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第4部 現世にて
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「鈴佳君にまとわりついて、あんた調子に乗らないでよね!」
今日も今日とてけばけばしい女子生徒に囲まれる。鈴佳が来ない時を狙ったかのようなタイミングの良さに少しうんざりする。
火に油を注ぎかねないので、ため息が出そうになるのを既で止めた。
「この前も忠告したよね? あんまり出しゃばらないでって。地味子の癖に。」
入学式の日の鈴佳との出会いによって、私は鈴佳にまとわりつく邪魔者であると周りは認識したらしい。だから色んな人から突っかかられるし、友達も出来ない。
ちょっと楽しみだったのになあ……友達とお喋りしたりするの。まあ、仕方ない。鈴佳と会えなくなるのは嫌だし、これは必要な犠牲だったのだろう。自分をなんとか納得させる。
「ちょっと聞いてんの!?」
「……聞いてますよ。でもそれって第三者が口を出すことなんですかね。」
「っ! このっ!」
パチン、と思い切り右頬を叩かれる。ああ、痛い。でも……
『優等生ぶって!』
『地味子のくせに!』
前にもこんなことあったような気がする。でも、いつのことだろう? 私はこれまで十五年生きてきて虐められたことは一度も無かったはずなのに。
なんだろう、これ。鈴佳を初めて見た時と同じ感じだ。懐かしいような……
「あー! ちょっと! 何やってんのさ!!」
少しの間思案していると大きな声が聞こえてくる。これは絶対鈴佳の声だ。
私と女子生徒の間に鈴佳が割り入ったことで、鈴佳の背中だけが私の視界を覆う形になる。
「す、鈴佳くん!」
「やばっ、」
バタバタと五月蝿い足音と共に女子生徒の焦った声が聞こえた。
「もう君達の顔覚えちゃったからねー! 次何かやったら容赦しないよー!」
そう鈴佳が叫んだ後、人の気配もなくなって辺りはしんと静まる。
「ひとみん、大丈夫? 大丈夫じゃないよね?」
くるりとこちらを向いてワタワタし始める鈴佳。忠犬のような言動にくすっと笑いが零れる。
「助けてくれてありがとう。でもこういうのには慣れてるから大丈夫だよ。」
いつのものか分からない曖昧な記憶(?)の中の私もあんな風に言われていたし。だから大丈夫。
「俺が大丈夫じゃないよ。だって虐められていたのも自殺の原因の一つって言ってたじゃん。クロを失いたくなんてないのに……」
鈴佳の言葉はあまりにも小さすぎて聞き取れなかった。しかし追い詰められたような声色だったことだけは分かった。
「鈴佳、鈴佳、大丈夫だよ。」
鈴佳の両腕に手を置いて摩る。大丈夫だと伝わるように。
「ひとみん……分かった。大丈夫なんだね。でも無理はしないでね? 絶対だよ?」
「もちろん。」
我慢して我慢して限界を突破してしまうとどうなるか、なんとなく分かる。何故だかは分からないけど、分かる。
思考回路がバグって取り返しのつかないことになるのだろう。きっと。
「大変になったら、鈴佳に相談するからさ。」
「絶対だよ!?」
「うん。鈴佳もなんかあったら……いや、何もなくても色々話して欲しいな。」
「うん! 色々話そう!」
じゃあねぇ、と早速鈴佳は話し始めた。
今日も今日とてけばけばしい女子生徒に囲まれる。鈴佳が来ない時を狙ったかのようなタイミングの良さに少しうんざりする。
火に油を注ぎかねないので、ため息が出そうになるのを既で止めた。
「この前も忠告したよね? あんまり出しゃばらないでって。地味子の癖に。」
入学式の日の鈴佳との出会いによって、私は鈴佳にまとわりつく邪魔者であると周りは認識したらしい。だから色んな人から突っかかられるし、友達も出来ない。
ちょっと楽しみだったのになあ……友達とお喋りしたりするの。まあ、仕方ない。鈴佳と会えなくなるのは嫌だし、これは必要な犠牲だったのだろう。自分をなんとか納得させる。
「ちょっと聞いてんの!?」
「……聞いてますよ。でもそれって第三者が口を出すことなんですかね。」
「っ! このっ!」
パチン、と思い切り右頬を叩かれる。ああ、痛い。でも……
『優等生ぶって!』
『地味子のくせに!』
前にもこんなことあったような気がする。でも、いつのことだろう? 私はこれまで十五年生きてきて虐められたことは一度も無かったはずなのに。
なんだろう、これ。鈴佳を初めて見た時と同じ感じだ。懐かしいような……
「あー! ちょっと! 何やってんのさ!!」
少しの間思案していると大きな声が聞こえてくる。これは絶対鈴佳の声だ。
私と女子生徒の間に鈴佳が割り入ったことで、鈴佳の背中だけが私の視界を覆う形になる。
「す、鈴佳くん!」
「やばっ、」
バタバタと五月蝿い足音と共に女子生徒の焦った声が聞こえた。
「もう君達の顔覚えちゃったからねー! 次何かやったら容赦しないよー!」
そう鈴佳が叫んだ後、人の気配もなくなって辺りはしんと静まる。
「ひとみん、大丈夫? 大丈夫じゃないよね?」
くるりとこちらを向いてワタワタし始める鈴佳。忠犬のような言動にくすっと笑いが零れる。
「助けてくれてありがとう。でもこういうのには慣れてるから大丈夫だよ。」
いつのものか分からない曖昧な記憶(?)の中の私もあんな風に言われていたし。だから大丈夫。
「俺が大丈夫じゃないよ。だって虐められていたのも自殺の原因の一つって言ってたじゃん。クロを失いたくなんてないのに……」
鈴佳の言葉はあまりにも小さすぎて聞き取れなかった。しかし追い詰められたような声色だったことだけは分かった。
「鈴佳、鈴佳、大丈夫だよ。」
鈴佳の両腕に手を置いて摩る。大丈夫だと伝わるように。
「ひとみん……分かった。大丈夫なんだね。でも無理はしないでね? 絶対だよ?」
「もちろん。」
我慢して我慢して限界を突破してしまうとどうなるか、なんとなく分かる。何故だかは分からないけど、分かる。
思考回路がバグって取り返しのつかないことになるのだろう。きっと。
「大変になったら、鈴佳に相談するからさ。」
「絶対だよ!?」
「うん。鈴佳もなんかあったら……いや、何もなくても色々話して欲しいな。」
「うん! 色々話そう!」
じゃあねぇ、と早速鈴佳は話し始めた。
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