろう。あれかな、年下には格好つけたいみたいな感じだろうか。
「だからもしかして同学年の藍ちゃんに一緒に行こうなんて言ってるんじゃないかなって思って。」
「なるほど。ですが私は何も言われてませんね。」
「そっかー。じゃあまた俺か竜胆かなー。……俺苦いの無理なのにー。」
確かに藤さんの好きな食べ物ってチョコだものね。コーヒーが苦手なのも分かる気がする。
「私が知っている喫茶店だと色々とありますよ?」
「甘いのも?」
「はい。」
「へえ、それはいいね。後で俺も連れてってよ。」
「いいですよ。一緒に行きましょう!」
予定が一つ増えた。
「藍、お前喫茶店知ってるらしいじゃねえか。どこだ?」
その日の夜。お茶を飲んでいたら早速柊木さんが喫茶店についての情報を求めてきた。藤さんから聞いたのかな?
「喫茶 ストレリチアってところです。隣町の。」
「隣町……ストレリチア……聞いた事ねえな。」
「大通りから少し外れたところにありますから。知る人ぞ知る、みたいな感じです。」
私のその言葉を聞いた柊木さんは、目をキランと光らせた。
「ほお。……週末そこに連れてけ。」
「いいですよ。……あ、藤さんも誘ってみてもいいですか? 後で一緒に行く約束をしましたので。」
「もちろんいいぞ。大人数で行くのも楽しいだろうし。」
「ありがとうございます。」
藤さんを探しに立ち上がった。
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