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第2部 生前との決別
9 死神注意
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生前の話をし合った後も、それぞれ生前好きだったものなどを話したりした。前よりもアンジュとの距離が縮まったような気がする。
「さて、次は……」
しかしそうなったからと言って仕事が無くなるわけでもなく。今日も今日とて魂を狩る。
「……あれれ? なんか多くない?」
事前に資料を見てターゲットの情報を得てから狩りに行くのだが、同じ場所同じ時間に六件も入っている。
トントンと指で叩いて情報を得る。
『──』
「……そういう事か。」
少し気分が落ち込むが、仕事はしっかりとやらなきゃ。しかしどうしよう。私だけだと魂を持ちきれない。経験上狩ることも考えると最高で二つしか持てないと分かっている。……アンジュにも来てもらうのはアリかな?
「アンジュー、天使って死神の仕事に着いてくことも出来るの?」
「出来るよー。あ、もしかして魂持ち?」
「そうそう。一気に六件も入っててさ。」
「分かった。着いてくー。」
「ありがとう。」
初めてアンジュと魂狩りに行くことになった。
「ここか……」
歩道にふわりと降り立った。
しかしまだそれは起きていないようで、歩いている人もちらほら、車通りもちらほら。だがこれから……
「アンジュは狩りに同行するの初めてだよね。」
「うん。クロの仕事風景見れるんだもの。少し楽しみかも。」
ウキウキしている声だった。
「……楽しみ、ね。」
私は一度も狩りが楽しいと思ったことはないけどなあ。狩りのことを考えて少し気分が落ち込む。
「……あれ、あの車……」
するとアンジュは異変を感じ取ったようだ。ああ、もう仕事の時間か。
ドン、ドンと次々にぶつかる音。ああ、嫌だ。音だけでその状態を想像出来てしまうのが余計嫌だ。
「っ……、」
助けることも出来ずに人が死ぬ瞬間を見届けないといけないこの仕事の苦しさを、アンジュも間近で見てしまった。目が見える分、余計その重圧はアンジュを苦しめるかもしれない。……やっぱり連れてくるんじゃなかった。
『居眠り運転車による交通事故』
今日の魂達はこの事故によって私に魂を狩られることになっている。
鎌を振り下ろし、魂をバッサバッサと狩っていく。やっぱり目頭が熱くなる。
しかしアンジュがいる手前、涙など見せられない。ただの強がりなのかもしれないが、それでも慣れている私が強くあらねば。
「っ……」
「アンジュ、魂持ってくれる?」
「……うん。そのために来たんだもの。持つよ。」
「お願いします。」
アンジュの声が震えている。……連れてくるのは今回限りだな。アンジュには少しでも辛い思いはして欲しくないし。辛い思いは私だけで……
「……帰ろっか。」
全て狩り終えたので、もうここにいる理由もない。
「うん。」
さて、館に戻ってきたのはいいのだが……
魂の番人に会いに行くには、あの合言葉を唱えなければならないからなあ……
ちなみにいつも番人に会う時はアンジュに違う部屋にいてもらっているので、合言葉を聞かれたことは一度もなかった。
「アンジュ、魂持ってくれてありがとう。後は私が。」
「……ついて行っていい? この魂の行く末を見届けたい。」
連れてけオーラがバンバン私に突き刺さる。
「うっ………………いいよ。」
これは断れないわ。
「じゃあ耳塞いでて。」
「なんで?」
「なんでも。」
あの合言葉は絶対聞かせたくない。百パーセント笑われる。
「……分かった。」
三秒待ってから本を引き、ゴゴゴ、と音が鳴った後。深呼吸を一度し、唱える。
「……迷える魂裁く在り処へ、我、導き給え! 開けゴマ!」
「ぶっ、」
「あっ、ちょっとアンジュ! 耳塞いでてって言ったじゃん!」
『開けゴマ』の部分を聞いて欲しくなかったのに、普通に笑われた。
「開けゴマで開く扉……くくくっ、面白い。」
「もー……行くよ。」
「はーい。」
先程までの重苦しい雰囲気はなくなったように思う。結果オーライ……かな?
「さて、次は……」
しかしそうなったからと言って仕事が無くなるわけでもなく。今日も今日とて魂を狩る。
「……あれれ? なんか多くない?」
事前に資料を見てターゲットの情報を得てから狩りに行くのだが、同じ場所同じ時間に六件も入っている。
トントンと指で叩いて情報を得る。
『──』
「……そういう事か。」
少し気分が落ち込むが、仕事はしっかりとやらなきゃ。しかしどうしよう。私だけだと魂を持ちきれない。経験上狩ることも考えると最高で二つしか持てないと分かっている。……アンジュにも来てもらうのはアリかな?
「アンジュー、天使って死神の仕事に着いてくことも出来るの?」
「出来るよー。あ、もしかして魂持ち?」
「そうそう。一気に六件も入っててさ。」
「分かった。着いてくー。」
「ありがとう。」
初めてアンジュと魂狩りに行くことになった。
「ここか……」
歩道にふわりと降り立った。
しかしまだそれは起きていないようで、歩いている人もちらほら、車通りもちらほら。だがこれから……
「アンジュは狩りに同行するの初めてだよね。」
「うん。クロの仕事風景見れるんだもの。少し楽しみかも。」
ウキウキしている声だった。
「……楽しみ、ね。」
私は一度も狩りが楽しいと思ったことはないけどなあ。狩りのことを考えて少し気分が落ち込む。
「……あれ、あの車……」
するとアンジュは異変を感じ取ったようだ。ああ、もう仕事の時間か。
ドン、ドンと次々にぶつかる音。ああ、嫌だ。音だけでその状態を想像出来てしまうのが余計嫌だ。
「っ……、」
助けることも出来ずに人が死ぬ瞬間を見届けないといけないこの仕事の苦しさを、アンジュも間近で見てしまった。目が見える分、余計その重圧はアンジュを苦しめるかもしれない。……やっぱり連れてくるんじゃなかった。
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今日の魂達はこの事故によって私に魂を狩られることになっている。
鎌を振り下ろし、魂をバッサバッサと狩っていく。やっぱり目頭が熱くなる。
しかしアンジュがいる手前、涙など見せられない。ただの強がりなのかもしれないが、それでも慣れている私が強くあらねば。
「っ……」
「アンジュ、魂持ってくれる?」
「……うん。そのために来たんだもの。持つよ。」
「お願いします。」
アンジュの声が震えている。……連れてくるのは今回限りだな。アンジュには少しでも辛い思いはして欲しくないし。辛い思いは私だけで……
「……帰ろっか。」
全て狩り終えたので、もうここにいる理由もない。
「うん。」
さて、館に戻ってきたのはいいのだが……
魂の番人に会いに行くには、あの合言葉を唱えなければならないからなあ……
ちなみにいつも番人に会う時はアンジュに違う部屋にいてもらっているので、合言葉を聞かれたことは一度もなかった。
「アンジュ、魂持ってくれてありがとう。後は私が。」
「……ついて行っていい? この魂の行く末を見届けたい。」
連れてけオーラがバンバン私に突き刺さる。
「うっ………………いいよ。」
これは断れないわ。
「じゃあ耳塞いでて。」
「なんで?」
「なんでも。」
あの合言葉は絶対聞かせたくない。百パーセント笑われる。
「……分かった。」
三秒待ってから本を引き、ゴゴゴ、と音が鳴った後。深呼吸を一度し、唱える。
「……迷える魂裁く在り処へ、我、導き給え! 開けゴマ!」
「ぶっ、」
「あっ、ちょっとアンジュ! 耳塞いでてって言ったじゃん!」
『開けゴマ』の部分を聞いて欲しくなかったのに、普通に笑われた。
「開けゴマで開く扉……くくくっ、面白い。」
「もー……行くよ。」
「はーい。」
先程までの重苦しい雰囲気はなくなったように思う。結果オーライ……かな?
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