死神ちゃんと天使くん 【完結】

君影 ルナ

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第1部 相棒との出会い

4 アンジュside

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「それでクロ、天使協会の事だけど。」
「うん。」

 リビングに戻ってきた俺達。再びソファに座り、天使協会について説明する。

 俺、説明すんの下手なんだよねえ。大丈夫かな。


 俺の方を向いて聞く姿勢を作るクロの綺麗な黒髪がサラリと揺れる。フードから見えるそれはふわふわしていそうで触ってみたいと思った。後で触っていいか聞いてみよー。

「天使協会って言うのは、その名の通り天使と呼ばれる人が所属しているもので、死神様をサポートするためにいるんだ。」
「ほうほう。」

「で、死神様の仕事量に応じて派遣される天使の数は変わってくるんだけど、クロは比較的仕事量が少なめだから俺一人がクロの元に派遣されたってわけ。」
「なるほど。」
「何か質問ある?」
「んーん、ない。今の説明でだいたい雰囲気は分かった、と思う。ありがとう、アンジュ。」

 口角が上がるクロ。どうやら笑っているらしい。顔の上半分を包帯が占めているので、表情を読み取るのが少し難しい。

 何故包帯を巻いているんだろう、と初めて見た時から思っていた。俺やクロのような者は、死ぬ直前の姿形を取る。だからどんなに酷い傷を負って死んだとしても、天使や死神になればその傷は消えている。

 ということはもしかしたらクロは生きているうちから目が見えなかったのだろうか。会ったばかりだからちょっと聞けないけど。

「いやー、俺説明下手だからこの説明で理解してくれてこちらこそありがとうだよ。」
「何それ、アンジュ面白い。」

 クスクスと笑うクロ。この包帯を取って顔をじっくり見てみたい衝動に駆られるが、ぐっとそれを抑える。

「アンジュと一緒にいれば、この仕事も頑張れそうだよ。」

 今はどんな表情を浮かべているのだろう。口角は未だに上がっているが、声色が少し強ばった気がする。

「そう言ってくれて嬉しいよ。改めてこれからよろしくね。」

 まだクロのこと何も知らないけど、いつかはその強ばりも解いてあげたい。そう思った。

「改めてよろしくね。」
「よろしく!」

 すっとクロと握手したその時、向こうにあるテーブルの上に包帯が乱雑に置かれているのが目に入った。

「……クロ。」
「ん? どしたのアンジュ。」
「向こうにある包帯はどうしたの?」
「え……あ! なんでもないよ! 気にしないで!」

 握手したその手を離し、包帯が置いてある方へ駆けるクロ。

「いだっ!」

 急ぎすぎたのか椅子に足をぶつけたようだ。ゴッと音がしていたし、相当痛かったのだろう。蹲り、ぶつけた足を摩っている。

「だ、大丈夫?」
「う……」

 大ダメージだったようだ。応答出来ないくらい痛いらしい。

「痛い? 痛いよね! ああどうしよう!」

 わたわたとクロの周りをうろちょろする俺。何一つとして役に立っていないのは分かっているが、どうすればいいか分からないのだ。

「だ……大丈夫……」

 絞り出したような声でそう言うクロ。絶対大丈夫じゃないよね。

「あ、温める? 冷やす? どっちだろう?」
「大丈夫。もうだいぶ良くなった。」
「そう?」
「よくやらかすことだから。」
「そうなの?」
「うん。包帯巻き始めた辺りは一日に十回くらいはどこかにぶつけていたもの。」
「そうなんだ……?」

 ということは元々目は見えていたのかな? じゃあなんで目を包帯でぐるぐる巻きにしてるんだろう。

「ねえクロ。その包帯、なんでぐるぐる巻きにしてるの?」

 話の流れ的に聞けそうな気がする。ちょっとドキドキしながら答えを待つ。

「あー、これね。なんか先代の死神に初めて会った時、先代が包帯巻けって言ったからそれに従ってる感じだよ。私には先代がそう言った理由分かんないんだけどね。」
「え、理由聞いてないの?」
「うん。聞いてみたけど『知らなくてもいいよー』なんて言うんだもん。」
「そうなんだ。なんでだろうねー。」
「ねー。」

 うーん、なんかモヤモヤする。いつかは理由が分かる日が来るのだろうか。
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