生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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キジャとルルド

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sideルシアス


頼むから家にいてくれ。


家にいないとしたら確実に誘拐されているだろう。


誘拐されたとして、俺が考えたのは2通り。


リラの容姿はかなり珍しいしおまけに顔もいい。
 
商品にするために生かされていれば運がいいが…


もう1つの考えは最悪なものだ。


ダリアのような高く売れそうなヴァンパイアの餌にされている可能性がある。


美しさを保つためには人間の血は必要不可欠。


最悪の場合、血だけ抜かれてその辺に捨てられているかもしれない。



「っ……」


もしもそうなら俺は……。



***********************

sideキジャ


きっと歓迎されない。


それは分かっていたけど…


「要件を言え、おかしな素振りをすれば殺す。」


ここまでとは。


「お宅の人間のお嬢さんについてちょっと聞きたくて。リラだっけ?今家にいる?」



ルルドは昔からライアス様を崇拝してる。


ライアス様が敵と見做した者はルルドの敵でもある。


顔を見た途端、これだからなー。


この様子を見るに、団長との仲は最悪そうだ。


「あの小娘に手を出すな、帰れ。」


「おーい、ルルドくーん、耳ついてますかー?いるかいないかだけ聞きたいんだけどー?」



わざと大きな声を出すと、ルルドの額に筋が入る。



あー、怒った怒った。



「お前に教える義理はない、帰れ。」



これだから頭の固いお坊ちゃんは。



「いや、だから、生存確認したいだけだって。」



今団長がバチェラーに走って行ったんだから、無駄になったら可哀想だし?



「教えてほしいならそっちから理由を述べるのが筋じゃないの?」


どこからかライアス様が現れた。



俺とルルドはすぐさま跪いた。



圧倒的な程の美しさと魔力。


無意識に膝をついてしまう。


ルシアス様と同じ血が流れているのにどうしてこうも雰囲気が違うんだろうか。


「不快に思われたのなら謝罪致します。ですが、こちらも急いでおりますので。」


順序に従っていられるほど悠長にはできない。



「理由を教えてくれる?」



だけど、ライアス様は引きそうにない。


「あの子が人身売買をしている者に誘拐されたかもしれません。ライアス様はそれを確かめるべく、違う場所に向かっております。そして僕は念のため、こちらを確認しにきました。」



ライアス様の心臓が何度も激しく跳ねる。



「誘拐…?どこの誰が?」



声は荒げていないのに、空気が重くのしかかるようだ。



「おそらく、バチェラーにいる者です。」



怒りがひしひしと伝わってくる。



恐怖を久々に感じた。




「………」





あれ?

気配が消えたから不思議に思い顔を上げると、目の前にいたはずのライアス様は消えていた。


「ライアス様は?」


どこへ行った?


「助けに向かった。小娘のことはライアス様に任せればいい。俺らは別の場所へ向かうぞ。」



別の場所?



「その別の場所って何がある?て言うか、お前ライアス様の騎士ナイトだろ?本当に放っておいていいの?護衛とか、いろいろしないとだろ?」



俺の質問をルルドは鼻で笑った。



「あのライアス様を護衛だって?笑えない冗談はやめてくれ。」



確かにライアス様は強い。



現に次の王になると言われている方だ。



「わかった、その話はこれで終わりで俺たちはどこに行く?」



俺は見当もつかない、そのとやらが。



「もちろん人身売買の会場だ。俺とライアス様はここ最近、人身売買の情報を耳にして調査していた。」



あ、そういえば団長がライアス様とかち合ったとかなんとか愚痴ってたけど、このことだったのか。


調べ方が違うだけで同じ捜査をしていたなんて。


「で?その会場とは?」


ここまで俺に言い切ってんだから見つけてるんだよな?


「…………。」

「勿体ぶるなよ。」


「……。」



ルルドは何も言わなかった。


まさか…


「場所は特定できてない?とか?」


まさかな。

あんな自信満々に、別の場所に行くとかなんとか言ってたんだからさすがに……。



「違う…ただ、その、見つけてないだけだ!」


それ特定できてないって言うんだけど?


「………………わかった、じゃあ、その今はただ見つかっていない場所をどうやって探す?」


まさか場所の目星もないなんて言わないよな?


そんなことを言われたら俺は泣くし、帰る。


「…一応怪しいところが3箇所ある。二手に分かれて探すのが1番効率がいいが、正直もう1人ほしい。」



場所は3箇所だからなー。



「あと7人確保できるけど使う?」


俺らルドベキア騎士団はネメシア騎士団とは違ってどんなところからでも駆けつける。


残業、休日出勤が大好きな騎士団だ。


団長も含め全員血の気が多いから。



「もう全員家に帰っているだろう?」



それが?


お坊ちゃんのルルドには時間外勤務は分からないのかもしれない。


「俺たちの騎士団のルールは仲間の窮地は仲間が解決する、なんだよ。それがいかなる時でも。時間外だからって駆けつけないような奴はうちにはいない。」


ネメシア騎士団とは違ってうちには信頼と友情がどこよりもある。


そこのところを甘く見てもらったら困る。


「お手を貸しましょうか?」


俺の提案をルルドは快くは思わない。


昔から人の力を借りるのが大嫌いな奴だから。


「………………あぁ、頼む。」


それでも折れたのはきっとライアス様のためだろう。


「じゃあ、騎士団の指示は俺がやるから場所だけ教えてくれる?それからこれ、貸しね。」


ルルドの額に筋が入ったのは見てないことにして、俺は連絡用ピアスに大声で話しかけた。


**********************

sideルルド


まさかこんな形でキジャに力を借りるとは。


俺が1人で悔しさと闘っていると、キジャがいきなり大声を出す。


「お仕事の時間ですよー!!!全員ライアス様の別邸に集合ー!!!遅れた奴は俺の部屋の壁に貼り付けまーす!!!」


「#♪々45○€♪>÷-7*」
「ぎゃー!!!!!!」
「ゲホッ!!ゲホッ!!」
「ごめん!君のことは好きだけど俺まだ剥製になりたくないんだ!!!」
「わぁーー!!!!!」
「zzz」
「zzz」



キジャの連絡用ピアスからいろいろな声が聞こえる。


悲鳴を上げる奴に、恐らくデートを断った奴、寝ている奴。


騒がしい。


俺が前に所属していたネメシア騎士団とは全てが違う。


団長がルシアス様で、副団長はキジャなら個性豊かな連中しか揃わない。


その温かみのある騎士団は少し、羨ましいよ。


「これでよし。さて、場所教えてくれる?」


落ちこぼれだったキジャがいつの間にか頼もしくなっている。


俺も頼ってばかりではいけない。



この借りは必ず返すからな。
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