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第4部 現世にて
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「そう言えばさ、ひとみん知ってる? なんか転入生が来るって噂。」
「何それ知らない。え、もっと詳しく知りたいから教えて?」
「もちろん!」
中途半端な時期に転入生かー。友達作りも大変そうだなー……というかむしろチャンスでは? 私の友達を作るチャンス。
この機を逃さない手はないな。
と、呑気に考えていた私もいましたよ。ええ。まさかあんなことになるとは……。
「でも俺もなんか一年生だってことくらいしか知らないかも……」
「私と同級生じゃん!」
それなら尚更友達作りのチャンス! よし、頑張るぞ。
「先代。」
鈴佳と話していたその時、ポンと肩に手を置かれたので振り返る。が……
「やっと会えたっすね。」
そこにいたのは……玲北の制服を着た、見知らぬ男子生徒。誰だろう。首を傾げる。
「えっ、もしかして先代覚えてないんすか?」
「ええと……?」
「けんけんじゃん!」
「あ、アンジュさんいたんすか。ちはっす。」
あれ、二人は知り合いなの? それも鈴佳のこと『アンジュ』って……?
「アンジュさん、先代はもしかして……?」
「そうだよ。」
「……そっすか。」
ん? この二人にしか通じない話をしているみたい……? なんか暗号みたいだなー。私も話に混ぜて欲しいなー。
「ってかさ、今は鈴佳って名前があるんですー。」
『今は』? 前は鈴佳っていう名前が無かったってこと?
「ああ、そっすね。俺の呼び名は本名から取ったっすけど、アンジュさんはそうじゃないっすもんね。ってか鈴佳って名前だったんすか。初知りっすね。」
「いい響きでしょ。」
「っす。じゃあ鈴佳先輩って呼びますね。」
「おうよ!」
知り合いみたいだけども名前を知らない? ……どんな関係なんだろう。私のことも知っているらしいけど、私やっぱりこの人知らない。鈴佳は『けんけん』って呼んでたけど。
「てことで自己紹介します。俺は今日転入してきた黒澤 健次郎っす。よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げる黒澤くん。なるほど、健次郎だからけんけんか。
というか黒澤くんが転入生だったのか! 話しやすそうな子だと思った。これならもしかしたら友達に……
「私は如月 瞳です。」
「へえ……確かに先代の瞳は綺麗っすよね。だから瞳って名前なんすね。」
そう言った黒澤くんは私の頬を触ろうと手を伸ばしたみたいだが、その手が私の頬に付く前に鈴佳が私の腕を引く。そして背後からぎゅっと抱き締められる。
「ちょっとけんけんー?」
「アンジ……鈴佳先輩、先代は覚えていないんす。俺にもチャンスはあるってことっすよね?」
「ないないなーい! 絶対俺が許しません!」
「ぐえっ、」
鈴佳、力強い……。抱き締めた鈴佳の腕が私を締め上げる。そのせいで潰れた蛙のような声が出ちゃったじゃん。可愛げもくそもないよね。
「えー? でもそれはアン……鈴佳先輩が決めることじゃないっすよ。」
「それでも駄目ー!」
さて、この二人は何の話をしているのでしょうか。私には理解不能なくらい難解なことなんでしょうね。分からなすぎて敬語口調になってしまいました。
二人の言い合いはこの後暫く続いたのだった。結局最後まで理解できなかったなあ……。
「何それ知らない。え、もっと詳しく知りたいから教えて?」
「もちろん!」
中途半端な時期に転入生かー。友達作りも大変そうだなー……というかむしろチャンスでは? 私の友達を作るチャンス。
この機を逃さない手はないな。
と、呑気に考えていた私もいましたよ。ええ。まさかあんなことになるとは……。
「でも俺もなんか一年生だってことくらいしか知らないかも……」
「私と同級生じゃん!」
それなら尚更友達作りのチャンス! よし、頑張るぞ。
「先代。」
鈴佳と話していたその時、ポンと肩に手を置かれたので振り返る。が……
「やっと会えたっすね。」
そこにいたのは……玲北の制服を着た、見知らぬ男子生徒。誰だろう。首を傾げる。
「えっ、もしかして先代覚えてないんすか?」
「ええと……?」
「けんけんじゃん!」
「あ、アンジュさんいたんすか。ちはっす。」
あれ、二人は知り合いなの? それも鈴佳のこと『アンジュ』って……?
「アンジュさん、先代はもしかして……?」
「そうだよ。」
「……そっすか。」
ん? この二人にしか通じない話をしているみたい……? なんか暗号みたいだなー。私も話に混ぜて欲しいなー。
「ってかさ、今は鈴佳って名前があるんですー。」
『今は』? 前は鈴佳っていう名前が無かったってこと?
「ああ、そっすね。俺の呼び名は本名から取ったっすけど、アンジュさんはそうじゃないっすもんね。ってか鈴佳って名前だったんすか。初知りっすね。」
「いい響きでしょ。」
「っす。じゃあ鈴佳先輩って呼びますね。」
「おうよ!」
知り合いみたいだけども名前を知らない? ……どんな関係なんだろう。私のことも知っているらしいけど、私やっぱりこの人知らない。鈴佳は『けんけん』って呼んでたけど。
「てことで自己紹介します。俺は今日転入してきた黒澤 健次郎っす。よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げる黒澤くん。なるほど、健次郎だからけんけんか。
というか黒澤くんが転入生だったのか! 話しやすそうな子だと思った。これならもしかしたら友達に……
「私は如月 瞳です。」
「へえ……確かに先代の瞳は綺麗っすよね。だから瞳って名前なんすね。」
そう言った黒澤くんは私の頬を触ろうと手を伸ばしたみたいだが、その手が私の頬に付く前に鈴佳が私の腕を引く。そして背後からぎゅっと抱き締められる。
「ちょっとけんけんー?」
「アンジ……鈴佳先輩、先代は覚えていないんす。俺にもチャンスはあるってことっすよね?」
「ないないなーい! 絶対俺が許しません!」
「ぐえっ、」
鈴佳、力強い……。抱き締めた鈴佳の腕が私を締め上げる。そのせいで潰れた蛙のような声が出ちゃったじゃん。可愛げもくそもないよね。
「えー? でもそれはアン……鈴佳先輩が決めることじゃないっすよ。」
「それでも駄目ー!」
さて、この二人は何の話をしているのでしょうか。私には理解不能なくらい難解なことなんでしょうね。分からなすぎて敬語口調になってしまいました。
二人の言い合いはこの後暫く続いたのだった。結局最後まで理解できなかったなあ……。
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